5512犬の毛皮 参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」 昔、葛原クズハラへ行くには、米代川を川舟で渡ったものです。 ある年、寒くなってから、犬の毛皮を着た立派な博労バクロウ(馬を売買する人)が、そ の川舟に乗ろうとしました。 そうしたら、何十年も川の渡し守りをしていた年寄った爺さまが、大きな声を出して、 みんなに聞こえるように、 「犬の毛皮を着たような奴は人ではない。葛原の村には渡らないでくれ」と言って、舟 に乗せないで、さっさと舟を出してしまいました。 立派な博労は大変怒って、悪口を吐ツいていたが、舟に行かれてしまって、葛原に渡れ ないで、すごすごと帰りました。 葛原の人達は、老犬さまを拝んでいるために、この渡し守りの爺さまが言ったように、 犬の毛皮を着たものは、絶対に村に入れなかったのでした。