威(い)あって、猛(たけ)からず。 解釈:威厳はあるが、決して荒々しく威圧的でない。孔子を評した言葉。 いい後は悪い。 解釈:よい事があると、後で悪い事が起こりがちである。 類義:一の裏は六。禍福(かふく)は糾(あざな)える縄の如し。大猟の明 日(あした)。 参考:悪い後はよい。 言い勝ち功名。 解釈:黙ってはよい意見も周囲の者に通じない。言葉数の多い方が勝ち。 類義:言い勝ち功名、一揆(いっき)の寄り合い。言わぬことは聞こえぬ。 反義:言わぬが花。言わぬは言うにまさる。沈黙は金、雄弁は銀。 言いたい事は明日言え。 解釈:思った事をすぐ言わないで、一晩ゆっり考えた上で言えば、失敗する ことがない。 類義:月日がたてば気も変わる。腹の立つ事は明日言え。 唯唯諾諾(いいだくだく)。 解釈:事のよい悪いに関わらず、ただ闇雲(やみくも)に人の意見に従うこと。 用例:唯唯諾諾と従う。 言うた損より、言わぬ損が少ない。 解釈:黙っていたために損することより、言葉が過ぎることの方が害が大き い。口は慎まなければならない。 言うに落ちず、語るに落ちる。 解釈:本人は隠しているつもりでも、しゃべっている言葉の中にそれが自然 に現れてしまうこと。 言うは易く、行うは難し。 解釈:口に出して言うことは簡単であるが、実行となるとなかなか難しいと いう意。 類義:言うは行うより易し。一丈を説き得んより、一尺を悟り得んに如かず。 参考:Easier said than done.(言うは行うより易しい) 家売れば、釘の価(あたい)。 解釈:家は売るときは値が落ち、古材か釘の値段にしかならない。 類義:家売れば縄の価。家の建売りは釘代。 家柄より芋茎(いもがら)。 解釈:落ちぶれた旧家や門閥(もんばつ)を嘲っていう言葉。 類義:家柄より食い殻。家の高いより床の高いがよい。芋茎は食えるが、家 柄は食えぬ。 家泣きの外笑い。 解釈:家の中では無愛想だが、外面はとてもよいこと。 類義:内閻魔(うちえんま)の外恵比須。 家に無くてならぬものは、上がり框(かまち)と女房。 解釈:家に上がり口の框(床の端の横木)が無ければ困るように、女房がい なければ如何ともし難い。 類義:家に女房の無きは、梁(うつばり)の無きと同じ。女と俎板(まない た)は無ければならぬ。女房は家の大黒柱。女房は半身上(はんしんじょう)。 家に鼠、国に盗人。 解釈:大きい小さいはあっても、どの世界にも必ず泥棒がいるものだ。 家の高いより床の高いがよい。 解釈:家柄よりも現在裕福な方が望ましい。 類義:家柄より芋茎(いもがら)。 家は弱かれ、主は強かれ。 解釈:家は弱くても主人は強くなければ、成り立ってゆかないもの。 類義:箸と主(しゅう)とは太いがよい。 家貧しくして、孝子(こうし)現る。 解釈:家が貧しいと子どもも家計を助けたりするので、自然とその孝行が人 に知られてくること。 家貧しければ、良妻を思う。 解釈:家が貧しいと、これを助ける内助の功の必要性を身に沁みて感じると いう意。 家を出れば七人の敵あり。 類義:男は閾(しきい)を跨げば七人の敵あり。 いかもの食い。 解釈:普通は人の食べない、いかがわしい物を食べる人のことをいう。また、 風変わりな趣味を持つことにも用いる。 怒りは敵と思え。Recognize that getting angry is an enemy. 解釈:怒りをあらわにすることは必ず他人の怒りを呼び、恨まれることにな るから、自分を滅ぼさないために怒りを慎めという戒め。徳川家康の遺訓。 参考:He overcomes a stout enemy who overcomes his own anger.(自分 の怒りに打ち勝つ者は、強敵に打ち勝つ) 怒りを遷(うつ)さず(論語)。 解釈:八つ当たりをしてはいけない。 怒れる拳(こぶし)笑顔に当たらず。 解釈:どんなに怒っていても、気持ちのよい笑顔には叶わないものである。 