36e 短歌文法「副詞」
 
ほと-ほと(幾と・殆と)@もう少しの所で。すんでに。例「・・殆とにして思ひ至らむ」
 A殆ど。例「灯ホあかりのほとほととゞかぬくらがりに・・」
 Bすっかり。本当に。例「ほとほとに身の貧しさにありわびて・・」
 
ほの-ぼの(仄仄) 仄かなさま。ほんのり。微かに。些か。例「(胡頽子グミの葉)ほ
 のぼの白し星の明かりに」「ほのぼのと眼を細くして抱イダかれし・・く」「ほのぼのと
 愛もつ時に驚きて・・」「ほのぼのと山桜戸のありあけに・・」
 
まこと(真・実・誠) 本当に。正に。非常に。例「まことわれ永くぞ生きむあめつち
 の・・」「さやさやとまことゆりの木のさやさやと・・」「まこと今日みうちのみゐて飯
 を食む・・」「まことにも孤独ヒトリといへるかなしみに・・」
 
まざ-まざ はっきりと生生しく思い浮かべたり見えたりするさま。口語で,ありあり。
 例「まざまざと人の腹の底見え透きて・・」「まざまざと虚空をさぐる思ひあり・・」
 
また(亦・復・又)@再び。もう一度。更に。例「(チューリップ)花ひらきつつまた
 夕べ閉づ」「・・さびしくもまた眼をあけるかな」「・・木の下の土に又も来めやも」
 A同じく。矢張り。例「・・時の来ぬればまた然シカ思ふ」「・・朝の通勤者のひとりまた
 ひとり」
 
まだき(未だき)@未だその時期の来ないうちに。早い時。例「あたたかき定サダマりぬ
 れば春まだき・・」
 A早くも。もう。早早と。例「朝まだき車ながらにぬれて行く(菜)」「朝まだきい
 で湯に並ぶ老たちの・・」
 
まに-まに(随に) ・・の思うとおりに。・・に任せて。「まにま」とも。例「・・すすき穂
 のゆれはかそけきぬれのまにまに」「こひのめば天のまにまと言コトに云へど・・」「日
 和風吹きのまにまに照り光る・・」「(斑雪ハダレ)吾のいのちのまにまにもみむ」
 
みな-がら(皆がら) 残らず。全部。全て。みんな。例「一村の家はみながら川に沿ひ
 て・・」「皆がらに風に揺られてあはれなり・・」「・・市の灯はみながら涼し枇杷うづた
 かし」
 
もとな 何の訳もなく。なんとなく。やたらに。妄ミダりに。例「現身ウツシミはもとなわび
 しくも春寒く・・」「・・栗の実をむきつつもとな国おもひ湧く」「応天門をくぐり出で
 来てあなもとな・・」
 
もはや(最早) もう。もう既に。今となっては。例「・・わが心もはや空しき遊びには
 あらず」「・・今夜コヨヒは最早幾時ならむ」
 
やう-やう(漸う) 「やうやく」の音便。@段々。次第に。例「桜草たたまりし葉のや
 うやうにほぐれて蕾・・」「天地アメツチに享ウけしわが性やうやうに露アラはになり来ク・・」
 A辛うじて。やっと。例「やうやうにわれの心がさだまれば・・」「やうやうにわがも
 のとなる夕ぐれの・・」
 
や-や(稍・漸)@物事が少しずつ進むことを表す。口語で,段々。次第に,の意。例「
 ・・栄えし庭の草花もややにうつろふ昨日けふかも」「夕やみのやゝに明るみ大ぞらに
 月のかかればやゝに思ひ凪ぐ」
 A物事の程度を表す。口語で,少しばかり。幾らか,の意。例「やや重き空気とおも
 ふ径ミチに出て・・」「やや暗き電灯のもと腕くみて(見る)」
 
やや-やや-に(稍稍に) 漸く。段々と。少しずつ。例「・・ややややにわが心たかぶる
 」「底ふかく立ちゐし角砂糖ややややに・・」
 
ゆく-ゆく @すらすら。どんどん。
 Aおいおいに。次第に。例「疲れやすき身となりにけりゆくゆくに・・」
 
ゆく-ゆく(行く行く)@歩きながら。例「・・堀江長くしてゆくゆくも見る白き藻の花」
 A行く末。やがて。
 
ゆた-ゆた(揺揺) 物が揺れ動くさま。口語で,ゆらゆら。ゆさゆさ,の意。例「ゆた
 ゆたとうごく水面に浮く・・」「・・遠つ沢田のゆたゆたと展ノぶ」
 
ゆめ(努) 下に禁止の語を伴って,強く禁止する気持ちを表す。口語で,決して。必
 ず,の意。例「・・けふ居るものとゆめなおもひそ」「かの宵の露台ロダイのことはゆめ
 人に言ひたまふな・・」
 
よし(縦し)@不満のままで諦めることを表す。口語で,仕方がない。かまいはしない。
 ままよ,の意。例「(まちやせて)死なむもよしやもゆるくなくこのまま凍るもよし
 や」
 A口語で,仮に。仮令タトイ。万一。百歩譲って,の意。「よしや」「よしゑ」とも。例
 「・・意気をわれ立てるよしや野の花風に散るとも」「(我が子等)よしおのがじし離
 れ住むとも」「人は縦しいかにいふとも世間ヨノナカは・・」
 
よに-も(世にも) とりわけ。またとない程。本当に。特に。「よに」とも。例「よに
 も弱き吾なれば忍ばざるべからず・・」「・・世にも悲しきこと言ひたもふ」
 
よ-も 下に打消の語を伴って,口語で,まさか。よもや。決して,の意。例「不可思議
 のよもあらじとて入りも来し・・」
 
よ-も-すがら(夜もすがら) 日暮から夜明まで。夜通し。一晩中。「よすがら(終夜
 )」とも。例「・・夜もすがら鳴く梟ならん」「夜もすがらばうばうとして鳴りやまぬ
 (冬潮騒)」「熱落ちてわれは日ねもす夜もすがら・・」
 
ろく-ろく(碌碌) 十分に。満足に。よく。碌に。例「・・ストーブをろくろくつけず寒
 き冬なり」
 
わき-て(別きて) 特に。とりわけ。別して。殊更に。「わけて」とも。例「わきて身
 に老い衰へを思はせて・・」「(天の原・・)時雨はわきてにほふなりけり」「星ひとつ
 わけて涼しき宿駅路ウマヤヂの・・」
 
わら-わら-と 散り乱れるさま。口語で,ばらばら,の意。例「・・阿羅漢アラカンのわらわ
 らと起ちあがる夜無きや」「(蝶)わらわらと潅木カンボクの蔭にひそまる」
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