DEATH GATE CYCLE

VOLUME 5

THE HAND OF THE CHAOS

(1993)


チャリスが浸水するなか、幽閉されていたハプロはかろうじて脱出した

サマが冥界の門を開き、蛇竜は3つの世界に放たれた。蛇竜のリーダー、サング・ドラクスはネクサスの領主ザーに偽りの臣従を誓う

ハプロはネクサスに帰還する。しかし、真実を知るハプロにはネクサスはどこか違和感のある場所だった。迷宮へと続く最終門の前でハプロは、アルフレッドと恋人と子供を探しにいくことを考えるが、不意に現れたズィフナブに押しとどめられる。これを隠れて見ていたベインはズィフナブがサータンだと思い込む。ハプロは領主の宮殿でアリアヌスへベインとともに向かうことを命ぜられる。目的はキクジーウィンジーの制御

ハプロが退いた後、ベインは領主にハプロの裏切りを告げる。領主はアリアヌスのアサシンによるハプロ殺害を指示する

アリアヌスは戦乱のさなかにあった。ドレヴリンはエルフに包囲され、トリブス帝国はリーシャム王子の反乱軍により政情不安定で、スティーブン王とリーシャム王子は同盟を結ぶために軍勢を「七つ野」に集結しつつあった

ハプロとベインがドレヴリンに到着したとき、キクジーウィンジーは停止していた。明かりの失せた地底で、ドワーフはエルフと戦わねばならない状況にあった
キクジーウィンジーの停止した原因を探るためにハプロはジャッレに会う。ジャッレとアルフレッドはキクジーウィンジーの内部を徘徊したことがあったからだ。ジャッレの消されていた記憶を取り戻し、キクジーウィンジーの内部を探索したが、同時に外ではエルフの攻撃が始まった

ハプロとジャッレとベインは捕らえられるが、捕らえたのはエルフに変身したサングドラクスをはじめとする蛇竜たちであった。三人はトリブス帝国の水晶宮の地下の牢獄に閉じ込められた

ベインがトリブスにいることを知ったイリダルは救出のために、ヒューの閉じこもる修道院へと向かう。ヒューはアルフレッドによって蘇生されていたが、死からの蘇りで苦しんでいた。ヒューは生と死の狭間にいた。死ぬこともなければ、生きているわけでもないのだ。自殺しようとしても、死ぬことが出来ないのだ。ヒューの出した条件は、ベイン救出後にアルフレッドを探すことだった。イリダルは了承した

2人はアサシンのギルド、ブラザーフッドで助力を仰いだ後、キール教と同宗のケンカリエルフに変装してエルフのトリブス帝国へ向かう。ケンカリエルフの大聖堂で2人は<扉><本><魂>の3人の護者に掛け合って助力を求める。ヒューは見返りに自らの魂を差し出すと提案する

その夜、イリダルはヒューに愛の告白をするが、拒絶される。ヒューが求めているのは。死ぬこと、永遠の休息を得ることだった

トリブスの宮殿で2人はベインとサングドラクスに捕らえられる。ベインはベインはヒューに、イリダルの命と引き換えに七つ野へ一緒に行ってスティーブン暗殺することを依頼する。七つ野へ行く途中でベインはヒューにハプロ暗殺を依頼する。何の気なしにヒューは引き受けるといってしまう

スティーブン王を殺せば、アリアヌスは混乱し恐怖がはびこると考えたサングドラクスは次の作戦を開始した。蛇竜たちとキクジーウィンジーを制圧するための戦いを始めようとしていた。サングドラクスはジャッレを連れて下領域へ向かった

一方、宮殿の地下迷宮を出ようとしていたハプロはイリダルに出くわす。イリダルは窮状を訴える。イリダルとハプロは大聖堂へ行って、ケンカリエルフにファントムドラゴンを借りた。そればかりか、<本>の護者はハプロにキクジーウィンジーを操作する本を渡す。サータンたちはアリアヌスでもっとも懸命なケンカリエルフたちに本を託していたのだった

ファントムドラゴンに乗ったハプロはジャッレとサングドラクスの乗る船に降りた。すでにサングドラクスの姿はなかった。サングドラクスはジャッレに瀕死の傷を負わせていたがまだ生きていた

七つ野ではヒューはスティーブン王を前にしても殺せなかった、蘇生して人を殺すことが出来ない体になっていたのだ。そんなヒューに業を煮やしたベインは、自分でスティーブン王を刺す。その場に間に合ったイリダルは、これを見てベインの本性を悟り、窒息の呪文をベインにかけた。スティーブン王の傷は深かったが命に別状はなかった

ジャッレを救ったハプロはウォンベに降り立つ。ドワーフたちはキクジーウィンジーを守るために蛇竜と戦った。ハプロとリムベックは守護者に与えられた本をもとにキクジーウィンジーを操作して、蛇竜たちを駆逐した

ヒューは死への解放を求めて大聖堂を訪れた。しかし、<魂>の護者は、条件がそろっていないと拒否した。ヒューはハプロの殺害をベインから引き受けていたのだ。ベインが死してもその契約は有効だった。護者はヒューにハプロが他の暗殺者にも狙われていることを知らせるように依頼した。ヒューが殺す前に他の暗殺者がハプロを殺すかもしれないから

(了)


この巻は、7部作の中でも一番面白い内容だと思います(ヒュー・ザ・ハンドの復活(?)だけでもうれしいんですけど)。なんといっても、第5部からが本当の始まりですからね

邦訳では「ハンドのヒュー」ですが、なぜ、ヒュー・「ザ・ハンド」と呼ばれるのでしょうか?

handを辞書で調べると、「手」以外にも「専門家」・「器用」・「助力者」などの訳語が見つかります

もうひとつ。シェークスピアの『ジュリアス・シーザー』でブルータスがユリウス・カエサルを暗殺したときのキャスカの台詞

Speak, hands, for me! Casca first, then the other Conspirators and Marcus Brutus stab Caesar

ブルータスが殺したのではなく「手」が殺した、という解釈があるそうです。本の虫にして、古典を読みなさいと常々おっしゃっているマーガレット・ワイスならこの台詞は知っているかもしれません

この2つから想像するに、「ザ・ハンド」が「暗殺者」であると考えられます。確証はないのですが

この第5部のタイトルは 'The Hand of Chaos' ですが、The Handには2通りの解釈があり、2つの(あるいはもっと多いかも)訳題が出来てしまいます

混沌の手
混乱のザ・ハンド

どちらがふさわしいでしょうか。もしかすると、ワイスとヒックマンはthe handに両義的な意味を持たせたのかもしれません


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