19c 歌合・歌会に関わる和歌
△詩歌合
右 山家春
春きてぞ人もとひける山ざとは 花こそ宿のあるじなりけれ(四条大納言)
(長承三年相撲立詩歌合)
右 水郷春望
橋姫の朝けの袖やまがふらん 霞もしろき宇治の河波(家隆)
右
みわたせば山本かすむ水無瀬河 夕は秋となに思ひけむ(後鳥羽院御製)
(元久詩歌合)
梅
咲なばとまたれし梅の花の香に こぬ人たのむ春の山里(前藤亜相)
(現存卅六人詩歌)
右 山家春興
嶺の花麓の柳おしこめて たゞわがやどのものにぞありける(女房)
(五十四番詩歌合)
右 野外秋望
むこが崎まづみえそめて霧はるゝ いなのゝをざゝあき風ぞふく(近衛局)
(文安詩歌合)
△諸社歌合
ふりにける松物いはゞとひてまし むかしもかくや住の江の月(藤原実定)
(古今著聞集 五和歌)
△物語歌合
左
みるほどにしばしなぐさむめぐりあはん 月の都は遥なれ共(六条院)
右
天の原くものかよひぢとぢてけり 月の都の人もとひこず(寝覚上)(拾遺百番歌合)
左 恋
みても又あふよ稀なる夢の中に やがてまぎるゝ我身とも哉(六条院)
右
めぐりあはむ限りだになき別れかな 空行月の果をしらねば(御製)(百番歌合)
△年中行事歌合
左 四方拝
すべらぎの星をとなふる雲の上に 光のどけき春は来にけり(女房)
右 供屠蘇白散
春毎にけふなめそむる薬子は わかえつゝみん君がためとか(新中納言)
(年中行事歌合)
△物合歌合
左 あやめ
ながきねぞはるかに見ゆるあやめ草 ひくべきすゑをちとせとおもへば(左少将忠教)
右
たつのゐるいはかきぬまぞあやめ草 ちよまでひかんきみがたのしみ(斎院女房)
左
あやめ草ひくてもたゆくながきねの いかであさかのぬまにおひけむ
(二位宰相中将経貞)
右
きみがよのながきためしにひけとてや よどのあやめのねざしそめけむ(実持)
(中右記)
こいわびてながむるそらのうき雲や 我下もえの烟成らん(周防内侍)
(続世継 七根合)
山城皆瀬菊
うちつけに皆瀬はにほひまされるは をる人からか花のかげかも
嵯峨大沢池菊
一もとゝ思ひし菊をおほさはの いけのそこにもたれかうゑけむ(寛平菊合)
きくの花こきもうすきも今までに 霜のおかずばいろを見ましや(躬恒集)
左
長きよのためしにうゝるやへの花 ゆくすゑとほく君のみぞみむ(伊勢大輔)
右
むらさきのにほひことなるやへの花 はつしもよりやわきておくらん(伊予中納言)
(上東門院菊合和歌)
なでしこ
山賎の垣ほをせばみおひそめし 色とはみゆやなでしこの花(元真)
(夫木和歌抄 九夏)
なでしこのけふは心を通はして いかにかすらんひこぼしの空
時のまにかすとおもへど七夕に かつをしまるゝなでしこの花(中略)
万づよにみるともあかむ色なれや 我がまがきなるなでしこの花(かねもり)
とこなつの花もみぎはに咲ぬれば あきまで色は深くみえけり(よしのぶ)(下略)
(東三条院瞿麦合)
左
かちわたりけふぞしつべき天の川 つねよりことにみぎはおとれば
右
天の川みぎはうたなくまさるかな いかにしつらんかさゝぎのはし
(古今著聞州 五和歌)
吹風をいとひてのみもすぐすかな 花みぬ年の春しなければ
又
九重にうつさゞりせば山ざくら ひとりやこけのうへにちらまし(散木葉謌集 一春)
天の川かはべすゞしきたなばたに あふぎの風を猶やかさまし
あまの川あふぎの風にきりはれて 空すみわたるかさゝぎのはし(撰集抄 八)
みわたせばなみのしがらみかけてけり 卯の花さける玉川の里
(古今著聞集 十一画図)
思ひあまりいかでもらさむおく山の いはかきこむる谷の下水(大納言公実)
返し
いかなれば音にのみきく山河の あさきにしもは心よすらん(周防内侍)
(堀河院艶書合)
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