鹿友会誌を紐とく
第三十二冊(昭和5.1)
 
△「吾人の創立せる理科医学校の前途 月居忠悌」
 秋田県人の同志相はかり、東京理科医学専修学校を創立した。百名募集、十五歳より 五十歳まで多様、物理療法を主とし、今は電気治療機具は備わっている。将来は水治療 法・温熱療法・温泉療法も考えて行きたい。世間は未だ物理療法の効果をあまり理解せず、 薬物万能の迷夢を持っている。一日でも早く醒める必要がある。治療に大別して三種あ る、薬物療法・物理療法・精神療法、則ち療法とは、一元のものではなく、多元のもので ある。
 
 ……吾人の学校を卒業すれば、独立開業、病医院の物療主任技師、その他全世界に職 がある。
 
△「鹿角村の建設 小田島信一郎」
 渋谷代官山のアパートを鹿角人によって占領しようという理想(同潤会の管理人をや っている)
 現在三百七戸、本年三十一と建て増し、全部完成するとちょっとした町ぐらいにはな る。二三十人や、四五十人の鹿角人が集まることは、むずかしい問題ではない様に思え る。同郷人を愛し得る人は、即ち世界人を愛し得る人だろう。
 我親愛なる会員諸君よ、帝都の一角に鹿角村……というと大げさですが……を建設し て、郷人安住の地とすることも又愉快なる仕事ではありませんか。
 
△「感じた事 名良不二也(奈良富士哉)」
 私が本会に対して常に感じている二、三を述べたい。この会は出席さえすれば、必ず や懐かしき郷土を追想し、皆様の心なる親しみを味わう事が出来る。各氏の有益なる御 訓話も拝聴することが出来る。諸幹事の真面目な働きが、社会、人類の為に大いなる貢 献をしているし、将来堅実なる青少年を輩出することだろう。自分だけの利益の為に、 この会を利用する者は良くない。お互いに利用し、利用される事が、お互いの利益であ り、向上するために良い事である。
 もう一つ、奨学金利用者の状態について、もっと頁をさいて欲しいし、醵金者の氏名 掲載は、仰々し過ぎる。つけ加えて、奨学金利用者は、これからも利用しようとする青 少年の為に、及ぶ限り己の義務を果たす必要を感ずる。
 
△郷土の動き
 国立公園の候補『十和田湖』
 奥羽アルプス『八幡平』
 湯瀬温泉のモダン化:花輪線建設工事に伴う盛況・料理屋も出来、温泉雰囲気が出てき た。
 花輪線の工事進捗:昭和六年十月迄の完成予定
 ……
 
△貸費生調
 今迄の奨学金貸費生(昭和四年十二月現在)
 計三十人、貸費総額一万七千四六九円五〇銭
 返済額四千六〇円五〇銭
 残額一万三千四〇九円
 卒業者(明治四十四年度より昭和三年度迄)二十一人
 在学九人
 
△会員名簿(昭和四年十二月)賛成員二十九名、
 正員、東京附近百十七名・地方百二十五名・郷里百十七名・不明者二十一名

[次へ進む]  [バック]  [前画面へ戻る]