【岩波書店】
『リサイクル社会への道』

寄本勝美著 



 先日、東京お台場にある日本科学未来館に行ってきた。まるで未来都市を思わせるような概観や、テーマパーク並みの設備、さらには科学技術の最新情報や、情報技術に関するデモンストレーションや実験、各種ロボットによるイベントなど、丸一日いても楽しめる新感覚の博物館であったが、その展示内容のひとつに「地球環境とフロンティア」と称する分野があり、私たち人間がその未来において地球環境といかに共生していくかをテーマに、バイオレメディエーション(微生物の物質分解能力を利用した廃棄物の浄化)や生分解性プラスチックの開発、またリサイクルを見据えた住宅モデルなど、環境問題に関する科学技術の紹介にも力を入れていたのを覚えている。

 ところで「リサイクル」と聞くと、あなたはどういったものを思い浮かべるだろうか。私たちの日々の生活に直接関係してくる部分でいえば、たとえばごみの分別や、そこから発展してペットボトルやプラスチックトレー、古新聞などの資源ごみの回収協力、あるいはコンポストによる生ごみの処理といったところだと思うのだが、こうして集められた資源ごみが、たとえばどのように再処理され、どのような商品として再利用されているか、という部分については、じつはよく知らなかったりするのではないだろうか。上述のイベントにしても、中心になっているのはもっぱら「クリーンなエネルギー」あるいは「地球にやさしい新素材」であり、リサイクルというものの考え方や、そのあり方に関しては、あまり触れられていなかった。

 サイト難しい童話で提唱されている『経世済民』では、よりマクロな視点から、新しい通貨の循環を生み出す必要性について説いているが、ことリサイクルという分野においても、同じことが言えそうである。本書『リサイクル社会への道』で主として論じられているのは、市民や自治体、企業、あるいは研究機関や国や行政といった個々がそれぞれにリサイクルを考えるのではなく、それらを結びつけるような、よりマクロな視点でリサイクルをとらえるべきではないのか、ということである。

 著者が大学教授であるだけあって、文章表現的にはどこか小難しい言い回しを好み、また法律に関する用語を多用するところがあるため、ちょっとした学術論文を読まされているような気にさせられるのが難点だが、その代わり、本書で参照されている資料やデータに関してはどれも出所をはっきりさせ、あくまでそのデータから得られる事柄や推測だけを述べようと努めている。その一貫した姿勢は評価すべきだろう。

 狭い意味のリサイクルは再生利用をいい、廃品や廃棄物などを原・材料としてふたたび利用することを指す。広い意味でのリサイクルは資源循環とほぼ同意義で、再生利用のほかに製品の再利用(リユース)や、ごみの発電、油化、固形燃料化(RDF)、酸化剤としての利用などのさまざまな有効利用を含めたものである。

 上述の引用からもわかるとおり、本書でとりあげているリサイクルの範囲は、たんなる再生利用のことばかりでなく、もっと広い部分を包括している。そして2050年には地球の人口が93億人に達すると言われ、それにともなって廃棄物も相当な勢いで増加していくことが予想されるなか、いかにごみを減少させ、効率の良いリサイクルを実現させていくか、という問題定義を行なったのち、リサイクル事業の現状と問題点を指摘し、それをふまえたうえで、理想的なリサイクル社会のビジョンを提示していく、という形で論を進めていく。

 本書にはそうした事例が数多く紹介されているが、たとえば古紙については、リサイクルによって生み出された再生紙のほうが、上質紙よりも高価だったりして、供給はあるのに需要が伸び悩んでいる、という話を聞いたことがないだろうか。たしかに一地域や、あるいは日本という国だけを見ているとそれは事実なのだが、2000年以降になると古紙のアジア諸国への輸出が激増し、むしろ古紙不足となりつつあるという。また近年になって立て続けに施行されてきた各種リサイクル法によって、そもそものごみの元を提供しているメーカーの責任が明確化し、リサイクルしやすい工夫を心がけるようにもなってきている。たとえば、缶ジュースのプルタブは有名であるが、サランラップの刃の部分や、ペットボトルのキャップ部分が簡単に取り外しができるように工夫されていたりするのを見るにつけ、リサイクルの認識が、ここ数年で大きく変わりつつあるのを実感なさっている方も多いのではないだろうか。著者はこうしたものの生産から消費、排出、そして再生という流れを川の流れに見立て、真のリサイクル社会の実現のためには、その上流から下流までを包括して考えていかなければうまくいかない、と説いているのだ。

 ごみの発生をできるだけ抑える。そのうえで、出てくる廃棄物については再使用や再利用の方向を検討していく。そのために企業や自治体、国もまた一丸となってリサイクルに取り組んでいく。フリーマーケットやリサイクルショップの奨励はもちろん、ごみの有料化もまた有効だと本書では述べている。ごみは無料で引き取ってくれるもの、という考えをもっている人にしてみれば驚くべき提案であるかもしれないが、もしそれにともなって、資源ごみを無料で引き取る方向性を検討すれば、むしろリサイクルの促進につながっていく、という本書の論は、海外の事例などもふくめて納得できるものである。

 地球の人口が増えれば、当然のことながらごみの量も増えていく。ごみ問題、しいてはリサイクル問題は、私たちひとりひとりがもはや無視することのできない大きな問題となっている、という事実を本書は指し示している。(2004.08.13)

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