WATOKU'S
ABYSS INSIDE


DEATH GATE CYCLE (邦題『冥界の門』)


Self is the only prison that can ever bind the soul.− Henry Van Dyke

上記の文章はDRAGON WING冒頭のエピグラムです。翻訳では見事にカットされています
じつは最終巻のエピローグとAPPENDIX Uの結びと照応関係にあるので、本当はカットしちゃいけないんです
ここに今回の主題が込められているんです、といっても、ワイス&ヒックマンのいつもの主題ですけどね

トレイシー・ヒックマンによると、デスゲート・サイクルはアイルランド問題からモチーフを得たということです
ということは、パトリン族とサータン族の間の憎悪・偏見は、アイルランドとイギリスとの関係がもとになっていることになります
対立の解消が、いっしょに本当の敵と戦うっていうのは、いかにもパックスアメリカーナな考え方ですね
仮想敵を作るっていう意味では。もっとも、ワイスとヒックマンが本気でこう考えているわけではないと思います、というのもRose of the Prophetでは、アラブと西欧のギャップをそれぞれの視点から描くことに成功したのですから

読後に気付いたんですが、ロゴマークにも意味があるようです
七部作に共通することなんです。翻訳の出ている三部まで読んでわかった方はいらっしゃいますか?
ファンタジー作品で話を最大限に盛り上げるにはこれしかないってことなんですが・・・

デスゲート・サイクルはワイス&ヒックマン初のハードカバー出版作品です
それまでの作品はすべてペーパーバックでの発売でした
高くても売れるという判断を出版社が下したってことなんですが、ここにもう一つの理由が存在します
洋書をよく読んでいる人は知っているかもしれませんが、
シリーズものの場合、続巻がハードカバーになった時点で、前の巻がペーパーバックになるんです
つまり、ペーパーバックで読みはじめた人には、すぐにハードカバーで続巻が読めるって仕組みなんです
うまい商売ですよね、でも、落とし穴があります
シリーズものは先に進むにつれて、読者が脱落していきますから、売り上げはたいして上がらないわけです(笑)
信者がいなくなって飢餓に陥るのは、なにも熱砂の大陸の神々だけではないんですね

Dragon Wingのハードカバー版のカバーには7部作のうちの、前半四部作はそれぞれの世界とキャラクターを紹介した一話完結のストーリー、後半三部作はデスゲートのコントロールをかけた壮大な戦闘とそれぞれの世界の顛末が語られると書かれています。ま、だいたい、そんなストーリーです


(BACK)