【彩図社】
『おもろいやっちゃ!(二発目)』

真田秀逸著 



八方美人男 なあ、ちょっと聞くけど。
一方美人男 なんだよ。
八方美人男 「フーリガン」と「フリーガン」の違いって、何だ?
一方美人男 は? フリーガン?
八方美人男 そう、フリーガン。
一方美人男 「フーリガン」って言えば、試合会場や街頭などで過激な破壊活動をしたりするサポーター群のことだよな。今年のサッカーワールドカップは日韓共催だったから、日本でも話題になったりしてたけど……。
八方美人男 するとやっぱり、フーリガンと関係があるんだな。親戚みたいなもんか?
一方美人男 オイ、ちょっと待てよ。だいたいフリーガンって何だよ? どこにそんな言葉が載ってるんだ?
八方美人男 いや、どこにも載ってないよ。でも間違えて覚えている奴らが多いらしい。
一方美人男 「フーリガン」と「フリーガン」をか?
八方美人男 そう。
一方美人男 (ホントかよ…)まあ、たしかによく似た語感ではあるけどな。でもフリーガン…自由な銃…ってことは、なんかテロ活動と関係あったりしてな。
八方美人男 なるほど、「フーリガン」が発展すると「フリーガン」になるか。それじゃあ、さらに進化すると「フリガーン」になる、と。
一方美人男 ならねーよ。ポケモンじゃあるまいし。
八方美人男 しかし、俺たちしょーもないこと考えているな。
一方美人男 ていうか、お前が最初にふってきたんだろうが。
八方美人男 たぶん、さっき読んだこの本が原因だ。
一方美人男 『おもろいやっちゃ!(二発目)』(真田秀逸著 彩図社)か……。オレも一応読んだけど、もしかしてこの会話、書評になっちゃってるの?
八方美人男 そうだよ。登場するのは高見沢一郎っていう、京都在中の、なんの変哲もないただのサラリーマン。でも考えていることと言えば、たとえばドリアンの臭いで人が殺せるかもしれないとか、人間の愛情の度合いを科学的に測量するにはどうしたらいいかとか、慢性的な渋滞を解消させるために、全人類はエッチしたあと24時間は自動車の運転を禁止すべきだとかいった、しょーもないことばかりだったりする。
一方美人男 本人も一応、自覚はあるみたいだな。「行き着くところはアホな話」とか言ってるし。
八方美人男 自分では論理的に物事を組み立てているつもりでも、人が聞くと支離滅裂だったりすることって、意外に多いものだけど、そういう意味じゃ、自分を笑い者にして得られる笑いがたしかにある。
一方美人男 『デンティスト』なんかはその典型だな。たぶん、本書の中では一番笑える話だと思うが、日本の歯医者では誰もが見放した親知らずが、アメリカの歯医者ではいきなり「ドゥローアウト!」
八方美人男 しかもさんざん悪戦苦闘したあげく、歯の先っぽだけが抜けて「シット!」
一方美人男 日本じゃ水吸引用パイプの扱いに不慣れな助手のおかげで、歯医者の椅子の上で溺死しかけるし……。しかしこの本書いた人、どこでこんな面白いネタを仕入れてくるんだろうな。
八方美人男 そりゃあやっぱり、年がら年中アホな思考を巡らしているんじゃないの。高見沢君みたいに。
一方美人男 ある意味ですごい人ではあるな。オレにはとてもマネできん……。というか、ふつう吹雪の夜の公園で、ドリアンを食うなんて発想、思いつきもしないし、たとえ思いついたとしても作品に出したりはせんだろう。
八方美人男 でもこの人はやった。
一方美人男 たまに小難しいことを考えてることもあるけど、けっきょくは屁理屈で終わっちゃってるところなんかは、南伸坊の『顔』に通じるところがあるかも。
八方美人男 ところで、すごいって言えば、この人の著者紹介もけっこう変わってるね。
一方美人男 すごい以前に、「1948年 琵琶湖産」って……。
八方美人男 「経歴不詳不明かつ音信不通」っていうのも、文法的に間違ってるくさい。
一方美人男 やっぱり狙ってたんだろうな、こういう演出。どうせなら名前も「ミスターX」とかにすればより徹底してるのにな。
八方美人男 でも、こういうのけっこう好きだよ。なんだかホッとする。別にこの人と自分を比べてどうこうするつもりはないけど、世の中ってイヤなことばっかりじゃん。すぐにムカついたり、キレたり、自分の命を顧みないようなテロを起こしたり、それに報復したり……。すごく殺伐としてて、どこか閉塞しているような感じから逃れられない今の世の中に、こういう人物がいるんだ、ということを知るのは、じつは生きるうえでとても有意義なことなんじゃないか、って気がするよ。
一方美人男 ……それ、本気で言ってるのか?
八方美人男 本気も本気。だって、ときどき思うもん。みんなもっとアホになればいいのにって。世の中はどんどん複雑になっていくけど、それに合わせて俺たちまで難しいことを考えてたら、やっぱり疲れちゃうよ。
一方美人男 ふだん真面目なお前が言うと、妙に説得力があるな。
八方美人男 それだけが取り柄みたいなものだからね。それはともかく、「世間では五〇歳も過ぎれば、人格的な深みも増し理性的な人へと熟成されると考えられている。しかし、どうもそれは嘘のようである」、というのは至言だね。少なくとも『論語』にある「五十にして天命を知る」なんて言葉よりも、よっぽど人間臭いし、そうした人間臭さがいとおしいよ。
ところで、この本の表紙に描かれてる女の人、やっぱり卑弥呼さんだよね。
一方美人男 そうだろうな。グリーンアイズだし。っていうか、この会話、本書の内容を知らない人にはまったく理解できんのじゃないか?
八方美人男 問題ないでしょ。表紙についてはこのボタン
を押せば見れるわけだし、なぜこの女性が卑弥呼なのか、ということに興味を持てば、この本を買ってくれる人が出てくるかもしれなし。
一方美人男 そううまくいけば誰も苦労しないって(ちなみに、こっちの方が
カラー的にはいいだろう、と言っておく)。
八方美人男 まあ、ともかくこうした本を読んで、「おもろいやっちゃ!」って笑うのも悪くないことだと思うよ。
一方美人男 その意見に反対するつもりはないが、だかこの会話形式の書評は、いくらなんでも手抜きすぎやしないか? あとで抗議のメールが殺到しても、オレは知らんからな。(2002.08.19)

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