超・ハ−モニ−  魚住直子  講談社


   どうも、このての本を読むとき、子供の方にかなり感情移入していまう。
見た目の形だけを整えて幸せな家庭のつもりになっている親は以外に多い。でも、子供にとってどうなんだろう。
↑の「夏の鼓動」は崩壊した家庭だったけど、母親と娘がののしりあったり、怒鳴りあったりしながらも、言いたいことを言い合っていた。この「超・ハ−モニ−」の方は私立中学に通い、親もきちんとしていて、傍から見ると平和で幸せそうに見えるだろう。でも、子供の話は全然聞いていない。どちらも子供にとって居心地のいい家庭ではないと思う。でもどちらかを選べと言われたら言いたいことが言える方がいいような気がする。これもかなりオススメ。

 ちんぬく じゅうしい 「本日の、吉本ばなな。」より 吉本ばなな 新潮社


 沖縄に旅行に行ったばかりなので、空の色や空気の匂い、市場の様子や食べ物のことなど、具体的に思い描けるのがうれしい。

 沖縄には不思議な力があると思う。多くの犠牲をだし、しかもまだ多くの部分を越えることの許されない柵で囲われている。そんな土地でありながら、悲しいことは悲しみとしてしっかり受け止め、それでも前向きに生きていこう!っていう生命力に溢れているような気がするのだ。

この物語の中にでてくる沖縄のおばさんのことば、「どうでもいいことや、くだらないことがいちばん強くてあったかくて、深刻なこととか理屈なんて大切なように思えても、そういうちっちゃい思い出に比べたら、全然へなちょこなのよ」
私が、吉本ばななの本を読むのは、こんな言葉が聞きたいからなんだろう。

ドミノ 恩田陸 角川書店
 
  舞台は東京駅。その時間、その場所に居たがために、ある事件に巻き込まれる人達。
せまりくるタイムリミット!倒れだしたドミノは止まらない!

 恩田陸作品とは思えないコメディタッチの物語なんだけど、おもしろかった!!!
でも、人生ってこんな感じかも、とも思ってしまった。
一見、何の関係もない人の事情が、もつれてからまって、以外な展開になるってことはあっても不思議じゃない気がする。
ドミノが倒れていくように、一気に読める本でした。


サマ−タイム 四季のピアニストたち  佐藤多佳子/MOE出版
九月の雨   四季のピアニストたち 

 進 11歳。姉の佳奈 12歳。 広一 14歳の夏の物語。
進と広一が出会ったのはプ−ルでのこと。ひょんなことから仲良くなったふたりと進むの姉、佳奈を交えての物語が4つ。

 どれもさりげないようでいて、せつなく、懐かしいような物語。特にこの夏の季節に読むんはぴったりすぎて・・・・
ピアニスト志望だったのに、事故で父親と自分の左腕を無くしてしまった、広一。そんな広一が右手だけで弾く「サマ−タイム」のメロディが耳に聞こえてくるようだ。

虚空の旅人   上橋菜穂子  偕成社

 <守人シリ−ズ>の外伝。
『精霊の守人』で精霊の卵を身に宿した皇太子チャグムは14歳になっていた。新王即位の儀に招かれ、海の国であるサンガル王国に到着した。そこでチャグムは思わぬ陰謀と呪詛に巻き込まれてしまう・・・・

1月に聴きに行った講演会で「ます、イメ−ジがあってそれをふくらませると、物語は向こうからやってくる」とおっしゃってたけど、この物語もまさしくその通りに生まれてきたのだろう。

  潮風が香ってくるかと思うような海。平和な王国のお祝いの儀の華やかな中で起こる、王家をめぐる陰謀。<ナユグ>の世界に魂をとらわれてしまった娘。チャグムがナユルの水を感じるシ−ンや、スリナァがエ−シャナの魂を出会う海のシ−は特に好き。本当に美しいのだ。最初から最後まで目が話せない展開で、本を閉じることが出来ず、一気に読んでしまった。
物語を読むことの幸せを感じさせてくれる本だ。


