匕首(あいくち)に鐔(つば。鍔)。 解釈:釣り合わない物のたとえ。匕首は元来鍔のない短刀であるから、それ に鍔をつけても釣り合わない。 類義:小刀に鐔。小刀に鐔を打ったよう。 相碁井目(あいごせいもく)。 解釈:同じことをしても、腕前の差が甚だしいこと。 参考:「相碁」は同程度の力。「井目」は、盤上の九つの点(星)のことで、 力の差が甚だしいとき、下手はここに九つの黒石を置いて打つ。 藍より出でて藍より青し。 類義:青は藍より出でて、藍より青し。 青柿が熟柿(じゅくし)を弔う。 解釈:熟した柿が落ちたのを、まだ青い柿が弔うこと。青い柿も何れは熟し て落ちていく身である。たいした違いのない者が、僅かな優劣を元にあれこれ 言うことのたとえ。 類義:昨日は人の身、今日は我が身。五十歩百歩。猿の尻笑い。人の事は我 が事。目糞鼻糞を笑う。 青田(あおだ)と赤子は褒められぬ。 解釈:まだ実らない稲も、生育途中の赤子も、将来どうなるか分からない。 今よいからといって、当てになるものでもない。 類義:子供と青田は褒められぬ。 青菜に塩。 解釈:青菜に塩をかけると水分が抜けて萎れるところから、急に元気がなく なり、しょんぼりしてしまう様をいう。 類義:青菜を湯に浸けたよう。菜の葉に塩をかけたよう。蛞蝓(なめくじ) に塩。 青菜は男に見せな。 解釈:青菜は茹でると嵩(かさ)が減る。炊事の事をあまり知らない男は、 どこにやったのかと疑うかもしれないので、青菜のうちは見せない方がよいと いうこと。 類義:つましい男に青菜見せな。 青葉は目の薬。 解釈:鮮やかな青葉の色には、目の疲れを回復させる効き目がある。 青表紙を叩いた者には叶わぬ。 解釈:学問をした人には敵(かな)わないという意。「青表紙」とは、四書 五経(ししょごきょう)などの経書(けいしょ)のことで、多く青色の表紙を 用いた。 赤いは酒の咎(とが)。 解釈:顔が赤いのは酒のせいで、飲んだ私のせいではありません、という酒 飲みの言い訳。 秋荒れ半作(はんさく)。 解釈:秋になって天候が一度荒れると、収穫は半減してしまうということ。 類義:秋日和半作。 秋風と夫婦喧嘩は、日が入(い)りゃ止む。 解釈:夫婦喧嘩は夕方になれば収まるということ。 類義:夫婦喧嘩と北風は夜凪(よなぎ)がする。 秋梭魚(あきかます)は嫁に食わすな。 解釈:秋のカマスは非常に美味しいので、嫁などに食わせるなということ。 類義:秋鯖、嫁に食わすな。秋茄子、嫁に食わすな。秋蕗、嫁に食わすな。 秋高く、馬肥ゆ。 解釈:秋、大気が澄んで空が高く感じられるようになると、馬もよく食べて 肥える。わが国では行楽の好季節という意味に用いるが、元来は中国で、北方 の騎馬民族匈奴(きょうど)が襲来して来る時期であった。 類義:天高く馬肥ゆ。 空樽は音が高い。 解釈:空っぽの樽を叩くと軽々しい高い音を出すように、中身のない軽薄な 人に限って、よくしゃべること。 類義:浅瀬に仇浪(あだなみ)。痩犬は吠える。 参考:深い川は静かに流れる。 秋蒲公英の咲く年は雪が浅い。 解釈:蒲公英(たんぽぽ)は春の花であるが、時には秋に咲くこともある。 例年より気温が高いからで、このような場合、その冬は概して気温も高めで、 雪も少ない傾向がある。 商いは牛の涎(よだれ)。 解釈:商売は、牛の涎が細く長く切れ目なく流れ出るように、利益を急がず 気長に辛抱せよという意。 商いは草の種。 解釈:商売には種類が多いこと。 類義:商売は草の種。 秋茄子(あきなすび)嫁に食わすな。 解釈:姑の嫁いびりと解し、秋ナスは美味しいので嫁には食べさせるなとい う意。反対に姑が嫁の身を案じて、秋ナスは体が冷えるから、また、秋ナスは 種が少ないので子種が無くなるのを心配して、嫁に食わすなと解する説もある。 類義:秋梭魚(あきかます)は嫁に食わすな。秋鯖(あきさば)嫁に食わす な。五月蕨(わらび)嫁に食わすな。 反義:秋茄子、嫁に食わせよ。鯒(こち)の頭は嫁に食わせよ。 秋茄子、嫁に食わせよ。 解釈:秋ナスはことのほか美味しいので、嫁に食べさせよという意。 