5506四角シカクの荒神コウジン
 
                    参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」
 
 あるとき、左多六さまは四角へ狩りに行きました。
 四角岳シカクダケには一人の荒神さまが居て、左多六さまの家来でした。四角とか、中岳
チュウダケなどで狩りをして、羚羊カモシカの皮をいっぱい捕った左多六さまは、四角の荒神に、
「お前、この羚羊の皮を背負って、家へ行って来い」
と言って、下草木へ使って寄こしました。
 四角の荒神は、重い羚羊の皮をいっぱい背負わされて、
「馬鹿臭いな、馬鹿臭いな」
と言いながら、下草木まで背負って来ました。左多六さまのお方(妻)は、
「ではまず、飯ママを食って行け」
と言って、飯を食わせました。
 
 その時、飯を食っている四角の荒神の顔を見ていた左多六さまの童ワラシが、
「山の猿の顔みたいだ」
と言って大声で笑いました。そうしたら、短気で怒りやすい四角の荒神は、怒ってしま
い、
「この畜生チクショウ、こらーっ」
と言って、左多六さまの童の指を、ガリッと噛カジってしまいました。そして知らない振
りをして、四角の山へ帰って、左多六さまの処に着いたら、
「お前、家に行って悪戯イタズラして来たな。この畜生、生かして置かない」
と言って、左多六さまに大変叱られました。四角の荒神は、
「何とかして、命だけは助けて下さい」
と頼みました。それから、寒中カンチュウの雪の中に七日七夜座らせて、朝夕に水垢離ミズゴリ
を執って、ようやく許して貰うことが出来ました。

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