1402b 和歌のいろいろ(つづき)
△俳諧歌(滑稽のこと)
勝間田カツマダの池は我れ知る蓮ハチス無し しか言う君か鬚無きが如し
(萬葉集 十六有由縁雑歌 新田部親王)
梅の花見にこそきつれ鴬の ひとくひとくといとひしもをる
(古今和歌集 十九俳諧 よみ人しらず)
やまぶきの花色衣ぬしやたれ とへどこたへず口なしにして (同 素性法師)
笛のねの春おもしろく聞ゆるは 花ちりたりとふけばなりけり
(後拾遺和歌集 二十俳諧 読人不知)
みかのよのもちひはくはじわづらはし きけばよどのにはゝこつむなり
(同 藤原実方朝臣)
はかなくもおもひけるかなちもなくて はかせのいへのめのとせんとは
(同 大江匡衛朝臣)
返し
さもあらばあれやまと心しかしこくば ほそぢにつけてあえすばかりぞ
(同 赤染衛門)
玉だれのみすのうちより出しかば 空たき物と誰もしりにき
(新拾遺和歌集 十九雑 清輔朝臣)
むかしよりあみだほとけのちかひにて にゆるものをばすくふとぞしる
(宇治拾遺物語 三 藤六トウロク(藤原輔相))
衣にてなづれどつきぬ石の上に 万代をへよたきのしら糸
(続古事談 五諸道 林賢法師)
しれ物のよしなし事をする法師 つひに人やにゐるとこそきけ (同 二条ノ帥長実)
まことにや君がつかやをこぼつなる よにはまされるこゝめ有けり
(続世継 五飾大刀 済円僧都)
返し
やぶられてたちしのぶべき方ぞなき 君をぞ頼むかくれみのかせ (同 忠胤僧都)
なら坂のさかしき道をいかにして こしをれどものこえてきつらん
(古今著聞集 十六興言利口)
△譬喩歌
なにはづにさくやこのはな冬ごもり 今ははるべとさくやこの花
君にけさあしたの霜のおきていなば 恋しきごとにきゝやわたらん
我恋はよむともつきじありそ海の 浜のまさごはよみつくすとも (古今和歌集 序)
さゐがはよ くもたちわたり うねびやま このはさやぎぬ かぜふかむとす
うねびやま ひるはくもとゐ ゆふされば かぜふかむとぞ このはさやげる
(日本書紀 三神武)
△謎歌
ねずみのいへ よねつきふる ひきをきりて ひききりいだす よつといふかそれ
(歌経標式)
玉匣二とせあはぬ君がみを あけながらやはあらんと思ひし(大和物語 上)
ふたつもじ牛の角もじすぐなもじ ゆがみもじとぞ君はおぼゆる(徒然草 上)
秋風のはらへば露の跡もなし 萩の上葉も乱てぞ散る(翁草 三十九)
をりあらば申させ給へふたつもじ うしの角文字奉るなり
御かへし
いをのなのそれにはあらでふたつもじ 牛の角もじひまあらばちと(おほうみのはし)
△無心所著ムシンショヂャク歌
我恋は障子の引手嶺の松 火打ぶくろにうぐひすの声(徹書記物語 下)
吾妹児が額ヒタヒに生オふる双六スグロクの ことひの牛の倉上クラノウヘの瘡カサ
吾兄子ワガセコがたぶさぎにするつぶれ石の 吉野の山に氷魚ヒヲぞさがれる
(萬葉集 十六有由縁雑歌)
△雑歌
かすがやまみねこぐふねのやくしてら 淡海アハヂの島のからすきのへら
はたほこにそひてのぼれるなはなはのごと そひてのぼれるはたほこ
あみしほひたり ももなひつ ひとはいへども たむかひもせず
あかつきは とりもなくなり てらでらの かねもとよみぬ あけはてぬこのよ
このなしを うへておほさば かしこけむ
みましする をかにかけする このなしを うへておほして かけによけむも
白なみの 浜松の木の たむけ草 幾世までにか年は経ぬらん
みよしのを よしとよくみて よしといひし よしのよくみよ よきとよくみよ
あづさゆみ ひきつのへなる なのりそも はなはさくまで いもにあはぬかも
あきやまの もみぢばそむる しらつゆの いちじるきまで いもにあはぬかも
あをによし ならやまかひよ しろたへに このたなびくは はるがすみかも
かぜふけば くものきぬがさ たつたやま いとにほはせる あさがほのはな
塩満てば入りぬる磯の草なれや みらく少なく恋ふらくのおほき
あきはぎはさきてちるらしかすがのに なくなるしかのこゑをかなしみ
みなそこへしつくしらたまなかゆへに こゝろつくしてわがおもはなくに(歌経標式)
世のうきめ見えぬ山ぢへいらむには おもふ人こそほだしなりけれ
ねづみのいへよねつきふるひ木をきりて ひきゝりいだすよつといふやこれ
(八雲御抄 一正義)
ミあとつくる いしのひびきは あめにいたり つちさへゆすれ ちゝはゝがために
みそぢあまり ふたつのかたち やそくさと そたれるひとの ふみしあとゝころ
(古京遺文)
ほのぼのとあかしの浦の朝霧に しまがくれ行く舟をしぞ思ふ(消閑雑記 上)
こひわたる人にみせばや松の葉も したもみぢするあまのはしだて
有明の月だにあれやほとゝぎす たゞひとこゑのゆくかたもみむ
春のくるゝみちにきむかへほとゝぎす かたらふ声にたちやとまると(袋草紙 一)
うらみわびまだし今はの身なれども おもひ馴にし夕ぐれの空(徹書記物語 上)
わが屋戸の 梅咲きたりと 告ぐやれば こちふに似たり 散りぬともよし
(北辺随筆 初篇二 万葉集巻六)
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