八方美人でない随筆

2013年に読んだ本のベスト10

 今年は小説だけではなく、教養書関係の本をけっこう読みこんだ一年でした。歳をとるとそうした本が面白くなるものなのかもしれません。
 小説のほうもここ数年のなかでは豊作で、選ぶのが大変といううれしい悲鳴をあげることができました。
 次の年も皆様の読書ライフがより充実したものとなりますように。

 2013年に読んだ本のベスト10(一応同不順)

 ●『華竜の宮』(上田早夕里著 早川書房)
 過酷な環境のなかで、それでも人間として生きていくための努力をつづけていく人たちの姿がこのうえなくカッコイイ! 陸地のほとんどが水没してしまった近未来という設定も個人的にお気に入りです。

 ●『脳には妙なクセがある』(池谷裕二著 扶桑社)
 人間というものを「脳科学」という視点から理解することで、人間がかかえるさまざまな業から、少しは解放されるのではないかということを教えてくれた本。「直感」の本当の意味を理解できたことも大きい。

 ●『ベルリン1919』/『ベルリン1933』/『ベルリン1945』(クラウス・コルドン著 理論社)
 児童書というにはあまりにも壮大なボリュームで、大人が読んでも充分な感銘を与えてくれることは間違いない。数あるナチス関係の小説のなかでも、とくにベストに入るべき本。

 ●『貴族探偵』(麻耶雄嵩著 集英社)
 麻耶雄嵩に対してごめんなさいしなければならなくなったミステリー。まさかいっさい謎解きをしない探偵を出してくるなんて、まさに想像の枠外ですよ! それでいてしっかりとミステリーになっているところも心憎い。

 ●『2666』(ロベルト・ボラーニョ著 白水社)
 語るべき真相、追うべき人物が不在のままで、これだけ壮大な物語を構築してしまう著者の力量の異常さに驚かされてしまう作品。見えない真相がよりいっそうその存在感をかきたてるという不思議さ。

 ●『機龍警察 自爆条項』(月村了衛著 早川書房)
 元テロリスト、現SIPDのライザの存在感が圧倒的すぎる! 逃れられない過去、そしてその過去と対峙し、乗り越える過程がまさに私の心を鷲掴みにしましたよ。こういう女性が本当に好きなんだなあ、と再認識されられた作品。

 ●『64』(横山秀夫著 文藝春秋)
 横山秀夫といえば『第三の時効』・・・そんなふうに思っていた時期が、私にもありました。警察の広報課を舞台に、警察関係とマスコミ関係の両方に切り込みつつ、なお犯人逮捕をけっしてあきらめない不屈の意思を書ききった、著者のあらたな代表作。

 ●『リバーサイド・チルドレン』(梓崎優著 東京創元社)
 梓崎優に対してごめんなさいしなければならなくなったミステリー。この人の書く作品世界の独自感が、そのままミステリーの伏線として機能しているという構造の妙が素晴らしい。ストーリー的にも申し分ない。

 ●『サラの柔らかな香車』(橋本長道著 集英社)
 これはもう、破格の天才棋士、護池・レメディオス・サラと、あえてプロの「女流棋士」という道を選んだタイトル保持者、萩原塔子との最終対決の素晴らしさに尽きる。それにしても将棋小説って、どうしてこんなにも熱い作品ばかりなのか。

 ●『都市と都市』(チャイナ・ミエヴィル著 早川書房)
 同じ場所にありながら、ふたつの都市国家が併存しているという設定に驚き、そこに住む人々の意識の違いに驚き、それらの要素がいろいろな意味でミステリーという要素をふくらませているということに驚かされる作品。

 次点

 ●『ビブリオバトル』(谷口忠大著 文藝春秋)
 これは個人的にビブリオバトルを経験したという点で挙げたようなものです。ずっとネット上で本の紹介をしてきただけに、このような方法もあるんだなあ、と感慨深い思いにとらわれました。

ブッククロッシングゾーンをめぐってみた(その12)

 広島――日本全国にあるブッククロッシングゾーンのなかでも、とくにこの県の公式ゾーンの数が充実しているのは、ブッククロッシング・ジャパン代表の財津正人さんの出身地であることと無関係ではありません。

 いろいろなブッククロッシングソーンをめぐっていこうと思っている身としては、一度は訪れてみたい場所だったのですが、今回その財津さんが故郷で新しく古本屋をはじめるという話が以前から届いており、これはもう行くしかないということで、広島旅行を敢行することになりました。観光度外視、ブッククロッシングゾーンを巡るための広島旅行です。


広島駅前


広島市内を走る路面電車


 まずは広島市の平和大通り沿いにあるカフェ・パコ。ここは「フェアトレード」と呼ばれる、生産者に適切な利益を保証する代わりに、消費者には信頼できる品質の商品を届ける貿易形態を支援する店です。おもな品目はコーヒー豆ですが、雑貨関係も置いてありました。


世界各地のコーヒー豆や雑貨が並ぶ


 今の場所の移転してからは、残念ながら喫茶としては機能していないということですが、フェアトレードという平和的活動が広島という地で息づいているということに、感慨深いものを感じさせられました。

 次はOTIS!というライブハウス。音楽へのこだわりがあるお店で、月に何回かライブなんかも行なっているようです。それ以外はおもにメキシコ料理をはじめとするエスニック料理店として営業しています。


 デザート系や飲み物(アルコールありもなしも)も充実しており、明るすぎない店内の雰囲気と流れてくる音楽が居心地の良い感じを出していました。


ゾーンはなんとアンプの上に!


壁一面のサインが圧巻!


 そして今回の旅行のメインとなる古本交差点。複数の古書店が同じ店舗内で営業しているという、まさに「古本屋さんの屋台村」というコンセプトのもとでつくられた場所です。


一階に「キンキホーム」があるビル


二階の入り口付近


 ひとつのスペースをいくつかのエリアに分けて運営している方式で、棚の種類やその置き方も、並べる古本もまさに千差万別。床に置かれた箱のなかに無造作に本が並んでいるかと思えば、古い雑誌のバックナンバーが積まれていたりと、たしかに縁日の屋台を歩いているような雰囲気があります。なかには共同企画としてつくられた棚などもあり、本の販売に対する新たな取り組みを模索している感じがありました。



共同企画「10年ぶりに読書する人へ贈る一冊」


 もちろん、ブッククロッシングの公式ゾーンとしても機能している「古本交差点」ですが、そのほかにもカルチャー発信のステーションとして、2013年7月16日のオープン以来、さまざまな本のイベントを企画しています。そして何年ぶりかで財津さん本人とも再会できたことが、個人的には一番嬉しかったことでした。


ゾーンの棚の上段は北尾トロ氏主催の雑誌「レポ」の販売スペース

 というわけで、一泊二日の日程で敢行した広島旅行でしたが、まだまだ回りきれなかった公式ゾーンもあり、個人的にはもう一回くらいは訪れてみたい場所になっています。(2013.07.23)

【おまけ】

 じつは広島に来て初めて気がついたのですが、どうやらここ広島市には「まんが図書館」なる場所があるらしい。ということで、さっそく行ってきました。


広島市こども図書館

 いや、ホントに「マンガ」の図書館でした! 写真こそ撮れませんでしたが、週末ということもあって二階の閲覧スペースは朝から子どもたちで大盛況。私もまだ読んでいなかった太田モアレの『鉄風』の4、5巻を見つけ、一気読みしてしまっていました(笑)。

 

 随筆リストに戻る   トップページに戻る