鹿友会誌(抄)第四十四冊
特別発刊「鹿角出身産業家列伝(第一輯)」
 
△尾山直治氏(鉱山家)
 
尾山直治氏
秋田県鹿角郡小坂町金畑 鉱山経営者
尾山直治氏(尾去沢出身)
 
 君は尾去沢町赤澤の出身、幼児小坂にて育つ後尾去沢鉱山に就職し、其の格勤精神は 多くの儕輩を抜き、同僚の羨望する所となる、尾去沢鉱山の沈殿銅の創始も君の功績と 聞く、久原房之助氏、日立鉱山を経営し、鉱業界に旗揚けするや、三顧の礼を以て聘せ られ、士は己を知る者の為めに死すの意気を以て、順境なる尾去沢鉱山の課長を辞して、 久原氏の辱知に酬いたり、氏の尾去沢を辞するや当時の山長山田氏、君ばかりは辞職等 の事なきものと信じ居りたるに云々と、其の辞職を惜めりと聞く、以て君の人為を想見 するに足るべし、君久原に入るや、駸々として其の位置は進み、久原の朝鮮に於ける技 師長となり、貢献甚た顕著なるものあり、而かも君の性格の偉大は、人のイ使に甘んじ て、其の厚禄を営々貯蓄して、子孫の為めに美田を買ふを以て満足する人にあらず、阻 止を排して自立独立自尊の境涯に入り爾来今日に至り南船北馬爾来益々元気旺盛、鉱業を 以て天職として、自ら坑夫と寝食を共にして経営に精進せられつつあるの人、天は自ら 助くる人を助く、必すや栄冠は氏の頭上に輝くの日あるべきを思ふ、希くは神の恩寵氏 の上にあらんことを。
 
  附記
 氏の過去現在の活動は次の記事に依りて、会員の御承知を乞ふ、男子の面目は恵まれ たる境遇も棄て、勇敢に所思に突進するも其の一なり、氏の魂の此の会誌を通して、永 遠に滅びさるを祈るものなり、実に此の記念号発行の主旨も此にあるを悉知せられば幸 甚々なり、氏の過去より現在に至る産業経歴は、実に左の如きものである。

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