鹿友会誌を紐とく 第十八冊(大正5.4) |
△「立憲政治と選挙 前香川県知事 川村竹治」 (この中で、この頃の選挙実態を憂いている) 棄権者がまだまだ少なくならない。金銭・情実選挙横行する。青年に立憲思想をもっ と教えねばならない。一国青年の政治思想の高低は、その国の進歩発展に影響する。 △「東北人、鹿角人 東京 川村五峰」 東北人に共通なる思想 第一、政治思想の発達 第二、哲学思想の発達 第三、宗教の欠乏 第四、数理的思想の欠乏 第五、団結心の薄弱 第六 努力心の希薄 第七、貯蓄心の欠乏 第八、排外思想の発達 第九、尊官民劣の観念 吾々東北人は、何うも社会的生活能力が、他府県人に比較して著しく劣弱ではないか。 鹿友会は、世間稀にみる呑気至極な団体である。呑気も結構であるが、東北人特有な 欠点により弊害を招く。二、三人の会の寄合ではない。二、三百人、それも各地各 社会に於いて相当の階級を得ている方々の集まりになっている。それだけしっかりした 会なのだ。大正三年に決めた決議(郷里の凶作困窮者に義捐金を送る)が、何等正当の 理由なくして葬られた等、遺憾な事である。また必ずしも女子を排斥するものではない が、不合理な手続きには賛同出来ない。 また新年総会に役員が改選されても殆ど一年、後任者に皆無の引き継ぎが出来なかった。 これらのことは、総て「何うでもよかろう」主義から出ていることである。 極力、短所の矯正に努めなければならない。 △「五の宮に登りて 花輪 川村直哉」 (湯瀬渓谷の景色等々を織りまぜ、深山大沢偉人を産す) 山を愛さない山国の人、自然界に近くいて自然界を知り得ない人は、人間として人間 の価値を知る事はむづかしいと思う。 五の宮は、登山容易な山であるが、素晴らしい山でる。 鹿角人を改造するには、五の宮を勧める。盛んに五の宮に登る様になったら、鹿角人 ももうちょっと偉大になるかもしれない。 高い所の世界は、井戸の中よりの天地より広い、深山大沢偉人を鹿角の人物は、五の宮 に登った人の間に出来る。 △「切りたんぽ会を催し申候 足尾銅山 奈良正造」 先般、阿仁・不老倉において在勤した人々で「キリタンポ会」を催し、会員十五六名も 有之。毎回二三人の人が東北の気分を味わうと言うて、縁のない人迄も飛び入りを致し 候。今月で三回を重ね申候。調理は男同士で妻君連中を手伝はせるなど、なかなか振っ たものに御座候。中には九州の人も岡山の人も有之。古河家の親族の人も混って、冬は ドブロクに「切りタンポ」に限るなんて大喜びに御座候。別に会費もなく、凡て寄付で、 鶏や酒はてんでに持ち込むものに御座候。来月は濁酒を造って飲むという弥次も御座候。 △百九十七例会 提案 一、評議員を設くるの件 二、会則改正の件 三、奨学資金に関する仮規定制定の件 これより、評議員を設けることになる。 △大正五年会員名簿 賛成員三十一名、 在京会員六十名(学生十八名)・郷里会員八十五名・地方会員六十八名 |