風をつぐむ少年   ポ−ル・フライシュマン  あすなろ書房


 16歳のブラントは酔った勢いで自殺を図る。ところが自分ではなく見ず知らずの18歳の女の子、リ−を死なせてしまう。
リ−の家族はつぐないとして、リ−の顔をした<風でうごく人形>をアメリカの四隅にたててほしい、と提案する。そうしてブラントはつぐないの旅にでた・・・・

 「人間の行為はさまざまな結果をもたらします。そのすべてを知るちからは人間にはありません。行為の結果は目にみえないところにまでおよびます。未来にまで、だれもいけない遠くにまで、それは旅をするのです」と語るリ−の母親。
 旅をするブラントの様子と、ブラントが立てた<風で動く人形>についてのエピソ−ドが交互に語られている。最初は意味がよくわからなかったのだけど、(なんでイキナリ関係のない話が?って思った)読み進むうちに、そうだったのか!と気がついたら、↑のリ−の母親の言葉がずっしりを感じられた。
償いの旅は、ブラントにとっては成長のための旅でもあり、自分を再発見する旅にもなった。こんな償いを提案したリ−の母親という人はなんて素敵な人なんだろう・・・・
 
 「かわいい子には旅をさせろ」という言葉がずっと頭の中から離れなかった(笑)

ブル−プリント   シャルロッテ・ケルナ−  講談社

 多発性硬化症という不治の病に冒されたピアニスト・イ−リス(IRIS)が自分の才能を永遠のものにするためにクロ−ンの娘ス−リイ(SIRI)を自ら産む。「あなたはわたし=わたしはあなた」と育てられたス−リイの立場から書かれた物語。

クロ−ンなんて言葉がでてくると、SFかと思って敬遠したくなる人もいるかもしれないかど、どちらかというと、思春期の親子の問題として読める。または双子とか、アイデンティティとか。ヤングアダルト方面の本に感心の有る方にはオススメだ。

きみにしか聞こえない -CALLING YOU- 乙一  スニ−カ−文庫

 *Callng You *
 女子高生のリョウは友だちがいない。話す相手がいないから携帯電話も持っていない。本当は寂しかったけで、「そんなこと気にしていない」という態度をとっていた。
そして、頭の中だけで、携帯電話を想像して楽しんでいた。想像の携帯電話はだんだん存在が大きくなって、とうとうある日、誰かから電話がかかってきた!

  せつない、せつない、お話だった。今の学生は携帯電話という目に見える形で、友だちがどれくらいいるか解ってしまうので、本当に可哀想だな、と思う。たぶん、リョウのような思いをしている子はたくさんいるだろうに・・・・
(携帯で繋がっているからといって、本当に友だちなのかどうかは疑わしいと思うのだけど)

 * 傷 -KIZ/KIDS- *
 11歳のアサトは、他人の傷を自分の体に移すことが出来る不思議な力を持っていた。その力を使って多くの人の傷を自分で引き受けて、体中傷だらけになっていた。アサトは実の母親に刺され殺されかけたのだった・・・・
なんともやるせない、悲しいお話だ。読んでいてつらくなるほど。

 * 華歌 *
 病院の雑木林に歌う花が咲いた。その花は人間の顔をした花だった。何故、こんなところにこんな花が・・・・
 これも、切なく、悲しい、お話だった。

さよならダイノサウルス  ロバ−ト・J・ソウヤ− ハヤカワ文庫


 恐竜絶滅の謎を解明するために、6500万年前の白亜紀末期へ赴いた古生物学者のブランディとクリックス。そこでふたりは恐竜だけでない、別世界の知的生物と出会う。

というような筋書きですが、めっちゃおもしろかった!タイムトラベル・恐竜・反重力・異星人・など、ひとつひとつはありがちなアイディアなんだけど、それがこんな風に組み合わさるとは!読んでいる間中、初めてSFを読んだ子どもの頃のわくわくするような気持ちを思い出しました。ソウヤ−の作品は4作目だけど、これが一番読みやすかったかな。
本当に楽しかった!!


