渡部家「史料館」
 
△渡部家の造りの特徴
 渡部家は単に「古い」「大きい」だけではなく、いくつかの、他にはあまり見られない 特徴がある。ここに、そのいくつかを挙げてみよう。
 
@土台石
 普通この時代は、整地して土突(どつき)を行い、栗石(くりいし)といわれる小石を敷き、 その上に土台石となる玉石(たまいし)を置く。玉石は自然石で、加工はされていない。
 渡部家では、玉石の代わりに方形に切り出した切石(きりいし)を敷き詰めている。玉石を 用いる場合より、数倍の費用と時間がかかる。渡部家の場合、表面に出ている部分の2倍から3倍 が地中に埋められている切石を用いているが、これは床組(ゆかぐみ)が「神社造り」だからである。
 
A神社造り
 床組では普通の家は「束(つか)立て床」といって、床の下は碁盤の目のように束と呼ばれる 柱が入り、床を支えているが、渡部家の場合は「神社造り」といって、部屋の真ん中附近を 「大引(おおびき)」という太い材木を部屋の端から端へ渡しこみ、これに根太(ねだ)と呼ばれる 材木を渡しこんでいる。すなわち各部屋の床下には、束はほとんど無く、床全体が浮いている。
 24.5畳の奥座敷も、部屋全体が浮いていることになる。このような家は、材木が全て太く、 土台石・土台材木等も束を用いる場合に比べて、何倍も大掛かりにしなければならない。それだけ 建設費も膨大なものになる。
 
B材木
 材木はほとんど地元の山から切り出したものを使ったようである。したがって欅(けやき)や檜(ひのき) などはなく、槐(えんじゅ)、槻(つき)、桂、栗、杉、桐、松などが使われている。特に槐は 普通床柱(とこばしら)に用いられる高価な材木だが、ここでは座敷の柱はほとんどが槐で、他にも随所に 使われている。また、座敷、小座敷の天井は桐である。
 
C木挽(こびき)
 普通この時代では小屋組みの梁(はり)は、丸太のまま用いられたが、渡部家の用材は丸太のまま 用いることは、ほとんどしていない。木挽きといわれる職人に、丸太から角材を作らせ、したがって梁も 小屋束も角材である。丸太と同様の強さの角材を作るということは、よほど大きな丸太を用いねばならない。 見えないところに、大きなお金が掛かっているのである。
 
D釘
 古民家や古建築では、現在の民家に比べて鉄の釘はあまり使われていない。これは、釘が「鍛冶屋釘 (かじやくぎ)」といって、鍛冶屋が一本一本鎚で鍛えて作ったり、大工が自分で硬い材木で「木釘」 や「竹釘」を作ったりした。したがって釘は、非常に高価なものだったからである。
 渡部家も釘は非常に少ないのであるが、その代わり材木の組み方に工夫を凝らした接合方法が 見どころである。
 
E屋根構造
 寄棟造りの函屋根で、特に合掌造りの屋根構造のほとんどが角材である。「扠首(さす、垂木)、母屋 (もや)など全てが角材」という古民家は、他に見る事は少ない。
 
F門
 門には釘は一本も使われていなかったが、6年前の大雪で屋根がひっくり返るように落ち、修理したときに 補強された。冠木(かぶき)上の欄間(らんま)には、江戸時代の神社札がびっしりと詰まっているのも、 見どころである。

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