基本的闘牛用語

スペイン語の闘牛用語を、日本語(カタカナ)で表記し、簡単な意味を記述します。
ここでは、基本的な事を中心に書きます。(abc順にスペイン語、日本語の読み方、意味の順番で書きます)

por 斎藤祐司


aficionado (アフィショナード)

aficio`n  とは、愛好、趣味。愛着。ファン、愛好者。熱狂、熱心。アフィショナードは、闘牛ファン。熱狂的な人もそうじゃない人の事も、闘牛ファンであればそう言う。本当のファンは、祭り期間の闘牛の通し券、abono(アボノ)を買って通い続ける。マドリード、サン・イシドロ祭のアボノを買うのは難しい。その好い席を取るのは、もっと難しい。他の所なら当日でも好い席が手にはいる。勿論、カルテルによる。良いカルテルと、みんなが見たいカルテルが一致すれば、手に入り難くなる。

alternativa (アルテルナティーバ)

交換、交互。二者択一。闘牛では、ノビジェーロから、正闘牛士への昇進式。アルテルナティーバは2種類ある。トマール・デ・アルテルナティーバは、何処の闘牛場でもできる。この1回目のアルテルナティーバによって、その日の、入場行進の位置や闘牛をやる順番が決まる。コンフィルマシオン・デ・アルテルナティーバは、スペインであれば、マドリード、ラス・ベンタス闘牛場。アメリカ大陸では、メキシコ・シティーの大闘牛場だけ。ノーマルの闘牛は、アルテルナティーバをした順番に牛を相手にする。実際のアルテルナティーバ(昇進式)は、パドゥリーノという、3人の中で1番初めにアルテルナティーバを受けた闘牛士から、真剣(エスパーダ)とムレタを、その日式に臨む闘牛士へ、お先にどうぞと渡され、変わりにカポーテを渡す。この時何らかのコメントを新しくアルテルナティーバを受ける闘牛士に言う。「有名闘牛士になれるよう、日々の努力を怠らないように」とでも言ってるのだろうか?それから1頭目の牛の、殺しの場が始まる。2頭目の牛の、殺しの場の前に、真剣、ムレタとカポーテが交換される。まとめると、式の日の闘牛の順番は、式の主役の闘牛士が、1頭目、6頭目。パドゥリーノが、2頭目、4頭目。テスティーゴ(パドゥリーノが3人の中で1番始めにアルテルナティーバを受けた人なら、テスティーゴは立会人、証人で、パドゥリーノの次ぎに受けた人。)が、3頭目、5頭目。

apoderado (アポデラード)

代理人。マネージャー。闘牛士のスケジュールを興行主と電話1本で決め、闘牛士の出場料の15%〜20%位を、手数料として取る。彼等の力は絶大。興行主を兼ねるアポデラードならなおさらだ。カサ・デ・チョペラ(チョペラ一家)、カサ・デ・ロサノ(ロサノ一家)、は、闘牛界のマフィアの様な存在。闘牛場、興行権、闘牛士を多く抱えている。個人で独立したアポデラードも沢山いる。代表はエンリケ・ポンセの、ファン・ルイス。ホセリ−トのエンリケ・マルティン・アランス。彼は、最近ホセ・トマスのアポデラードにもなった。もう1人、ビクトリーノ・バレンシア。元闘牛士で、フリオ・ロブレス、オルテガ・カノ、最近ではエル・フリのアポデラード。ポンセの義理のお父さんでもある。

banderilla (バンデリージャ)

銛。

banderillero (バンデリジェーロ)

バンデリージャを撃つ人。元闘牛士でアルテルナティーバをした人も多い。闘牛士で稼げなくなって見切りを着け、闘牛と関わりと生活の糧にバンデリジェーロにになる。実質、闘牛の見せ場の一つになっているが、あまり意味がないことだ。何度もバンデリジェーロ廃止論が出ている。

billete (ビジェテ)

