八方美人でない随筆


2010〜2011年に読んだ本のベスト10

 昨年は読書のペースが大きく落ち込んだこともあって、けっきょくベストをまとめることなく年越しを迎えてしまったのですが、今年は昨年の読書分を含めたベスト10ということで締めくくりたいと思います。

 2010〜2011年に読んだ本のベスト10(一応同不順)

 ●『1/2の騎士』(初野晴著 講談社)
 ふたりでひとり。最弱の幽霊とレズビアン女子高生が知恵と勇気で密かに街の危機を救うミステリーという形式は、まさに私のツボにハマった。

 ●『船に乗れ!』(藤谷治著 ポプラ社)
 いわゆる「天才」の話ではなく、努力が報われるわけではない一般人の話なのだが、だからこそその雰囲気はけっして暗くはなく、まさに青春小説としての輝きに溢れている。

 ●『この国。』(石持浅海著 原書房)
 一党独裁政権下にある架空の日本における、国家権力とテロリストとの攻防を描いたミステリー。ある種のコン・ゲーム的な展開が巧みで、ついつい引き込まれる。

 ●『ダイヤモンド・エイジ』(ニール・スティーヴンスン著 早川書房)
 読み手の成長に合わせて、その内容が千変万化していく「魔法」の本――この設定だけでも読む価値はじゅうぶんにある。

 ●『魚舟・獣舟』(上田早夕里著 光文社)
 水没した世界というSF的設定、魚船や獣船といった独自の生き物、そして人を人として定義するものは何かという大きなテーマを、短編のなかにとりこんだ技量には脱帽。

 ●『トンネル・ヴィジョン』(キース・ロウ著 ソニー・マガジンズ)
 ロンドンの地下鉄をこよなく愛するオタクが、愛する婚約者とオタクとしての矜持を天秤にかけながら、途方もない記録を達成するために文字どおり地下鉄を駆け巡る物語。

 ●『虐殺器官』(伊藤計劃著 早川書房)
 人間が操る言葉を進化のための「器官」としてとらえるという発想や、近未来を舞台とした暗澹とした世界の重厚さなど、いろいろな意味で手元に置いておきたくなる一冊。

 ●『武士道シックスティーン』(誉田哲也著 文藝春秋)
 とにかく磯山香織のブッ飛びぶりが特長的。女子高生なのに、そこらへんの男よりよっぽど「漢」だったりする。もちろん甲本早苗との対決も必見。

 ●『My name is TAKETOO』(ヒキタクニオ著 文藝春秋)
 ヒキタクニオさんにごめんなさいしないといけなくなった作品。近未来における男子のバレエ「ペルフェクション」にかける情熱やその過酷さなど、息をのまずにはいられない迫力に満ちている。

 ●『博物館の裏庭で』(ケイト・アトキンソン著 新潮社)
 四世代にわたるルビーの一族を描いた壮大さはもちろん、彼女の旺盛な想像力が、たんなる一族の歴史からいくつもの物語を紡ぎ出していくその物語構成は、まるで宝箱のようなきらめきを放っている。

 次点

 ●『くう・ねる・のぐそ』(伊沢正名著 山と渓谷社)
 野糞一筋三十五年、ウンコの行く末を見つめつづけた「糞土師」の矜持は、馬鹿馬鹿しくも素晴らしいの一言に尽きる。

ブッククロッシングゾーンをめぐってみた(その7)

 栃木県栃木市には、自家焙煎のコーヒー豆を販売しているキャリオカというお店があるのですが、そこは喫茶店も兼ねており、当然のことながらコーヒーが飲めるコーヒー専門店でもあります。

 そしてその喫茶店は、ブッククロッシングゾーンを提供している場所でもあるということで、ちょっと立ち寄ってみることにしました。東武日光線「栃木駅」より徒歩2分のところにあります。


 ブッククロッシングゾーンは、お店の窓際に設けられていました。こじんまりとしたつくりながら、ブッククロッシングの活動PRやしおりの提供など、魅力的なコーナーとして仕上がっている感があります。パソコン環境のない人のためのカード(図書カードのように、過去の履歴を手書きできる形式のカード)が挟まっている本も見つけました。

