鹿友会誌(抄)第四十四冊
特別発刊「鹿角出身産業家列伝(第一輯)」
 
△藤井禎藏氏
 
藤井禎藏氏
藤井商店主 藤井禎藏氏(尾去沢出身)
 
 氏は未た春秋に富む、氏の現在は発展途上にあり、今日吾人の氏を伝ふるは成人とし てあらすして、暫く録して将来に果然大成功せるを称へしむるべきを予言するなり。
 
 藤井商会主 藤井禎藏氏(機械工業家)
 一、経歴
 氏は尾去沢町字田郡に生れ、其の家厳を賢太郎といふ、氏は其の長男として明治四十 四年一月を以て呱々の声を挙たるものなり、幼児より今日の独立経営の主人となるの風 格あり、大正十四年三月、尾去沢尋常高等小学校卒業志を立て上京し、東京高等工科学 校土木科に入学す、同校卒業後丸ノ内郵船ビル内の石井武治商会に入社し、土木事業に 従事すること約十ケ年、昭和十四年一月支那事変勃発し、生産拡充各種重工業の勃興を 国是とする、統制経済の施行せらるる真唯中に、雄々しくも独立開業し、営々奮戦力闘 以て銃後職域奉公を致して今日に至る、氏年齢尚ほ未た若く春秋に富む、氏の産業実績 を伝ふるは今後二三十年の後に譲るを可とするも、今日既に将来の刮目に値へするもの なり、今日は其の活躍の片鱗を記して、将来の大発展を凝視せんとするものである。
 
 二、氏の決意
 氏曰く大東亜建設戦に突入せる現段階より想察する時は、我等の前途も又重大多難な るを想はしむるものなり、依て益々奮励努力以て難局の打開に邁進し、仮令経営する事 業は微々たりとも、一意郷党の名誉の為めに奮闘せんことを期すと、何んぞ其の決意の 悲壮なる郷党の名誉の為めに闘はんと叫ぶ、少壮実業家としての氏の前途よ、希くは多 倖なれと祈る。
 
 三、創業以来の主なる得意先
一、陸軍造兵廠
一、陸軍第二火工廠
一、陸軍航空本部
一、海軍協会本部
一、陸軍相模工廠
一、東京都市逓信局
一、東京市役所
一、株式会社高田商会
一、葛研究所
一、株式会社松村組
一、東京中央郵便局
一、芝及京橋区役所
一、国際電気通信株式会社
一、国産工業合資会社
一、日本高周波重工業株式会社
一、東京中央電信局
一、中華航空株式会社
一、光重工業株式会社
一、国際信託株式会社
一、日清製粉株式会社
一、東京中央電話局
 
 四、氏ノ営業課目
 暖房、水道、衛生、鑿井、ポンプの設計工事請負業

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