お札。切符の事。勿論、電車の切符の事も言う。

brindis (ブリンディス)

闘牛士の捧呈の辞。こんな言い方じゃ解るもんも解らなくなるよね。要するに、ムレタの場の初めに、ムレタと剣を左手に、右手にモンテラ(闘牛士の帽子)を持って「この牛を、あなたに捧げます」と、挨拶をすること。

capote (カポーテ)

カッパ。牛がアレナに初めて登場した時に、闘牛士が牛をパセするために使う表がピンク色、裏が山吹色(黄色ぽい色)の布。

cartel (カルテル)

ポスター。契約。祭り期間の開催予定表。組み合わせ。その日良い闘牛士が3人出ていると、良いカルテルだ、などという。91年であればオルテガ・カノ、エスパルタコ、セサル・リンコン。95年から98年に掛けては、ホセリート、エンリケ・ポンセ、リベラ・オルドニェス。今年は恐らく、ホセ・トマス、エル・フリと、エウヘニオ・デ・モラか、マヌエル・カバジェーロか、ミゲル・アベジャンだろう。エル・フリが出る日の切符はプレミアが凄いだろう。金持ってないと、闘牛士の追っかけ出来ねぇぞ。

con~o (コーニョ)

女性性器。俗語で、くそっ。ちくしょう。あれっ。闘牛場で言う場合は、闘牛士の下手な演技に対して言う。また、牛交換のアピールに、プレシデンテ(会長)が、牛をなかなか替えないときに言う。町中では、肩がぶつかって「ごめん」とも何とも言わずに行く相手に対して、「コーニョ」と、言う。相手が男でも女でも同じ。言うのは「コーニョ」だ。

cogida (コヒーダ)

拘束された、束縛された。忙しい。南米などでは、ファックされた。闘牛では、闘牛士が牛の角に引っかけられたり、突かれたりすること。

corrida de toros (コリーダ・デ・トロス)

闘牛。しかし、corridaは走る。コリーダ・デ・トロスは、牛の走り。闘牛ではなく走牛(そうぎゅう)と、言う人さえいる。英語から来ていると思っている人がいるが、本来はスペイン語のtauromaquiaから来ている。tauroとは、黄道十二宮の第二宮。牡牛座。牡牛。ギリシア神話、ケンタウロスの戦いの事を、ケンタウロマキアと、言う。マキアは、戦いの事らしい。だから、tauromaquiaは牡牛の戦い、となる。蛇足を言えば、大島渚の映画 『愛のコリーダ』 は、阿部定の愛の暴走を描いたもの。肉体関係があるものは、“恋”と言うと思うのだが?(江戸時代の研究者で法政大学教授、田中優子さんの、日本語の、“愛と恋”についての説より) まぁ、くれぐれも愛のコヒーダにならないように気を付けよう。

encierro (エンシエロ)

牛追い。パンプローナのサン・フェルミン祭が有名だ。牛追いとは、言うものの牛に追われるのだ。なんの為にやるかと言えば、闘牛をやる朝、牛を囲い場に追い込む為ににする。エンシエロにでる牛は、その日闘牛場に出てきて殺される。エンシエロは、パンプローナの他、マドリード近郊の、サン・セバスティアン・ロス・レジェスなどがある。みんなが一斉に走るのでアクシデントで直ぐ転ぶ。牛が近くにいる時には立たない方が良い。何故なら立った所に牛が来るから、角に刺される危険が高い。大怪我をしたり、死ぬことさえあるからだ。

espada (エスパーダ)

最後のムレタの場でとどめを刺す剣のこと。

estocada (エストカーダ)

最後のムレタの場でとどめを刺すこと。刺殺。estocada muy bien. 剣刺しが良かった。

fuera (フエラ)

外へ。牛に対して言う場合と、闘牛士に対して言う場合、プレシデンテに対して言う場合がある。コーニョと使い方が似ている。

hora de verdad (オラ・デ・ベルダ)