 一年ほど前から、数人の本好きのアルバイトたちによって始められ、今でもときどき本を置いていったりすることがある、というお話を聞くことができました。

 ちなみに、お店のメニューはコーヒーが基本で、あとはトーストか自家製チーズケーキ、パンケーキがある程度といった、けっこう硬派な喫茶店でした。そしてそのパンケーキですが、じつはお店の1階で販売もしておりました。


 パンケーキはつぶあんと抹茶、チョコレートの三種類。バラで買うこともできます(一個\40〜\60)。ここにもブッククロッシングゾーンがあるので、ゾーン目当ての方はこちらのほうもお忘れなく。(2010.07.21)


ブッククロッシングゾーンをめぐってみた(その6)

 「本に世界を旅させる」というコンセプトからはじまった「ブッククロッシング」――その活動に賛同し、安全に本をリリースする場を提供してくれているのが「ブッククロッシングゾーン」であるが、今年のGWのあまりの天気の良さに、実家に帰省がてら、地方にあるゾーンを回ってみようと思い立ちました。

 ちなみに、私の実家は北陸にあるのですが、北陸にあるゾーンは今の時点で二つ。そのうちのひとつcafe one pointを訪れるため、富山駅で下車し、路面電車で目的地に向かいます。


富山市のワンステップ路面電車は、えらくカッコイイ。


昔ながらのレトロな路面電車も走っている。


 路面電車の駅からしばらく歩いていくと、民家の立ち並ぶ場所に唐突に出現しました。


 cafe one pointは飼い犬同伴で入ることができる喫茶店ということで、私が来たときにもパグをつれたお客さんがくつろいでいました。そしてお店で飼っている看板犬の一匹「こつぶ」ちゃんがお出迎え。


店内の様子


やたら人なつっこい「こつぶ」ちゃん


 ブッククロッシングゾーンは、店に入って右側の本棚の一角に設置されていました。ただし、大半はお店の備品として置いてあるもので、ブッククロッシングとしての本はそのなかの一部ということになっています。

 一年ほど前に雑誌「ダヴィンヂ」の特集を見たのがゾーン設置のきっかけだとか。ここのオーナーはコーヒー豆にはかなりのこだわりをお持ちの方で、他にもJLC(ジャパン・ラテアート・チャンピオンシップ)に出場したりといった経歴を持ち主ですが、「ブッククロッシング関係で来てくれた人はあなたがはじめて」だと言われました。
 ちなみに、お店をはじめてから三周年ということで、帰りしなに粗品をいただきました。ありがとうございます。


中身はオリジナルデザインの「Kit Kat」でした


 次に訪れたのは金沢駅。ここにははんなという雑貨とカフェのお店があります。


やたらデカくて近未来的な金沢駅


こんなモニュメント、前はあったか?


 駅から少し離れたところにあるバス停から港方面に向かうバスに乗り、しばらく進んだところに「はんな」はあります。


 上述したとおり、店内は雑貨の展示販売のコーナーと喫茶店のコーナーがあるのですが、この喫茶コーナーは、同時に貸本屋を経営しているブックカフェという性質ももっています。会員になれば有料ですが店内の本を借りていくこともできます。


ブックカバーやオリジナルの栞などがズラリ


喫茶コーナーは座敷ベース


 ブッククロッシングゾーンは、喫茶コーナーの奥にある茶色の本棚に設置されていました。ちなみに、その横にある白い棚が貸本コーナーで、図書館では順番待ちになっていそうな話題の本などが揃っています。もちろん、店内で本を読んでいくぶんにはまったくの自由です。


ブッククロッシングゾーン対象の本


こちらは貸本スペース


 正直、ブッククロッシングゾーンよりも貸本のラインナップのほうが気になってしまいました。いや、だっていかにも面白そうな本が揃っているんですよ。もし近くにこんなブックカフェがあれば、迷わず会員になっていたのになぁ・・・。(2010.05.13)


 

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