10b 百人一首
[千載集]周防内侍スオウノナイシ
67春の夜の夢ばかりなる手枕タマクラにかひなく立たむ名こそ惜しけれ
[後拾遺集]三条院
68心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな
[後拾遺集]能因ノウイン法師
69嵐ふく三室ミムロの山のもみぢばは龍田の川の錦なりけり
[後拾遺集]良暹リョウゼン法師
70さびしさに宿をたちいでてながむればいづこも同じ秋の夕ぐれ
[金葉集]大納言経信ツネノブ
71夕されば門田カドタの稲葉おとづれて蘆アシのまろやに秋風ぞふく
[金葉集]祐子ユウシ内親王家紀伊
72音にきく高師タカシの浜のあだ浪はかけじや袖のぬれもこそすれ
[後拾遺集]権中納言匡房マサフサ
73高砂の尾上の桜さきにけり外山トヤマの霞立たずもあらなむ
[千載集]源俊頼トシヨリ朝臣
74憂ウかりける人をはつせの山おろしよはげしかれとは祈らぬものを
[千載集]藤原基俊モトヨシ
75契りおきしさせもが露を命にてあはれことしの秋もいぬめり
[詞花集]法性寺ホウショウジ入道前サキノ關白太政タイジョウ 大臣(藤原忠通)
76わたの原こぎいでて見れば久方の雲ゐにまがふ沖つ白浪
[詞花集]崇徳院ストクイン
77瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
[金葉集]源兼昌カネマサ
78淡路島かよふ千鳥のなく声に幾夜ねざめぬ須磨の関守セキモリ
[新古今集]左京大夫顯輔アキスケ
79秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づく月の影のさやけき
[千載集]待賢門院タイケンモンイン堀河ホリカワ
80長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさはものをこそ思へ
[千載集]後徳大寺左大臣
81ほととぎす鳴きつる方カタをながむればただ有明の月ぞ残れる
[千載集]道因ドウイン法師
82思ひわびさても命はあるものを憂きに堪へぬは涙なりけり
[千載集]皇后宮大夫俊成トシナリ
83世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる
[新古今集]藤原清輔キヨスケ朝臣
84ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂ウしと見し世ぞ今は恋しき
[千載集]俊恵シュンエ法師
85夜もすがら物思ふころは明けやらで閨ネヤのひまさへつれなかりけり
[千載集]西行サイギョウ法師
86歎けとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな
[新古今集]寂蓮ジャクレン法師
87村雨ムラサメの露もまだひぬまきの葉に霧たちのぼる秋の夕暮
[千載集]皇嘉門院コウカモンイン別当ベットウ
88難波江ナニワエの蘆アシのかりねのひとよゆゑ身をつくしてや恋ひわたるべき
[新古今集]式子ショクシ内親王
89玉の緒ヲよたえねばたえねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
[千載集]殷富門院インプモンイン大輔タユウ
90見せばやな雄島ヲジマのあまの袖だにもぬれにぞぬれし色はかはらず
[新古今集]後京極摂政前大政大臣(藤原良経ヨシツネ)
91きりぎりす鳴くや霜夜シモヨのさむしろに衣かたしきひとりかもねむ
[千載集]二条院讃岐サヌキ
92わが袖は潮干シホヒに見えぬ沖の石の人こそ知らねかわくまもなし
[新勅撰集]鎌倉右大臣
93世の中は常にもがもな渚ナギサこぐあまの小舟ヲブネの綱手ツナデかなしも
[新古今集]参議雅経マサツネ
94み吉野の山の秋風さよふけてふるさと寒く衣うつなり
[千載集]前大僧正慈円ジエン
95おほけなくうき世の民タミにおほふかなわがたつ杣ソマに墨染の袖
[新勅撰集]入道前太政大臣
96花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり
[新勅撰集]権中納言定家サダイエ
97来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩モシホの身もこがれつつ
[新勅撰集]従二位家隆イエタカ
98風そよぐならの小川の夕暮はみそぎぞ夏のしるしなりける
[続後撰集]後鳥羽院
99人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は
[続後撰集]順徳院
100 ももしきやふるき軒端ノキバのしのぶにもなほあまりある昔なりけり
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