ところでまたニシン話しになるが、私達の子供の頃は身欠ニシンはマダ(シナの
木)の皮で結んだのが、束のまま戸棚の中に入っていたものだが、あれはたしか1貫目(4キ
ロ)だったような気がする。となれば、1束100本ぐらいはあったろうと思うから、
各沢100人として1人に2〜3本は当るから、冷酒2〜3杯飲むのには十分間に合ったろ
うと思う。 今では身欠ニシンは平ぺったい木の箱に500g入りとかで、いくらと売っているが、昔 のようにあまり固い軟かいの差がないような気がする。それでどうしても思い出せ ないでいるのは(大分前からだが)、私達が子供の頃はカラカラに干した固いのと、 半かわきの軟かいのがあった。下タ沢語どいえば、どっちも「ニガキニシ」だが、 この二ツを区別して呼んだような気がする。さて、どっちをなんといったか、誰か おぼえていませんか。 私達は生なものは「ナマニシ」で、干したのは「ニガキニシ」であったわけだが、 県南の肩ではニシンのことを「カド」というと聞いたことがあるが、我が家の女房 (横手)によれば、生のニシンは「カド」で、ニシンといえば身欠ニシンのことだ という。が、真偽のほどは分らない。また何十年か前の昔話しのようになるが、新 聞かにのった、年よりの思い出ばなしかなんかであったかもしれないが、秋田市の 方でニシンのことをカドというと。それは町の角のところに大きい魚屋があって、 春になってニシンの季節になると、みんなその角の魚屋にニシンを買いに行った (大きい問屋のような魚屋で、ニシンの一手販売をしていたのかもしれない)。そ れでその魚屋にニシンを買いに行くのを、カドに行く、といったという。カドに行 く、といえばニシンを買いに行くことだったと、それがいつの間にかニシンのこと をカドというようになったと。これも真偽のほどはわからないが、といっても、真 偽のほどがわからないのは私の頭の方だが、これも誰か秋田市の昔の物知りを尋ね てみて下さい。 また広辞苑にも何んでそういうのかは書いていないが、ニシンのことを「カド」 とも書いている。 |