類義:尾を振る犬は叩かれず。柔(じゅう)よく剛(ごう)を制す。袖の下 に回る子は打たれぬ。握れる拳、笑める面(おもて)に当たらず。 衣冠(いかん)の盗(とう)。 類義:裃(かみしも)を着た盗人。 生き二両の、死に五両。 解釈:出産に二両、葬式に五両、この世は生きても死んでも出費が嵩むよう にできている。 類義:産み三両。産み三両に子五両。産み三両に死に五両。子三両。薦(こ も)の上にも三貫(さんがん)。 息の臭きは、主知らず。 解釈:自分の口臭には気付かなぬように、自分の欠点は分からないものでと いう意。 類義:臭い物、身知らず。人の七癖より、我が十難。我が身の臭さ、我知ら ず。 生き身に餌食。 解釈:誰もがそれぞれ何かしら食べる手立てを備えているものである。 類義:生き虫に餌絶えず。口あれば食って通る、肩あれば着て通る。 生き身は死に身。 解釈:この世の生は、必ず終わりがあり、生あるもの一度は死ぬものである。 類義:合わせ物は離れ物。生き物は死に物。生者必滅(しょうじゃひつめ つ)。生ある者は死あり。 異曲同工(いきょくどうこう)。 類義:同工異曲。 軍(いくさ)見て矢を矧ぐ(はぐ)。 解釈:事が起こってしまってから、慌ててその準備をすること。戦いが始ま ってから矢を拵える意から。 類義:諍(いさか)い果てての乳切木(ちぎりぎ)。敵を見て縄を綯う(な う)。 異口同音(いくどうおん)。 解釈:皆が同じ意見である。口は違っているが、言っていることは同じ。 意見と餅は搗くほど練れる。 解釈:餅はつけばつくほどよい味になるものだが、人の意見にも従えば従う ほど得をするという意。 諍(いさか)い果てての契り。 解釈:喧嘩してから仲よくなること。 類義:雨の後は上天気。雨降って地固まる。喧嘩の後の兄弟名乗り。 諍(いさか)い果てての乳切木(ちぎりぎ)。 解釈:丁度よい時機を逃すこと。喧嘩が終わってから、棒切れ(乳切木は、 乳の辺りまでの長さの、両端を太く中央を少し細く削った木で、喧嘩の武器と なった)を持ってきたのでは役に立たない。 類義:争い果てての乳切木(ちぎりぎ)。軍見て矢を矧ぐ(はぐ)。生まれ た後の早め薬。火事の後の火の用心。喧嘩過ぎての棒乳切。葬礼帰りの医者話。 十日の菊、六日の菖蒲。盗られた後の戸締り。燃えついてからの火祈祷(ひぎ とう)。 いざ鎌倉。 解釈:さあ大変。鎌倉(幕府)に一大事が起こったという意味。危急の場合 や大事の起こった場合にいう。 石に裃(かみしも)。 解釈:硬い石に裃を着せたように、堅苦しいこと。また、そういう堅苦しい 人のこと。謹厳な人をいう。 類義:石部金吉鉄兜(いしべきんきちかなかぶと)。 石に灸(きゅう)。 解釈:石に灸を据えるように、まるで効果のないことのたとえ。 類義:石にはり。泥に灸(やいと)。 石に漱(くちすす)ぎ、流れに枕す。 解釈:間違えて反対の事を言うこと。負け惜しみが強く、理屈をこじつけて 自分の間違いを通すこと。 石に錠(じょう)。 解釈:用心に用心を重ねること。 類義:石に判。石の証文、岩の判。 石に判。 解釈:確実なものを更に確実にすること。絶対に間違いないことのたとえ。 類義:石に印(いん)を押すよう。石に錠。石の証文、岩の判。石屋の尻に 老中(ろうじゅう)の判。 石に蒲団は着せられぬ。 解釈:墓石になってからでは蒲団を着せて介抱する訳にもいかない。親が生 きているうちにせいぜい労わって孝行をすることだという戒め。 類義:孝行のしたい時分に親はなし。 意志のある所には、道がある。In the place with the will, there is a road. 石の上にも三年。For three years, there is it on a rock. 解釈:冷たい石の上にも三年座り続ければ暖かくなることから、辛抱するこ との大切さを説いた言葉。 