HOMETOP   

 MAZE     恩田陸  双葉社

 アジアの西の果てにある「存在しない場所」または「あり得ぬ場所」と呼ばれる、白い矩形の構造物。
こそに入り込んだ人間のうち何人もが戻ってこないという、曰くつきの場所。
そこに、恵弥、満、スコット、セリムの4人がやってきた。「人間消失のル−ル」の謎を解き明かすために。

 ということで、すごく期待して読みました。恩田陸は「閉鎖された空間」での物語がすごくうまいので。この本も途中までは期待通り、わくわくして、読んだのに・・・・
まさか、これが結末とは!うまくまとめた、ともいえるのだけど、少なくとも、私が想像していたような形にはならなかったので、ちょっとがっかりしてます。
そこがいいのかな・・・・・う〜〜〜〜ん。
 麦の海に沈む果実      恩田陸 講談社

 陸の孤島のような、湿原の中にある「青の丘」そこに学園と寮があった。
複雑な家庭の事情を抱えた「墓場」、特殊な職業につくための「養成所」環境の整った所を求める「ゆりかご」。それぞれの事情でこの学園に集まった中学生から高校生までの生徒たち。
理瀬は2月の最後の日にこの学校に転校してきた。
3月以外に入って来る者があれば、その者が学園を破滅に導く、という伝説がある学園に、何故理瀬は2月に転校してきたのか・・・・・

 すっごく、おもしろかった!
同じように「学校の寮」という閉ざされた場所をテ−マにした「ネバ−ランド」も好みだったけど、
こちらの方は、謎めいていて、妖しい雰囲気でもろ私好み!探し回って買ったかいがありました。

「赤毛のアン」と「若草物語」についてかかれている部分には意義を唱えたいと思いますけど(笑) 
 慟哭    貫井 徳郎  東京創元社

 日野で起こった幼女誘拐殺人事件。
佐伯一課長はじめ警視庁捜査一課は必死で捜査を続けるが、不幸な事に
第二の事件が起きてしまう。
 捜査の様子と交互に書かれる心にぽっかりと穴があいた“彼”が
新興宗教に救いを求め、のめり込んでいく様子。

 子どもをこんな形で突然奪われた親の悲しみ、犯人に対する怒り、
また捜査を続ける警察のあせりなど、それぞれの心情が細やかに書かれて
いると思う。
そして何かにとりつかれたように、新興宗教にはまっていく“彼”
読んでいて胸にせまるものがある。

そして、驚愕の真実。ラストシ−ンではだた呆然とするばかりだった。
まさか、そんな・・・・・・思わずその部分を何度も読み返してしまった。
 永遠の仔      天童 荒太  幻冬社

虐待され、児童精神科で知り合った3人。
10数年後、再会したとき、過去のある事件が明らかになって・・・・

私にとっては、読み続けるのも、苦しく、
しかし、途中でやめる事もできない、つらい本でした。
ジラフもモウルもルフィンも昔の私自身のように
思え、また、自殺したがる少女の遺書(日記)
は私が書いたものかと思ったくらい・・・
心の奥に封印したはずの思いが一気にふきだし、
何日も忘れたはずの感情にとらわれ、
平静になれない日が続きました。

3人は出会えて幸せだったと思う。
苦しみを共有しあえる人と巡り会えずに
たったひとりで苦しみ続けなければならない人の方が多いから・・・・

子供には、親を選ぶことも、環境を選ぶこともできない。
たとえどんなつらいことでも、あきらめて、
け入れて、その中で生きていくことしかできない・・・・

すべてがFになる  森博嗣 講談社ノベルス

理科系ミステリ−とでもいうのでしょうか。
今までにないタイプのミステリ−でおもしろかった。
16進数の授業を思い出しました。
Fってそういう意味かぁ!とびっくりして、やられた!って感じです。
同じ主人公で10冊(長編)あります。(短編2作)
文庫でも出版されました。
夏の厄災  篠田節子

玉県の昭川市(仮名)でいままで見たこともないような
日本脳炎が流行って次々死者がでた。というパニック小説。
場所が埼玉であること、産廃が問題になっていること、
役所の対応が遅いこと、などあまりにも現実と重なる部分が
多くて怖かった。

催眠−hypnosis  松岡 圭祐  小学館文庫

稲垣吾郎・菅野美穂で映画化された話題作。
映画の方は怖いホラ−のようですが、
原作は殺人などは起こりません。
でも、催眠術の見方がかわりました。

「警告」 P・コ−ンウェル 講談社文庫

 検屍官シリ−ズの10作目。
前作「業火」で焼死したベントンから、1年後、ケイに宛てた手紙が届く。

今回の作品はサスペンスとしては、今までの作品よりもの足りないが
ケイやル−シ−、マリ−ノがベントンの死といかに向き合い、乗り越えようと
しているか、読んでして切なくなってくる。
私自身も「業火」はベントンの死が悲しくて、最後までちゃんと読めなかったので・・・・
もういちど、「業火」を読み直そうと思う。

