2001.5.25

NJKF



松浦信次 対 ヨーデーチャー(タイ)

自分が試合するでもないのに、試合前から緊張したのは初めてだ。聞くにヨーデーチャーは、タイのトップ中のトップ。しかも、タイ人には珍しいパンチとローキックを武器とする、超ファイタータイプだという。

「ランカーとやってみたい」と直訴したという松浦さん。だが実際のところ、「直訴」というほどのことではなく、「やりたいか?」というから「は〜はい」と答えた程度のものだったらしい。そうして当てられたのが、ヨーデーチャー。あちらこちらから「無茶苦茶強いらしい」と吹き込まれて、嫌だったそうだ。

そんな恐怖感が頂点に達したのが、試合前夜。

眠る前に「ちょっとムエタイのビデオでも観ようかな」と思った松浦さん。しかし偶然観た試合に何やら見覚えのある顔が……、なんとそれが翌日対戦するヨーデーチャーの試合!! しかも、ローで相手をボッコボッコにしている。試合前夜にこんなビデオを観たら眠れるはずもない。きっと恐怖の一夜を過ごしたことだろう。

入場前も一人で精神統一をする松浦さん。う〜ん、やはり通常より緊張しているようだ。セコンドも緊張だ。

リングに上がり、向かい合ったヨーデーチャー。その脚観たら絶句。ふてぇ〜。だって169センチのウエルターなのだ。楠本さんと一緒の身長なのだ。それでウエルター。そりゃあお化けみたいな筋肉を身にまとっていた。

試合開始直後、「ローとパンチの選手なんだよな」と思っていると、まずとんできたのは右のハイ。松浦さんの目の付近に当たる。ちょっと痛そうなそぶりを見せる。「見えているのか?」と心配になったが、大丈夫なようだ。その後も、攻撃の軸はハイキック。通常ならハイキックなど飛んでこない距離から、体重の乗った重いハイがビュンビュン飛んでくる。ガードするのに精一杯な松浦さん。

中盤からは、ローの数が増えてくる。右も左も、重い。ちょっと効いてしまっているようだ。いずれにせよ、早めに勝負に出ないと勝ち目はない。

3R。「勝負に出ようよ、松浦さん」と思った丁度そのとき、ヨーデーチャーのハイキックが、ガードの上からヒット。ガードの上なのに、くらくらきてしまい、ダウン。ここを逃すはずのないヨーデーチャー。立ち上がった松浦さんに再びラッシュで2度目のダウン。

ここで後ろにいた会長が

「タオル投げろ」

私が東京北星ジムに在籍して、タオルを投入したのはこれで2度目。1度目は名取のデビュー戦。これは私と楠本さんの判断で投げたもの。会長の指示で投げたのは、これが初めてである。それほど危険だったヨーデーチャー。逆に言えば、格闘技興行的にこれほどおいしい選手はなかなかいない。

残念ながら、松浦さんが惨敗してしまった今、NJKFにヨーデーチャーの相手が務まる選手はいない。ならば……、もしくは……。この先を言う必要はあるまい。

もうキックファンはヨーデーチャーを見てしまった。「こいつを倒さない限り、ウエルター級世界最強は名乗るな」。この日ヨーデーチャーを観たキックファンは皆、こう思ったはずである。

【その他の試合】
「ポチット拓也」後楽園初登場。なんか〜、今イチだな〜。もっとできる選手だと思うんだが、脚をケガしてた影響か、チャットのやりすぎか(笑)。ま、プロ初勝利。おめでと。

・NJKF期待の藤原国崇の試合は、(たぶん)株大暴落の一戦となってしまった。2Rまではまだしも、3Rは相手のテンカオにやられ放題。2Rに奪ったダウンが効いて勝つには勝ったが、おいおいあれで(ヒザが得意な)タイ人相手に大丈夫か?(俺もか)ま、次はお互い頑張りましょ。

・ついに5回戦の童子丸。開始10秒、左ハイキックでダウンを奪うも、直後にヒジで切られTKO。わずか44秒のドラマ。う〜ん。ま、負けは負けです。


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