14b 和歌のいろいろ
 
△沓冠折句クツカフリヲリク歌
(あはせたきものすこし)
あアふさかもモ はハてはゆきゝのノ せセきもゐずス たタづねてとひこコ きキなばかへさ
じシ(奥義抄 上ノ上 光孝天皇御製)
 
あふさかも はてはゆきゝの せきもゐず たづねてとひこ きなばかへさじ
                            (栄花物語 一月の宴)
 
(いひしひをたがふなよ)
いイかにまたタ ひヒとりあかすかガ しシのぶてふフ ひヒとはつらしなナ おヲもひこりね
よヨ
御かへし
(あすのひをたがへめや)
あアかでたゞタ すスぐるわかなかガ のノべておもへヘ ひヒるこそあらめメ おヲもひこり
めやヤ(藤原隆信朝臣集 上)
 
(きみをひさしくまもれ)
きキにけらしシ みミてしもみまくク おオもふやまマ ひヒじりのあともモ さサこそすみけ
れレ(拾玉集 四)
 
(おもふともよもしらじ)
折ふしよ もずなく秋も 冬枯し とをきはし原 紅葉だになし(徹書記物語 下)
 
(あはせたきものすこし)
あふさかも はては往来の せきもゐず たづねてとひこ きなばかへさじ
(をみなへし・はなずゝき)
をのゝはぎ 見し秋ににず なりぞます へしだにあやな しるしけしきは
(花をたづねて見ばや)
はかなしな 小野のをやまだ つくりかね てをだにもきみ はてはふれずや
                             (八雲御抄 一正義)
 
(よねたまへ銭も欲し)
よもかゝし ねざめのかりほ たまくらも ま袖も秋に へだてなきかぜ
返し
よねはなし ねたくわがせこ はては来ず なほざりにだに しばしとひませ
                             (浜真砂 四 兼好)
 
(などや久しくとはぬ)
なをちれと やまかぜかよひ さそふらし くもはのこれど はなぞとまらぬ
                    (新拾遺和歌集 二十雑 よみ人しらず)
 
(初と終は同じ)
ら らちの内にくらぶる駒のかちまけは のれるおのこのふちのうちから
り りんどふの花をたむくるぎぼうしの 経よむ声はたうとかりけり
る るりの色にさける槿ムクゲ 露をきて はかなき程ぞ思ひしらるゝ
れ れいの又空だのめする人ゆへに 心つくしてまたれこそすれ
ろ ろかいたて湊もしらぬ夕闇に 船こぎ出す夜半の月じろ       (悦目抄)
 
(はを初め、るを終、眺めに掛ける)
はなのなかめにあくやとてわけゆけば 心ぞともにちりぬべらなる
                       (古今和歌集 十物名 僧正聖宝)
 
(前同)
はつねの日つめるわかなかめづらしと 野べの小松にならべてぞ見る
                           (新勅撰和歌集 二十雑)
 
(初と終は同じ、「あめつちほしそら」の順)
春
あらさじと打かへすらしを山田の 苗代水にぬれてつくるあ
めもはるに雪まも青くなりにけり 今こそのべのわかなつみてめ
つくば山さける桜の匂ひをば いりてをらねどよそながらみつ
ちくさにもほころぶ花の錦哉 いづら青柳ぬひしいとすぢ
ほのぼのと明石の浜を見渡せば 春の波わけいづる舟のほ
しづくさへ梅の花笠しるきかな 雨にぬれじときてやかくれし
そらさむみむすびし氷打とけて 今やゆくらん春のたのみぞ
らにもかれ菊も枯にし冬ののゝ もえにける哉を山田のはら(下略)(源順集)
 
(「いろは」を冠に置く)
いまはとて仏の道をもとめねば たまたま人になるかひもなし
ろもかいも我らはとらで法の道 たゞふなぬしをたのみてぞゆく(中略)
                               (作歌故実 二)
 
(「南無かすが」を冠に置く)
秋天象
ながめつゝ更ればいとゞすみ増る 心や月の光なるらん
秋天象
むら雲のゆきゝをはやみしぐれきて 野分に成ぬ秋のくれがた
秋地儀
かぎりなくあふぐ心の色と見よ みかさの山の秋の千しほを
秋地儀
すぎがてに詠てけりな春日野の おどろの露の秋の盛を(中略)
                         (同 姉小路権中納言基綱卿)
 
(「春日」を冠に置く)
春日山神は四所五度ぞ けふの祭に我はつかへし
春日山神はしるらしおそくさす 藤の□枝の春をまつとは(同 宣胤卿)
(「春日大明神」を冠に置く)
春日山 日ごとにいのる 大麻を 明に見よ 神し守らば(同)
 
(「南無阿弥陀仏」を冠に置く)
なごりなく露の命のかけどころ わかるゝはては南無阿弥陀仏
むべもこそ思ひ入せばともかくも かなはぬはての南無阿弥陀仏(下略)(宗長手記)
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