直訳すると、本当の時。闘牛で言う時は、格好良く「真実の瞬間」と、言う。ヨーロッパの神話で、時の女神を“ホラ”という。綴りは一緒。女神の名をいつしか、時間、の事を言うようになったのだろう。ギリシア神話の愛の神“エロス”は何故、愛=エロスにならなかったのだろう? 真実の瞬間とは、最後の留めの剣刺しを言う。これが決まって耳なんぼの世界だ。地方の闘牛場では、剣刺しだけが良くて耳を取ることが出来る。耳なんて実はいい加減でもあるのだ。

hombros (オンブロス)

俺が、バルセロナで骨を折ったのは肩(hombro)。複数形は、両肩。肩車。つまりプエルタ・グランデと同じ意味。何故なら、 sali`o de hombros por la puerta grande (ファンの肩車に担がれて闘牛場の大門から退場した)だからだ。

mano a mano (マノ・ア・マノ)

スペインのサッカー中継で、オフェンスとディフェンスが向かい合った時に、マノ・ア・マノとアナウンサーが言う。つまり一対一の事を言う。闘牛の場合は、2人の闘牛士が6頭の牛を相手にする闘牛。(普通は、3人の闘牛士が6頭の牛を相手にする)

matador (マタドール)

殺す。トランプの切り札。殺人者。闘牛では、闘牛士の事。

mozo de espada (モソ・デ・エスパーダ)

剣持ち。闘牛士が牛を殺すとき使う剣を用意している人。闘牛士によって違うが金銭管理までさせる人もいる。食事の支払い、ホテルへのチームの配置などの細々したことを実務している。

muleta (ムレタ)

松葉杖。つっかい棒。闘牛士が殺しの場(テルシオ・デ・ムエルテ)で、使う赤い布を支える棒、または、棒と赤い布、全体を言う。

novillo (ノビージョ)

2−3歳の若い牛。その若い牛による闘牛。妻に不貞を働かれた夫。ノビージョの牛を相手にやる闘牛士をノビジェーロと言う。切符の値段はTOROの半分位だ。

oreja (オレハ)

耳。闘牛士にとって、牛の耳を貰う事は自分の闘牛に対して観客の満足と、評価を意味する。1頭の牛で耳2枚が最高。それ以上の闘牛の場合は、尻尾を貰う。さらに、良い場合は牛を生産した牧場に返して種牛にする。これは、年にスペインの中で平均3回位あるが、100回闘牛を観ても、それに出会うのは非常に難しい。

pase (パセ)

通る、通過する。越える。過ごす。移す。闘牛では、闘牛士が動かずにカポーテやムレタを使って牛を動かす事。パセの基本は、シタール(誘う)、パラール(止める)、テンプラール(緩和する、静める、抑制する)、マンダール(命じる。支配する)。ここでは、詳しくは説明しない。

pen~a (ペーニャ)

「東京闘牛の会」 のスペイン語は、Pen~a Tendido Tauro Tokyo だ。ペーニャとは、日本語で言う、“連”(れん)。高円寺の阿波踊りのグループ名を○○連と、付けているのは、これ。昔、横路さんを北海道知事させようと結成した“勝手連”も、それ。(あれは、最後の所は連合だったかな。)これは江戸時代に、町人の中で出来た趣味の集まりを言う。あるいは、ファンクラブ。

picador (ピカドール)

ピカ(槍)を刺す人。1番良い刺し方は、モリージョという牛の首の瘤の所だ。闘牛で、pica と pico は、大いに違う。ここではその違いは省く。バンデリジェーロと、同じで元闘牛士も多い。去年スペインのTVを見ていたら、女性ピカドールがいた。レホネアドーラのマリア・サラや、マタドーラのクリスティーナ・サンチェスが出てからと言うもの、闘牛界にも女の活躍の場が広がった。前は、ガナデリアの未亡人だけだったはず。(昔も、女闘牛士がいたが、これだけ活躍し話題になったのは、クリスティーナだけだろう)。ピカソがなりたかったのが、ピカドール。今ピカソが闘牛を観たら、どんなこと思うんだろう。

pinchazo (ピンチャソ)

