1905 戸窓をふさがない話
参考:八幡平公民館発行「村のむかしっこ」
昔ある村に非常にケチな一人暮らしの男が居りました。
よく仕事は働き、実に辛抱強い男でしたから、方々から嫁を世話する話をもちかけら
れて、嫁を貰いましたが、嫁に食わせるのが嫌いで、何人貰っても十日も居れないで出
て行って、それっきり戻って来ないのです。今度は、自分で嫁探しをし、
「飯を少し食べ、ウンと働く嫁をほしい」
と、毎日のように村々をかけまわり、次から次へと探し歩いていたのです。
ところがある処に、非常に美人で、その女は飯は少ししか食べないし、仕事は何でも
働くと言うので、これはよい女が見つかったと思って、直ぐ嫁に貰いました。家に連れ
てきたら、愛嬌はよく、飯は少ししか食べないし、これはよい嫁にありついたと大喜び
で、気持ちよく毎日、山へ柴刈りに朝早くから晩遅くまで働いて帰りました。
ある時、何気なく蔵の中を見たら、嫁を貰ったときより、大分米俵が減っていること
に気がつき、嫁が何かやっているのではないかと思い、山に行くふりをして、梁に上っ
て隠れて様子を見ておりました。
嫁は、それとは知らず、家の後始末をしてから、全部の戸締りをして、庭の釜に火を
たき、蔵から米一俵をかついできて、その釜で一俵の米を炊き、その飯でオニギリを山
盛り作り、頭の髪をといたら人をまる呑みにするような、頭の中の口は大きかった。そ
のオニギリを頭の中へほうり投げて、見る間に一俵のオニギリを食べてしまいました。
その時の嫁の顔は、見るも恐ろしい鬼の顔でした。男は梁でアッと言わんばかりに驚
き、息を殺して、身震いしながら隠れて見ていたのです。食べ終わった嫁は、髪を結い
直し、知らん顔して夕食の支度をしていたので、男はそスキを見てコッソリ降りて、山
から帰ってきたふりをして、
「今、来た」
と言ったら、愛想よくしてくれるのだが、今日のことを思い出せば、身震いがする様だ
と思いながら、夕食を食べたら、この嫁を出してやらなけれじならないと思いました。
そして、嫁に、「オレは、どうしても一人暮らしの方が気楽でよい。だからお前の好き
なものを何でもやるから、なんとか今夜限りで出て行ってくれ」
と言ったら、嫁の言うことには、
「蔵の中にある一番大きいコガ(桶)を貰いたい」
と言うので、
「それは安いことだ」
と言って、そのコガを蔵から出し、縄をかけて嫁が背負いかけて、
「重いから起こしてくれ」
と言うので、男が近づいたら、手早くその男をコガの中に入れて、一目散に山に向かっ
て走って行きました。
その男は、あまりケチンボウで、五月の節句に戸窓をふさがないので、家の中に鬼が
入ってさらわれて行ったとさ。
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