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鹿友会誌（抄）第四十四冊 特別発刊「鹿角出身産業家列伝（第一輯）」 |
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△尾山直治氏 昭和四年日本鉱業退社後 「鉱山調査、鑑定、指導、顧問ノ依頼ニ応ズ」 ヲ三ケ年間専業此間多数鉱山ノ複活蘇生ヲ助長セリ就中其主ナルモノ二三列記ス 一二、慶尚南道高霊金山カ一旦廃山ニ帰シタリシヲ複活サスベク運鉱岩及ビ断層関係等 ニ就キ調査研究ノ結果完全ニ複活蘇生シ、尚ホ今後大ニ伸展スベキ事項ヲ発見爾後其事 項ニ基キ探鉱再始遂ニ奏効近年大ニ伸展隆盛ニ赴キツヽアリ 一三、咸鏡南道大同金山ハ野崎鉱業会社ガ大規模作業開始後余カ仝山ノ顧問トシテ実査 ノ結果全部探鉱ノ価値モ経営価値モ無キ脈ノミナリシ為メ断然坑内外共作業休止解散セ シメ新規巻キ直シ内地人一人鮮人二ヲ残シ地表探鉱ニ依リ新タニ探鉱ノ必要、又ハ作業 可能ノ鉱床発見ニ務メシメ幸ニ二大鉱脈ヲ発見其為メ仝山ガ蘇生シ重要金山トシテ発展 ヲ見ルニ至レリ 一四、江原道ニ於ケル小林鉱業ノ洪川金山ハ（のたぢ山）トシテ（自然金ノ籠リ出ル山） 数多技術者間ニハ一般ニ危険不安ニシテ事業ニナラズト云フ定評トナリ、其為メ十三年 間休山ノ儘ナリシヲ余カ調査ノ結果仝山ハ絶体ニ危モ不安モ無ク極メテ安全確実ナル鉱 脈デ有ルコトヲ発見説明シテ此ガ探鉱ヲ開始サセ遂ニ鮮内（一流ノ大金山月産百万円） トナレリ 仝山ノ大成ニ依リ今日ノ小林鉱業株式会社カ生レタモノナリ 一五、黄海道ノ栗浦金山ハ前鉱主時代隆盛ナリシモ東洋拓殖株式会社ニ移ル少シ前カラ 衰頽斜坑約八百米ニ産シ毎月四千円近ク欠損ヲ見ツヽモ作業持続シ居タリ余偶仝山ヲ調 査シ仝山ガ営利作業ノ深度ヲ超越シタルコト及ヒ地層ノ褶曲タル凹曲部ニ更ラニ新ラシ キ第二、第三ノ富鉱帶存在スベキヲ説キ老衰セル従来ノ採鉱跡ヲ棄テヽ新富鉱帶ヲ発見 スベク地表ヨリ 「ダイヤモンドボーリング」ヲ試ミルベシト乃チ 「栗浦金山複活計画案」 ナルモノヲ仝社ニ提示シ、仝社カ昭和十五年ヨリ此ヲ実施 シ「ボーリング」ハ平均金位百十余瓦厚サ一米ト云フ稀ナル良鉱ノ新富鉱帶ニ堀リ当テ 十六年春ヨリ売鉱一車価額一万五千円程度ノ出産ヲ見ルニ至レリ 十六、昭和四年日本鉱業会ノ渡邊奨学資金ニ依ル懸賞論文募集ニ余ガ 「朝鮮金鉱開発ニ対スル研究」 ナル論文ヲ提出当選賞金ヲ得タリ 朝鮮ノ金鉱ハ大正七年来一般技術者ヨリ左記誤解ヲ受ケ此ガ定評トナリ居タリ １、朝鮮ノ金鉱ハ底ニ続カヌ ２、朝鮮ノ金鉱ハ有望デ無イ 余ノ前記論文ハ此誤解ヲ一掃シ併セテ朝鮮金鉱ノ有望性ヲ説キシモノナリ 大正七年来鉱業界ノ不振ト誤解定評ノ為メニ当時各工業会社鉱業家カ続々朝鮮ヲ引キ 揚ケ久原鉱業モ引キ揚ケ命令ヲ受ケテ準備中余ハ本社専務ニ対シ左記意見ノ上申ヲ試ミ タリ 「久原ハ朝鮮ヲ引キ揚ケ永久ニ朝鮮ニ於テ鉱業経営ヲナサヌノデスカ、私ハ朝鮮ノ金 鉱ノ将来益々有望デ有リ日本ノ政府並ニ鉱業家ハ将来朝鮮カラ金ヲ堀リ出スコトヲ計画 スベキデ有ル故ニ各会社鉱業家カ引揚クル今日久原鉱業カ独リ朝鮮ニ止ッテ将来久原ノ 発展基礎ヲ築キ上クル事コソ策ノ得タルモノデ有リマセンカ云々」 専務曰ク其レ程君ハ自身有ルカト云ハレタノデ私ハ勿論有リマスト答ヘ 専務然ラバ引揚ケズニ君ノ意見通リヤッテ見給ヒト云ハレ為メニ朝鮮ニ止マレリ 朝鮮ノ金鉱ハ一般ニ悲観サル中ニ余ハ独リ新聞ニ雑誌ニ其他機会在ル毎ニ朝鮮金鉱ノ 有望ナルヲ叫ビ続ケタノデ有ル又六ケ年間朝鮮ノ砂金ニ就キ調査研究シ得タル自身ヲ朝 鮮鉱業会誌其他ニ発表セリ其要点ハ 朝鮮ノ砂金ハ頗ル有望デ有リ将来朝鮮ニ取リ大問題トナルモノデ有ル然ルニ今日之ヲ 探鉱シ又採取セント計画ヲ立ツル会社モ鉱業家モ無イ依ッテ総督府ガ「ヱンパイヤドリ ル」十台許リ放チテ全道ニ渉リ毎年継続的ニ砂金探鉱ヲ実行スベシ云々ト 斯ノ如ク余ガ金鉱及ヒ砂金ニ対シ其有望性ト開発ニ関シ唱導セシ事ガ昭和七年来漸ク 実現シ今日朝鮮ノ産金ガ山金砂金共ニ増大シ内地ノ産額ヲ遥カニ凌駕スル盛況ヲ見ルニ 至リ、其有望性ヲ叫ビ且ツ其指導ニ当リシ余トシテ心中愉快極リナク又東洋第一トナリ シ咸興金山ト青城子銀、鉛、亜鉛鉱山ト並ニ数多蘇生複活セル各山ノ経営ヲ顧ミル時更 ラニ無上ノ愉快ヲ感スルモノナリ 尚ホ須崎鉱山ノ交代鉱床及ヒ綱取鉱山ノ黒鉱々床新発見ノ如キハ偶然ノ発見ニ非ラス シテ科学的ニ想起考究ノ結果之ヲ発見セル事ガ技術者トシテ特ニ欣快トスル所ナリ |