一突き。一刺し。刺し傷。病院で注射をうつ時にも使う。闘牛では、剣刺しの時に、剣の先だけがちょっとしか牛に刺ささらない事を言う。駄目な剣刺しの代表。

puerta grande (プエルタ・グランデ)

大門。闘牛場に1つだけある大門からファンの肩車に乗って退場することが闘牛士のその日の最高の栄誉になる。マドリード、ラス・ベンタス闘牛場(世界最高の闘牛場)のプエルタ・グランデから肩車で退場することが全ての闘牛士の夢である。ラス・ベンタスでプエルタ・グランデが決まった時、一体何人の闘牛士が涙を流したことか。それは、闘牛士の幸せの扉を意味する。

rejoneador (レホネアドール)

牛の背中に短い手槍を突き刺す騎馬闘牛士。

suerte (スエルテ)

運命、宿命、運、幸運。境遇、身の上、状態。抽選、宝くじ。種類、部類。
闘牛士が闘牛場にやってくると、アフィショナードから、mucha suerte! と、声が飛ぶ。これは、幸運を、がんばってなどという事だ。あるいは、技の事を言う。 La suerte de recibir. (牛を待ち受けて剣を刺す技)などと言う。

taquilla (タキージャ)

切符売り場。電車に乗るときにもタキージャで切符を買う。闘牛場にあるタキージャは正規の値段で売っている。その他に、公営ダフ屋は約20%の割り増し料金。町中のダフ屋は、良いカルテルだと際限なく高い時がある。が、そこは言葉が判らなくても熱意を伝えることだ。それが、ダフ屋の心を打つ。言い値よりまけてもらはなきゃ駄目よ。それが礼儀なのだから。

tercio (テルシオ)

3分の1。軍隊の部隊。競馬では、スタート、疾走(ギャロップ)、ゴール。ロザリオの3つの祈りの奥義、喜び、苦しみ、栄え。闘牛では、3つの場のこと。1つ目の、テルシオ・デ・バラス(バラスは槍のこと)は、闘牛士がカポーテ技を披露して、ピカドールが馬に乗って登場、牛にピカ(槍)を刺す。2つ目の、テルシオ・デ・バンデリージャは、バンデリジェーロ3人がそれぞれの持ち場を担当する。1人はカポーテを持って牛をある場所に置き、1人は、バンデリージャを2回打ち、1人は、1回打つ。3つ目の、テルシオ・デ・ムエルテ(ムエルテは、死。)は、闘牛士が、ムレタと剣を持って右手、左手を使って牛をかわす。最後で真剣に替えて牛に刺して殺す。3つ目が1番の見せ場になる。

torero (トレロ)

駅のホームで、旅立つ友に仲間達が 「トレーロ、トレーロ」 と、言って送り出す風景に出会う事がある。トレロには、良い人と言う意味もある。が、基本的に闘牛士のことを言う。闘牛場で観客が感動すると 「トレーロ、トレーロ」 と合唱が起こる。そうなるとプエルタ・グランデが待っている。いつもそんな闘牛に出会う訳ではない。だからこそ、そんな闘牛を観ると止められなくなるのだ。あなたは、泣きながら闘牛を観たことありますか? ないとすれば、可哀想にと思う。あるとすれば、その事を一緒に話しましょう。

veronica (ベロニカ)

ゴルゴダの丘でキリストの顔をベロニカが両手で持った布で拭くと、後にキリストの顔の後が残ったと言う。聖ベロニカ。闘牛のベロニカは、キリスト教の聖ベロニカの話から来ている。カポーテを両手で持って行うパセの事を言う。


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