鹿友会誌(抄)
「第一冊」
 
△祝詞
 学生の成業を期するは、都会の地にありと雖も、其身を毀るも亦都会の地に多きを見る、 これ世の父兄が常に疑懼を懐きて、子弟教育の方向に迷ふ所なり、 今や先進の諸民茲に見る所あり、郷里の為めに此疑懼の念を去り、其迷を闡かんとの目的にて、 鹿友会なるを創設し、会誌を発刊し、会員と父兄に頒ち、又は学事の諮詢に応答し、父兄をして、 子弟に高等教育を為すの観念を啓発せしめんとす、 されば此会の起る子弟が、笈を負ふて百里の外に出るも、 其父兄は疑懼の念慮を去り、安んして業に就き、父兄本分の義務を尽すを得せしむ、 実に後進者を誘導する一大美挙と云ふべし、然れとも始に厚くして終に薄きは事の通弊なれば、 発起者諸氏振ふて本会の隆盛を期し、終始一の如く、後日好果を収得するの実を挙られんこと、 敢て本会に切望する所なり
   明治二十四年五月     石田英吉

[次へ進む]  [バック]  [前画面へ戻る]