◆シナイ顕現伝承 出エジプト記一九章シナイ顕現伝承は、 エジプト脱出の成功に続く「ヤハウェ共同体」誕生を告げる 象徴的な出来事の記述からなっている。 物語はこうである。エジプト脱出の日から数えて、ちょうど三カ月目の同じ日、 神はモーセにあらわれた。 ところは、シナイの山頂。イスラエルの民はふもとで宿営していた。そのとき何が起こったか。 ここでも、物語から史実性をひきだすことは、断念しなければならない。 そもそも、シナイの山も、その正しい位置も正確にはわからないのである。 物語は、ただひとつのことを語っている。 神ヤハウェとイスラエルとの「契約の締結」ということである。 神は、契約締結を求めて、モーセにあらわれた。 もしもイスラエルが、神にたいして絶対の服従を誓うなら、 神は、その所有する全地を、ことごとくイスラエルにあたえる。 神は、こう言われた。 まさにイスラエルはアブラハム以来の宿願である「土地取得」と引き替えに、 神への絶対服従を求められたことになる。 モーセは山を下りて、宿営地の民に、神の要求を告げる。 民は、異口同音に、こう答えたという。 「われわれは、主の言われたことをみな行ないます」と。 契約締結に必要な合意が、ととのえられたわけである。 それから三日目の朝、かみなりといなずまと、厚い雲とが山をつつみ、 ラッパの音が高々と響きわたるなかを、神は再びモーセに顕現した。 |
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