銀のキス   アネット・カ−ディス・スラウス 徳間書店

 ゾ−イのお母さんは重い病気で入院している。父さんは仕事と看病に追われゾ−イと話す暇もない。しかも、親友のロレインも引越しをすることになり、ゾ−イは孤独だった。そんな時に知り合ったサイモンも深い孤独を抱えた少年だった。ふたりは一目で惹かれあうが、実はサイモンは普通の人間ではなかった!

 母親の死を恐れるゾ−イ。永遠の命を持つがゆえ深い孤独の中で生きるサイモン。
ふたりを結びつけるのは「死」だ。「死」についてきちんと向き合った時、人は大人になるのかもしれない、と思う。

 私は小さい頃、吸血鬼の存在を信じていた(笑)毎晩寝る前には神に「吸血鬼がきませんように」と祈り、十字架を身に付けないと眠れない子どもだった。でも、サイモンのような美しい吸血鬼になら血を吸われてもいいかも。「ポ−の一族」「夜明けのヴァンパイア」など、好きな吸血鬼の物語はあるけど、これもとても好き。ラストシ−ンでは涙がでました。


   佐藤正午   ハルキ文庫


 「あの時、ああしていたら・・・」
ちょっとした偶然、ちょっとしたタイミングのずれで、人生は分岐していく。
愛する女性のため、あの瞬間に戻りたいと願い、とうとう時間を超えてしまった男の人生。なんとも切ない物語だ。

 あの時に戻ってやり直せば全てうまくいく。誰もが考えることだと思う。でも、そうじゃないのね。ちょっとしたズレがの字のように、大きく離れていって、願ったのとは全く別の人生になってしまっても不思議ではないのよね。なのに、「あの時にああしていたら・・・」自分の思う通りに人生が送れるかもしれない、って考えてしまう。

 人の一生には多くの人が関わり、複雑に織り上げられた織物のようなものなのかもしれない。だから、ちょっとした違いで織り上がりがまったく違うものになってしまったりするんだろうな。
とても切ないお話だった。


フロン  岡田斗司夫  海拓舎

 本当に男性にこそ読んでもらいたい。(特に我が家にいる誰かさん!笑)
もちろん、女性にも!
今まで、漠然と思っていたこと、もやもやした不満を、きちんと言葉にしてもらって、自分の問題が具体的に見えてきたという感じ。

 夫をリストラしよう、とまでは思わないけど、自分がリ−ダ−である、と自覚することは精神衛生上もとてもいい(私の場合)。我が家は2年前まで、夫が中国に単身赴任していた。その間の3年半、私は名実ともに家庭のリ−ダ−だった。(収入は夫に頼っていたけど)
だから、たまに夫が帰国しても、「お客さん」として充分にもてなしたし、家庭内の全てのことを自分ひとりで決めて、実行することに、何の不満もなかった。快適でさえあった。でも、帰国してからの2年、夫はお客さん気分がぬけず、私はそれにイライラしたりして・・・・
だって、ビデオ、パソコンの配線から、植木の手入れ、力仕事から何から何まで、私がやるんだよ〜。夫が家ですることといったら・・・・何もない!
 「あなたがリ−ダ−でしょ?」と思うと何もしないことに腹が立つけど、「私がリ−ダ−なんだ」と思えばいいんだよね。目からウロコ・・・・

まだまだ書きたいことは山のようにあるんだけど、あんまり書くと「家庭の問題暴露!」になってしまうので、この辺りでやめておこう。

とにかく、一読の価値あり!


