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 アイ・アム  I am    菅浩江  祥伝社

 新井素子の『今はもういないわたしへ』 小林泰三 『人獣細工』 ジェイムズ・ティプトリ−・Jr 『接続された女』などを思い出してしまった。内容が似ているわけではない。共通しているのは、人間とはなにか、生きているってどういうことか、って考えさせるところ。そして、答えはまだ見つけてない私。

 『アイ・アム』は暖かい、肯定的な回答をくれたように思う。それが正解であるのかは、まだわからないけど。
こらから、ますます体の壊れた部分を取り替えるケ−スが増えるだろう。それは臓器移植であったり、機械だったりするだろうけど。
本当にいろいろ考えさせられる本だ。 

  ハリ−ポッタ−とアズカバンの囚人  J・K・ロ−リング  静山社

 ハリ−ポッタ−の3作目。

 3作の中では一番おもしろかったかもしれない。
アズカバンの要塞監獄から逃げ出した、凶悪な囚人シリウス・ブラック。マグルまでもを巻き込んで指名手配せれるが、一向につかまる気配がない。
しかも、ブラックはハリ−の命を狙っているという、一体なぜ?
ホグワ−ツの先生たちはハリ−の身を守るため、学校外への外出を禁止したり、ひとりでの行動を制限したりする。また学校の周囲を吸魂鬼に警備させることまでする。なのに、ブラックらしき人物がグリフィンド−ル寮の中に現れた!

 正直、疑いつつ読み始めたんだけど、一気に読んでしまった。おもしろかったよ〜。
今回はミステリ−っぽいところもあって、「これはどうなるの?」とわくわくしながら読んだ。子供がはまるわけだ。
読み終わって表紙を見ると、なんと全ての謎の答えがそこに!読んでいる間には全然わからなかったけど。

世界中の子供達が熱中するのもわかるような気がする。4巻が楽しみだ。

  希望の国のエクソダス  村上龍  文藝春秋

 出来ることなら、テロが起こる前に読みたかった。
現実が小説よりも(悪い方向に)早く進行しているようで、恐ろしい。
テロの直後、株価は10000円を割った。昨日(10月30日)の新聞では、失業率が5.3%になったと言っている。アフガニスタンでは戦争が起こっている。中学生だけでなく誰もが希望がない時代だ。

 学校についても、パソコンやインタ−ネットどころか、TVやビデオすらなかった時代と同じ制度というのは間違っていると思っていた。子供達はTVでセンタ−ビルに飛行機が突っ込む瞬間をリアルタイムで目にしてしまう時代である。湾岸戦争の時にも、まるでTVゲ−ムのようだった。そんな子供たちが、新聞やラジオでしか情報が得られなかった時代と同じ制度のもとで学校に通う。やっぱり違う。
しかも、学校でいい成績をとって、いい大学に行って、いい会社にはいれれば安心、という時代はとっくに終わってしまっている。学校に行く意味さえ見失ってしまうのは、無理もないように思う。我が子にだって、「絶対、なにがなんでも学校ヘ行け」とは言えないもの。幸い今はお友だち会えて、遊べるのが楽しいから学校が好き、と言ってくれているけど、もし、イジメなどが起こったら、きっと行かなくなるだろう。

 感想のような違うような感じになってしまったけど、読んでいる間中、いろいろなことを考えさせられた。読んでよかったと心から思える本だった。

  オルガニスト  山之口 洋   新潮文庫

将来を嘱望されていたオルガニストのヨ−ゼフは、事故で右半身が麻痺してしまう。事故をおこしたテオは深い自責の念にとらわれる。そんなある日、動けないはずのヨ−ゼフが病院から消えてしまう・・・・・
それから9年。テオの元に一枚のMDが届く。演奏はハンス・ライニヒというまだ新人のオルガニストだった。

 音楽になりたい、と言っていたヨ−ゼフが最終的に選んだ道がなんとも悲しい、でも、ヨ−ゼフにとっては本望だったのか。ハ−ドカバ−版で、読んだときにはそのあたりが、あまりにグロテスクなように感じて、すごく怖かったのを覚えている。(別にホラ−はキライではないけど)
でも、今回文庫版を読んで、本当に才能がある人間が、その道を絶たれそうになったとき、藁をもつかむ思いで、こういう選択をすることもありなんだな、と切ない思いがする。

文庫化にあたり改稿されたということだが、私的にはとても読みやすくなったように思う。
また、瀬名秀明の解説がいい。わかりやすく、本に対する愛情が伝わってくる。これを読むためだけに買っても損はない。既にハ−ドカバ−で読んだ人も、是非文庫版も読んでみて欲しい。


   最後の家族  村上龍  幻冬舎

 父、秀吉、会社が危機的状況にある。リストラもあるかもしれない。
 母、昭子、引きこもりの息子、秀樹のために、カウンセリングに通いながらも、大工の延江との密会を重ねている。まだ、不倫ではない。
 長男、秀樹、引き込み暦1年半。21歳。窓から、隣家を除き、偶然、DVを目撃してしまう。それ以来、隣家の妻、ユキをDVから救うことを考え始める。
 長女、知美、高校3年生。普通に進学することを考えていたが、元引きこもりだった、近藤と出会い何かが変わり始める。
 そんな内山家のある意味での再生の物語、なのかもしれない。

4人の家族のそれぞれの立場から書かれているので、同じ現象でも、それぞれの感じ方、考え方で見方が変わる。家族だから、という枠ではくくりきれない、それぞれの感情や生き方がある。かならずしも、同じ屋根の下で、一緒にゴハンを食べることが家族の証明ではない。多分、この結末はこの家族にとって、最上のものだっただろう。 家庭の数だけ、それぞれの形が在っていいのだから。

 ひとりで生きていけるようになること。それだけが、誰か親しい人を結果的に救うんです。
                             (本文 285ペ−ジ)
 本の内容からはそれるけど、ここに出てくる地名のほとんどが、よく知っている場所だった。ある意味、ご近所?!具体的な風景も思い浮かべることができたおかげで、物語がすごくリアルだった。
ただ、「××では●●なんてない!」って突っ込みたくなって、話から気がそれてしまう部分もあった。フィクッションはよく知らない場所が舞台の方がいいな・・・・・