反義:秋茄子、嫁に食わすな。 秋になれば、ほいと腹になる。 解釈:秋になると非常に食欲が出ること。がつがつ食べたがること。「ほい と」とは乞食のこと。 秋の雨が降れば、猫の顔が三尺になる。 解釈:秋の雨の日は暖かいので、寒がりの猫が顔を長くして喜ぶという意。 秋のアラと娘の粗(あら)は見えぬ。 解釈:若い娘の欠点は見過ごされやすいことのたとえ。「アラ」は冬に獲れ る魚で、秋には捕獲されないので、娘の「粗」にかけて言ったもの。 秋の扇。 解釈:夏の間重宝がられた扇が、秋になって不要になるように、男の愛を失 った女のたとえ。 秋の鹿は笛に寄る。 解釈:秋になると、雄鹿(おじか)は雌鹿(めじか)の鳴き声に似せた鹿笛 に騙されて、人に捕らえられる。転じて、恋に身を滅ぼすこと。また、弱みに つけこまれやすいこと。 類義:妻恋う鹿は笛に寄る。笛に寄る鹿は、妻を恋う。 秋の空は、七度半(ななたびはん)変わる。 解釈:秋の天候は変わりやすいことから、人の心の変わりやすいことのたと え。 類義:秋の空。男心と秋の空。 秋の日と娘の子は、くれぬでくれる。 解釈:秋の日は暮れないようで急に暮れるし、娘も中々嫁に呉れそうもない ようでいて、案外簡単に呉れることがある。 類義:春の日と継母(ままはは)は、くれるようでくれぬ。 秋の日は、釣瓶(つるべ)落とし。 解釈:井戸の中に釣瓶を落とすように、秋の日は短く急速に暮れること。 類義:秋の日の鉈(なた)落とし。 秋の夕焼け鎌を研げ、秋の朝照り隣へ行くな。 解釈:秋の夕焼けは翌日晴れる徴(しるし)だから、鎌を研いで畑仕事の準 備をせよ。朝焼けは雨になる徴だから、近くても外出するなという意。 秋日(あきび)に照らせりゃ、犬も食わぬ。 解釈:秋は日差しが強く、日焼けがひどいことを大袈裟に言ったもの。 秋日和、半作(はんさく)。 解釈:秋の天候の善し悪しが、その年の稲の半ばを決定するという意。 類義:秋荒れ半作。秋日和半日和。 秋葉山(あきわさん)から火事。 解釈:火難除けの神を祀っている秋葉山から火事を出す。人を戒める立場に ある人でも、自ら過ちを犯してしまうたとえ。 類義:火消しの家にも火事。 灰汁(あく)が強い。 解釈:渋みが強いこと。転じて、人の性格や物の考え方、文章にしぶとさや どぎつさがあること。 灰汁が抜ける。 解釈:癖やどぎつさが無くなり、洗練されてくること。 悪木盗泉(あくぼくとうせん)。 類義:渇しても盗泉の水を飲まず。 阿漕が浦(あこぎがうら)に引く網。 解釈:隠し事も度重なると、知れ渡ることのたとえ。阿漕が浦(三重県津市 一帯の海辺)は、昔、伊勢の神宮に供える魚を獲るため禁漁地とされていたが、 阿漕の平次という猟師が病の老母のため、何度も魚を捕って発覚し、沈められ た伝説から。「阿漕」は強欲な意味にもいう。 朝雨に傘要らず。 解釈:朝の雨は直に上るということ。 類義:朝雨馬に鞍置け。朝雨はその日のうちに晴れる。朝の雨は晴の兆し。 朝雨は女の腕まくり。 解釈:女の腕まくりは、別に恐れるようなものでもない。朝の雨も直ぐに止 んでしまうということ。 類義:朝雨小博打。朝雨は日照りの元。俄雨(にわかあめ)と女の腕まくり。 朝雨は日照りの元。 解釈:朝の雨は、天気になる前触れである。 類義:朝の雨は晴の兆し。 浅い川も深く渡れ。 解釈:浅い川を渡るときも、深い川を渡るような用心が肝要であるというこ と。油断を戒める言葉。 類義:石橋を叩いて渡る。用心は深くして、川は浅く渡れ。 朝顔の花、一時(いっとき)。 解釈:朝だけの短い花にたとえ、栄華の儚(はかな)さ、衰えやすいことの たとえ。 類義:槿花一日(きんかいちじつ)の栄(えい)。槿花一朝(きんかいっち ょう)。 朝雷に川渡りすな。 解釈:朝の雷は大荒れ、大雨、洪水の恐れもあるから、川を渡っていくよう な遠出は避けた方がよい。 類義:朝雷に戸開けず。 麻殻(あさがら)に目鼻付けたよう。 解釈:麻殻(麻の皮を剥いだ後の茎。おがら)は、細長くてもろいことから、 痩せて骨ばかりの男をいう。 