5516降り橋オリバシ
 
                    参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」
 
 昔、南部藩と秋田藩とが争っていた頃です。
 十二所ジュウニショ(大館市)の侍達が、南部との境を見張るために馬に乗って、威張りな
がら沢尻サワジリの方へ向かって来ました。
 三哲山サンテツサンの麓フモトに来たら、侍達が乗った馬は、どうしても前に進まないで、尻ケツ
を上げて跳ね回って、どうにも出来ませんでした。
 侍達は仕方なく馬から降りて、手綱をがっちり引いて、漸くその場を通りました。
 その次の日も、その場所まで来たら、馬が尻上げて跳ね回って、どうにもなりません
でした。それで、十二所の侍達はそれから毎日、その場所を通る時は馬から降りて、手
綱を引いて歩くようになりました。
 
 その後暫くあってから、葛原クズハラの村から人が来て、其処らの朝草を刈っていたら、
其処に左多六さまに仕えた老犬シロが死んでいたのでした。
 村の人達は、
「このままにして置けば罰があたる」
と言って、シロの骨をみんな拾って、葛原へ持って来て、神様に祀りました。その時か
ら、侍達が馬から降りて、馬を引いて歩いた処を「降り橋」と云うようになりました。

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