大人問題  五味太郎  講談社文庫

言いたいことを言っているようだけど、五味太郎の発言は好きだ。
今の子どもの問題を考えるにはまず、大人の問題から・・・という訳で、たとえば「学校にいじめがあるのではなくて、学校という構造そのものがいじめなのだ」とか「ダメな親ほど、子どもにとって親は絶対必要だと思っている・・・・(中略)二親が揃っていないからこの子は曲がった、などという言い方をよく聞きますが、三親いても四親いても曲がるヤツは曲がる」とか。ところどころ、言い過ぎじゃない?という部分があったとしても、「そうだよな〜」と共感できることが多かった。
でも、こういう本を読んだ方がいいと思う大人ほど、読まないんだよね。「まぁ、この人はなに言っているんでよ!」とか言って。


ぶたぶたの休日   矢崎 存美   徳間デュアル文庫

「ぶたぶた」の続編。と言っても物語が続いているわけではないので、これだけ読んでもOK!主役は同じ「山崎ぶたぶた」。

 癒す、という言葉はあまり好きじゃないんだけど、もし、ぶたぶたが近くにいたら、癒されるんだろうな〜。和む、と言ってもいいかな。
どの短編も日常の緊張感をふっと緩めてくれて、気持ちが落ち着く話ばかりだ。

いくつもの週末  江國香織 集英社文庫 

 江國香織の結婚生活をつづったエッセイ。

 江國香織のエッセイはとても好きだ。
 結婚生活は甘いものではない。育ってきた環境も考え方も違う他人同士がひとつ屋根の下で暮らす。それは大変なことだ。大きなケンカ。ささやかな言い争い。我慢、寛容。
このエッセイの中の「よその女」と「ごはん」が特にいい。結婚生活はまさに「ごはんは・・?」なんだもの。なんの才能もない、”養ってもらってる”女は「ごはんは?」のせいでひとりで出かけることすらままならないのだから。
それでも、まだしばらくは一緒に歩く歩道に乗って、同じ方向へ流されていくのだろう。終点まで行くのか、どちらかが降りるのかはわからないけど。

 独身の人はこの本を読んでどう感じるのかな。

ぶたぶた  矢崎 存美  徳間デュアル文庫

 主役は「山崎ぶたぶた」と言う名前のピンクのぶたのぬいぐるみ。大きさはバレ−ボ−ルくらい。ただのぬいぐるみではない。しゃべるし動くことができる。牛乳だって飲むし、なんでも食べる。そこらのぬいぐるみではないのだ。

 ぶたぶたが主人公の短編が9編。
ある時はベビ−シッタ−。ある時はタクシ−の運転手。結婚していることもあるし、フランス料理のシェフの時もある。
ぶたぶたと関わった人は「なんでぶたのぬいぐるみが???」と思いながらもぶたぶたのおかげで、一歩前へ踏み出すことができる。とても不思議に暖かく、やさしい気持ちになれる、短編ばかりで、私もぶたぶたの大ファンになってしまいました。

 この中で一番好きなのは「銀色のプ−ル」。小学生の頃、よく家出をしたものとしては、私もぶたぶたと一緒にカレ−を食べたかったな、と(笑)

 今、娘が読み始めてます。

 スタ−ガ−ル    ジェリ−・スピネッリ    理論社 

*NY Timesベストセラ−リスト8週連続&映画化決定
*Publishers Weekly 全米書店員が選ぶ「2000年一番すきだった小説」と帯にあるけど、本当ですか、と言う感じ。

奇抜なファッション、奇抜な行動でみんなの注目を集める転校生<スタ−・ガ−ル>。
ランチタイムにはウクレレをかき鳴らし、誕生日の人がいればハッピ−バ―スディを唄う。
あるフットボ−ルの試合の応援をきっかけに、あれよあれよという間に人気者になったが・・・
あまりに個性的すぎる行動のせいか、人気は長くは続かなかった。

 ハイスク−ルの1年生で、こんな行動をする子はいないよな〜、という違和感がなんとなくずっとあって<スタ−・ガ−ル>には感情移入できなかった。そのせいか素直に物語に入っていけなくて、期待はずれに終わってしまった。
特に日本のように、「横並び」「人並み」が好きな風土では、スタ−・ガ−ルのような子はいそうもないし、もしいたとしたら、きっと敬遠してしまうだろうな、と心情的にはスタ−ガ−ルを苛めるほうに感情が言ってしまったようだ。

登場人物の中では、古生物学者のア−チ−が一番良かったな。

この本の装丁はとてもすきなんだけど。