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「鹿角」 |
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△十 鹿角町村巡り <小坂町> 小坂町は郡の西北隅に位置を占め、東洋一として普く天下に知られた藤田鉱業株式会社 事業所たる小坂鉱山の所在地である。 毛馬内駅を去ること北に二里半、七瀧村経由十和田山道の分岐点であって、約五里にして 湖畔に達する。 秋田顕勝会は、山道旅行者の為めに案内の標木を建てゝ万一の危険に備へて居る。 鉱業界は如何に不振と云っても、小坂は鹿角の都会である、汽車が走り、電車が走り、 自動車が走る。 朝市が立って、常に往来は繁く、高瀬、湯瀬、小間物・洋品・雑貨店、高橋書店、仲谷 呉服家具店、其他鹿角、北秋田、山本三郡に於ける蔬菜栽培を供給需要、両者の方面より 進歩改良を促すべき理想を以って、毛馬内町立山弟四郎氏主唱の下に、経営せられつゝある 三郡農産協会の売店、福田薬店、豊口支店等軒を並べて立ち、小坂ホテル、阿部、松本、 横山等の旅舘があり、活動写真常設舘なる花園舘は、主として鉱山労働者の娯楽機関である。 康楽舘は、鉱山の劇場を兼ねたる公会堂とも云ふべき宏大なる建築物であって、 吉本倶楽部は、室内の美と待遇の厚きを以って知られ、小坂病院は、鉱山の経営なるにより、 設備の整頓せるを持って聞えて居る。 物質文明に何等の不足を感じない人々を尚一歩、精神的に救ひ、導かんとしてか、天主教会、 ホーリネス教会が夫れ夫れに活動して居ることも、或意味に於て自然破壊の為めに働いて居る 人々にとっては、必要なことでなければなるまい。 町立実科女学校は、小坂小学校構内に独立し、郡内唯一の女子教育機関である、卒業生を 出すこと数百人、設備愈々完備し、他に比しても敢て遜色を見ないことゝ信ずる、女学校に 附属して町立小坂文庫も設け、一般の閲覧に供している。 |