C君とジムビ−ム



C君には、彼女が居ません。

決して悪い人ではないし、見た目もそんなに変と言うわけではありません。

仕事も公務員という立派な職業です。

彼女ができない原因は、女の子との接し方に慣れていない点にあるようです。

一人で飲んでいて、近くに女性が座ったりすると、すごく意識するくせに、

俺は女なんかに興味がないよ・・という風をよそおおうとするのです。

知り合いとして、親しくなった女の子の中に、気に入った子がいても、

ぞんざいな口をきいて、硬派ぶります。

丁度、小学校の男の子が、好きな女の子に意地悪したりするのに似ています。

本当は好きなくせに、わざと「おまえ」とか「馬鹿じゃねえの?」とか言うような言葉を発します。

そういう点で子供なのでしょう、やさしい言葉をかけるなどということができません。

いい年をしてイキがってるようにしか見えません。

でも、女の子と付き合いたいのは、すごく良く分かるのです。

そのC君が、ある日とあるバーへ来て、ジムビームというお酒をキープしました。

店の人は、いつもジャックダニエルズの黒しか飲まないC君が?と不審に思い、

たずねてみると、来週、職場の女の子とデートをするそうで、

その女の子がジムビームが好きだと言ったらしく、

そのために前もってキープをしておいてあげるのだそうです。

硬派ぶる人にありがちな こだわり とか言うやつで、ジャック一筋と言う顔をしてきたC君が、

違うお酒をキープするなんて、よほど来週のデートにかけているのでしょう。

「それじゃ、来週の火曜日!」と、意気揚々と出ていくC君をの背中を

店の人は優しく見送ったのでした。

さて火曜日 C君がやって来ました。

ところが、その後から誰も入ってきません。

「あれ、一人?」店の人が聞くと、約束していた女の子は急用で

来る事ができなくなったのだそうです。

一週間も前からセッティングしていたC君の努力は水泡に帰しました。

店の人は、好きでもないお酒を一人で飲むC君に少なからぬ同情を寄せると共に、

心の中で「もうちょっと女の子の扱い方を考えた方が良いんじゃない?」と、

聞こえない忠告をしたのでした。

ちなみにそのジムビームは最後の一滴がなくなるまで

C君以外の人に飲まれる事はありませんでした。