類語:茨(いばら)の中にも三年の辛抱。辛抱する木に金がなる。火の中に も三年。 石の物言う世の中。 類義:秘密が他に漏れやすいことのたとえ。 類義:石に耳あり。壁に耳。 石橋を叩いて渡る。 解釈:堅固な石橋さえ叩いて安全を確かめて渡るという意で、非常に用心深 いことのたとえ。何事も慎重過ぎる人を皮肉っていう言葉としても用いられる。 類義:石橋に鉄(かね)の杖。念には念を入れよ。 反義:危ない橋を渡る。 石部金吉鉄兜(いしべきんきちかなかぶと)。 解釈:生真面目で堅い一方の人のこと。 類義:石部金吉。 医者が取るか、坊主が取るか。 解釈:生死の境を行ったり来たりしている重体の病人をいう。 類義:医者が取らにゃ坊主が取る。 医者寒からず、儒者(じゅしゃ)寒し。 解釈:医者は生活に困ることはないが、学者はえてして貧乏なものだ。 類義:儒者貧乏医者福徳。 医者と味噌は古いほどよい。 解釈:医者は経験豊富な人ほどよく、味噌は塩によく馴染んだものがよい。 類義:医者と唐茄子(とうなす)は年寄るほどよい。医者と坊主は年寄がよ い。医者坊主南瓜(かぼちゃ)。 医者の薬も匙加減(さじかげん)。 解釈:どんなによい薬でも、適量を用いないと効かない。何事も加減が大事 であることのたとえ。 医者の自脈、効き目なし。 解釈:医者は、自分の病気となると治療に迷うものだ。「良医の子は病気で 死ぬ]という言葉もある。 類義:陰陽師(おんみょうじ)、身の上知らず。 医者の只今。 類義:紺屋(こうや)の明後日(あさって)。 医者の不養生。 解釈:医者というものは、人には養生を勧めながら、自分では不養生をす るものだ。転じて、口では大層立派なことを言っても実行が伴わないこと。 類義:医者の若死に、出家の地獄。学者の不身持。紺屋の白袴。坊主の不信 心。 衣食足りて礼節を知る。 解釈:人は生活が豊かになってはじめて、礼儀に心を向けるゆとりができ、 おのずと慎み深くなる。 類義:衣食足りて栄辱(えいじょく)を知る。倉廩(そうりん)満ちて礼節 を知る。礼儀は富足に生ず。礼は有に生じ、無に廃る。 石を抱きて淵に入る。 解釈:石を抱いて深みに飛び込むような無謀な行いをいう。自殺行為。 類義:石を抱いて河に沈む。薪を負いて火に入る。 以心伝心(いしんでんしん)。 解釈:いちいち口を出して言わなくとも、こちらの気持が相手方に通じるこ と。 類義:心を以て心に伝う。 出雲の神より恵比須の紙。 解釈:色恋よりも金の方がよいということ。 伊勢へ七度(ななたび)、熊野へ三度(みたび)。 解釈:各地に信心参りをすることで、信仰心は厚いほどいいというたとえ。 伊勢や日向(ひゅうが)の物語。 解釈:取り止めのない話、辻褄の合わぬ話などを指していう。伊勢(三重県) と日向(宮崎県)の男が死んだとき、閻魔(えんま)の庁では、伊勢の男を生 き返らせようとしたが、既に灰になっていたので、その魂を日向の男に入れて 生き返らせたところ、心と体が別人で、話がちぐはぐだったという話による。 居候(いそうろう)の三杯目。 解釈:他人の家に住んで食わせて貰っている者は、食事の際も遠慮して、三 杯目にはそっと出すこと。「居候、三杯目にはそっと出し」ともいう。 急がば高火(たかび)。 解釈:急いで物を煮る時は、あまり火に近づけないのがよいという意。炎の 温度の最も高いところは外焔で、中心部は温度が低い。 類義:急がば高鍋。 急がば回れ。When I hurry, make a detour. 解釈:急ぐ時は、回り道でも安全な道を行く方が、結局は早く目的地に着く。 類義:近道は遠道。走れば躓く(つまづく)。回るは早道。 磯際(いそぎわ)で舟を破る(わる)。 解釈:物事は完成の直前に失敗しやすいものだから、気を緩めないよう注意 しなければならない。 類義:九仞(きゅうじん)の功を一簀(いっき)に虧(か)く。草履履き際 で仕損じる。港口で難船。 |