05h 歌会始[御製]
 
平成二年度昭和天皇を偲ぶ歌会
 御題 晴
 昭和天皇御製 空晴れてふりさけみれば那須岳はさやけくそびゆ高原のうへ
 御製     父君を見舞ひて出づる晴れし日の宮居の道にもみぢばは照る
 皇后宮御歌  かすみつつ晴れたる瀬戸の島々をむすびて遠く橋かかりたり
 
平成三年度                          平成三年一月十日
 御題 森
 御製    いにしへの人も守り来し日の本の森の栄えを共に願はむ
 皇后宮御歌 いつの日か森とはなりて陵ミササギを守らむ木木かこの武蔵野に
 
平成四年度                         平成四年一月十四日
 御題 風
 御製    白樺の堅きつぼみのそよ風に揺るるを見つつ新年ニヒドシ思ふ
 皇后宮御歌 葉かげなる天蚕テンサンはふかく眠りゐて櫟クヌギのこずゑ風渡りゆく
 
平成五年度                         平成五年一月十四日
 御題 空
 御製    外国の旅より帰る日の本の空赤くして富士の峯立つ
 皇后宮御歌 とつくにの旅いまし果て夕映ハゆるふるさとの空に向ひてかへる
 
平成六年度                         平成六年一月十四日
 御題 波
 御製    波立たぬ世を願ひつつ新しき年の始めを迎へ祝はむ
 皇后宮御歌 波なぎしこの平タヒらぎの礎イシズエと君らしづもる若夏ウリズンの島
 
平成七年度                         平成七年一月十二日
 御題 歌
 御製    人々の過しし様を思ひつつ歌の調べの流るるを聞く
 皇后宮御歌 移り住む国の民とし老いたまふ君らが歌ふさくらさくらと
 
平成八年
 お題「苗」
 御製     山荒れし戦(いくさ)の後(のち)の年々(としどし)に苗木植ゑこし人のしのばる 
 皇后陛下御歌 日本列島田ごとの早苗そよぐらむ今日わが君も御田(みた)にいでます 
 
平成九年
 お題「姿」
 御製     うち続く田は豊かなる緑にて実る稲穂の姿うれしき 
 皇后陛下御歌 生命(いのち)おび真闇(まやみ)に浮きて青かりしと地球の姿見し人還(かへ)る 
 
平成十年
 お題「道」
 御製     大学の来(こ)しかた示す展示見つつ国開(ひら)けこし道を思ひぬ 
 皇后陛下御歌 移民きみら辿(たど)りきたりし遠き道にイペーの花はいくたび咲きし 
 
平成十一年
 お題「青」
 御製     公害に耐へ来しもみの青葉茂りさやけき空にいよよのびゆく 
 皇后陛下御歌 雪原(せつげん)にはた氷上にきはまりし青年の力愛(かな)しかりけり 
 
平成十二年
 お題「時」
 御製     大いなる世界の動き始まりぬ父君のあと継ぎし時しも 
 皇后陛下御歌 癒(い)えし日を新生(しんせい)となし生くる友に時よ穏(おだ)しく流れゆけかし 
 
平成十三年
 お題「草」
 御製     父母の愛(め)でましし花思ひつつ我妹(わぎも)と那須の草原(くさはら)を行く 
 皇后陛下御歌 この日より任務おびたる若き衛士(ゑじ)の立てる御苑(みその)に新草(にひくさ)萌ゆる 
 
平成十四年
 お題「春」
 御製     園児らとたいさんぼくを植ゑにけり地震(なゐ)ゆりし島の春ふかみつつ 
 皇后陛下御歌 光返(かへ)すもの悉(ことごと)くひかりつつ早春の日こそ輝かしけれ 
 
平成十五年
 お題「町」 
 御製     我が国の旅重ねきて思ふかな年経る毎に町はととのふ 
 皇后陛下御歌 ひと時の幸(さち)分かつがに人びとの佇(たたず)むゆふべ町に花ふる 
 
平成十六年
 お題「幸」 
 御製     人々の幸願ひつつ国の内めぐりきたりて十五年経つ
 皇后陛下御歌 幸(さき)くませ真幸(まさき)くませと人びとの声渡りゆく御幸(みゆき)の町に
 
平成十七年
 お題「歩み」
 御製     戦(いくさ)なき世を歩みきて思ひ出づかの難(かた)き日を生きし人々
 皇后陛下御歌 風通ふあしたの小径(こみち)歩みゆく癒えざるも君清(すが)しくまして
 
平成十八年
 お題「笑み」
 御製     トロンハイムの運河を行けば家々の窓より人ら笑みて手を振る 
 皇后陛下御歌 笑み交(か)はしやがて涙のわきいづる復興なりし街を行きつつ 
 
平成十九年
 お題「月」 
 御製 務め終へ歩み速めて帰るみち月の光は白く照らせり 
 皇后陛下御歌 年ごとに月の在(あ)りどを確かむる歳旦祭(さいたんさい)に君を送りて
 
平成二十年
 お題「火」 
 御製 炬火台に火は燃え盛り彼方なる林は秋の色を帯び初む
 皇后陛下御歌 灯火(ひ)を振れば彼方の明かり共に揺れ旅行(ゆ)くひと日夜(よる)に入りゆく
 
平成二十一年
 お題「生」
 御製 生きものの織りなして生くる様(さま)見つつ皇居に住みて十五年経(へ)ぬ
 皇后陛下御歌  生命(いのち)あるもののかなしさ早春の光のなかに揺り蚊(ユスリカ)の舞ふ
 
平成二十二年
 お題「光」
 御製 木漏れ日の光を受けて落ち葉敷く小道の真中(まなか)草青みたり
 皇后陛下御歌 君とゆく道の果たての遠白(とほしろ)く夕暮れてなほ光あるらし
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