「ななつのこ」 加納 朋子 創元推理文庫

 駒子が買った『ななつのこ』という短編集の話と
駒子の現実に起こった事件がうまくリンクしていて、不思議な味わいの本だと思った。
鮎川哲也賞を受賞したミステリ−ではあるが、あまりミステリ−という感じはしなかった。
でも、最終章の結末は予想していなかったから、やっぱりミステリ−か。
 往復2時間程度の電車の中で簡単に読み終わった。読みやすい本だ。


「魔法飛行」 加納朋子 東京創元社

 「ななつのこ」の続編。
「ななつのこ」で瀬尾さんに物語を書くことを薦められた駒子が
書いた、物語とも日常ともつかない話。
それが、複雑に絡まり合って、しかし、最後には
きちんと収まるべきところに収まって・・・
「謎を解く」という意味ではたしかにミステリ−なんだけど、・・・・

「ななつのこ」のときと同じ事をかいてますね。
こういう「上手」な本を読んでしまうと、感想を書こうとしている
自分の言葉がすごく貧困に思えてきます。


   知られたくないこと   サンドラ・ブラウン 新潮文庫

アメリカ大統領は殺人者だった、というかなり大胆な内容。
それにしても、アメリカ大統領は映画「エア・フォ−スワン」では
テロリストと戦い、
「インディペンデンスデェイ」では宇宙人と戦う英雄だった。
しれが今度は殺人者。世界一有名な職業だもんね。

「月曜日の水玉模様」  加納朋子  集英社

  またまた加納朋子。

  日常の見過ごしがちなちょっとした事を伏線にするのがとても上手。
  きっと、細やかに人を観察しているんだろうな。
  「ガラスの麒麟」や「ななつのこ」を読んだときほどの感動はなかったけど、
  加納朋子らしい、さらっと読める本だと思う。


   「ガラスの麒麟」   加納朋子  講談社

   2月22日、通学途中の女子校生「安藤麻衣子」がナイフで刺されて殺された。

  麻衣子の周囲の人を中心にした短編が6つ。
  この作家のうまいなぁ、と思うところは、一見なんの関係もない短編のようなのに、
  実はそれが緻密に計算された伏線となっていて、
  最後には、うまくより合わさって収まるところにきちんと収まるところ。
  そして、ひとりひとりの人物が丁寧に描かれていて、
  とても読みやすい。
  この先も目が離せない作家になった。


「六番目の小夜子」 恩田陸 新潮社

  テレビドラマを見始めたので、ドラマが終わるまで読むのやめようか
  迷ったけど、やっぱり、我慢できずに読んでしまいました。

  ドラマとは、やっぱり別のものでした。
  設定も違うし、登場人物もちょっとづつ違う。
  でも、だからこそ、新鮮に楽しめたような気がします。
  
  恩田陸は、読み終わったあとの余韻がうまい作家だと思う。
  「六番目の小夜子」は学校というある意味閉鎖された、特殊な空間を
  うまく使っていて、特に学園祭の部分はすごい。
  この部分、ドラマでは、どうなるのか楽しみだ。


   「ハンニバル(上)(下) T・ハリス 新潮文庫

  サイコ・スリラ−の代表作「羊たちの沈黙」の続編。
  
  スティ−ブン・キングをして「前作を凌ぎ『エクソシスト』と並んで20世紀に
  屹立する傑作」と言わしめたらしいが、
 前作を凌いでいるかどうかは別にして、これはこれで、おもしろかった。
 映画「羊たちの沈黙」でレクタ−博士を大好きな俳優アンソニ−・ホプキンスが
 演じた印象がつよいせいか、レクタ−を見る目が好意的になってしまっている。
 だから、こういう形でハッピ−エンド(?)で終わったのは、うれしいような・・・
 でも、クラリスがまさか、こんな・・・・・う〜ん、ネタばれになるので書けませんが。
 幸せならいいのよね。きっと。
 「羊たちの沈黙」のFBIが凶悪犯を追いつめていくのとは違い、
 ハンニバル・レクタ−について こと細かに語られていて、
 私的には、その点が一番うれしかったかな。


「トキシン−毒素−」  ロビン・クック  早川書房

   生焼けのハンバ−ガ−のせいで病原性大腸菌O−157に感染した
   ベッキ−は、病院の対応の悪さもあって、HUS(溶血性尿毒症症候群)
   になり、亡くなった。
   父親で心臓外科医のキムはハンバ−ガ−の汚染の原因を突き止めるため、
   調査するが、様々な妨害にあう。

   いつも医学上の問題をテ−マにしていて、出ると必ず買ってしまう作家のひとり。
   このお話自体はフィクションであるけど、
   現実にも、O−157による、死者は出ているので、
   読んでしてとてもフィクションとは思えなかった。
   また、業者と役人が手を組んで、利潤追求を第一に考えると
   犠牲になる者が出ることもある。恐ろしいことだ。
   日本でもよくある事だけど・・・・・