私達の先祖の縁につながる元山の地も、大正14年の大火以来住む人もなく、七十
余年の歳月の流れに、木が生え土砂が崩れ、草芒々の地と化し、道も屋敷跡も定か
でなくなり、また昭和42年頃より数年かけて行われた県の治山事業により、数ケ所
の砂防ダムもできて、往時の面影をしのぶべきもなく、私の記憶の中には、元山に
家のあった当時のことは何んもなく、高等科に歩くようになってから、崩れた屋敷
跡をたどりながら、何度か通ったことはあったが、ここは元山といって昔栄えた所
だ、火事になる前は家がいっぱいあって、火事は下タ沢の方から燃えていった、と
かいう話しを聞きかじった程度で、少くともおじいさんの時代は、ここに住んでい
たろうとか、母の姉達の墓もここにあるなど思っても、ではなく、なんにも知らな
いですごしてしまった。
ということで、今、元山とはと聞かれても、何んにもわからないが、墓地移転の ときに寺岡さんが書いた本の中から一ツ二ツ拾い出してみる。 |