GLN町井正路訳「ファウスト」

第二十二場 ワルプルギス夜の夢

楽隊長
 下手(へた)な横好(よこずき)乱調子、
 葉の間の蛙、藪蟋蟀、
 蝿の吻、蚊の鼻、
 誰が聞いても妙なる楽師。
 
敏捷者
 下を上へと沸きかえり、
 喜びあえる者共は、
 無憂漢とや名付くべし。
 足もて歩む者見えず、
 されば吾等も頭もて。
 
魯鈍者
 昔は美味に飽きたりしが、
 今は絶えて口にせず。
 踊り躍りて靴破る、
 之より先きは跣足にて。
 
鬼火
 沼の中から現われて、
 舞踏の列につらなれば、
 燦爛たる才子なり。
 
流星
 眩ゆく光放ちつゝ、
 九天よりまっしぐら、
 叢の真中に陥りぬ、
 助け起せよ誰かある。
 
肥大漢
 御通りなるぞ道開け、
 草皆なびきてひれ伏しぬ。
 肥え太りたる精霊は、
 歩を移すも重苦し。
 
プック
 君の歩みの拙さよ、
 象のそれにさも似たり。
 今日の仲間で拙きは、
 プックならんと思いきや。
 
アリエル
 自然の厚き恵みより、
 精霊翼を与えなば、
 吾に従え空中を、
 薔薇さく山の頂(いたゞき)へ。
 
奏楽隊  (最低音合奏)
 棚引きわたる雲と霧、
 輝きそめぬあけぼのに、
 樹の葉、葦原そよぎ立ち、
 妖精いつしか消え失せぬ。

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