類義:箸に目鼻。 朝霧は晴。 解釈:朝霧は夜間天気のよいときに発生して、日が出ると消えることから、 朝霧の見られるときには晴れるということ。 類義:朝霧深きは晴天の兆し。 反語:朝霧は雨、夕霧は晴。 朝曇りに驚く者は、所帯持ちが悪い。 解釈:朝曇っているからと仕事に出かけるのを渋る者は、怠け者で、家計の 遣り繰りも下手だから金持になれない。 朝曇り、昼日照り。 解釈:朝のうち曇りの夏の日は、日中になってひどく暑くなる。 類義:朝曇り、後には晴れる。朝曇りは晴れ、夕曇りは雨。 浅瀬に仇浪(あだなみ)。 解釈:考えの浅い人ほど騒ぎ立てるという意。「仇浪」は、いたずらに立ち 騒ぐ波。 類義:空樽(あきだる)は音が高い。痩犬は吠える。痩馬の声嚇し(おど し)。 参考:Deep river move in silencs, shallow brooks are noisy.(深い川 は音を発てずに流れ、浅い小川はやかましい) 朝鳶に蓑を着よ、夕鳶に笠を脱げ。 解釈:朝、鳶が舞うのは雨の前兆、夕方、鳶が舞うのは晴れる前兆という意。 類義:朝鳶に川渡りすな。朝鳶は雨、夕鳶は晴。 朝虹は雨、夕虹は晴。 解釈:朝虹の立つ日は雨、夕方に虹の立つのは晴れの徴(しるし)。 類義:朝虹雨の元、夕虹照りの元。 麻につるる蓬(よもぎ)。 解釈:曲がって生えやすい蓬でも、真っ直ぐに生える麻の中ならば、自然に 曲がらずに伸びる。転じて、善良な人々に交われば、殊更に教育しなくとも、 自然に善良な人に育つということ。 類義:麻と蓬はせたいにつるる。麻の中の蓬は扶(たすけずして直し。藪 の中のうばら。 麻の中の蓬。 類義:麻につるる蓬。 朝日は西から出る。 解釈:有り得ないことのたとえ。 類義:お天道(てんとう)さんが西から出る。 麻布(あざぶ)で気が知れぬ。 解釈:どうしてそんなことをしたのか、気が知れないという意。東京の麻布 に六本木という地名があるが、それに相当する木はなく、「木が知れぬ」にか けて言った洒落。 類義:麻布のお方で気が知れぬ。 薊(あざみ)の花も一盛り。 解釈:薊はあまり可愛さがないとされる花だが、それでも花盛りには手折る (たおる)人もある。女の顔形(かおかたち)の悪さを薊にたとえ、年頃にな ればそれなりに美しくなり、魅力が出るとのたとえ。 類義:鬼も十八、番茶も出花。南瓜女も一盛り。蕎麦の花も一盛り。 朝靄(あさもや)の昼日和。 解釈:朝靄が立ち込めたような日は、晴天になるという意。 朝焼けは雨、夕焼けは日和。 解釈:朝焼けの日は雨となり、夕焼けの翌日は晴天になるという意。 類義:朝焼けしたら、川向こうに行くな。夕焼けに鎌を研げ。 海驢(あしか)の番。 解釈:交代して眠ること。「海驢」は、オットセイによく似た食肉獣で、群 居し、眠るときに必ず一頭が起きていて警戒する習性がある。 明日(あした)は明日の風が吹く。 解釈:明日、明後日と、先のことをいくら思い煩っても仕方が無い。また、 先になれば現在とは違った状況になるものである。 類義:明日(あす)の事は明日案じよ。明日は明日、今日は今日。 葦を啣(ふく)む雁(かり)。 解釈:物事を行うには、それなりの準備が必要だということ。雁は遠く海を 渡る際、疲れたとき海上で羽を休めるために、口に枯れた葦をくわえて飛ぶと いう故事から。 飛鳥川(あすかがわ)の淵瀬。 解釈:世の中の移り変わりの激しいこと、無常なことのたとえ。飛鳥川(奈 良盆地南部を流れる小川)は、水流の変化が甚だしく、淵(深い所)と瀬(浅 い所)が変わりやすいことからいう。 類義:桑田(そうでん)、変じて滄海(そうかい)となる。 小豆の豆腐。 解釈:有り得ないことのたとえ。 類義:氷の天麩羅(てんぷら)。 小豆は友の露を嫌う。 解釈:小豆を畑に蒔くときは、間隔をおくのがよいという教え。 類義:葱(ねぎ)は自分の影さえ嫌う。 小豆は無精者に煮らせろ。 解釈:小豆は気長に煮るのがよいという意。 類義:小豆の火は無精者に焚かせろ。小豆は怠け者に煮らせろ。 |