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天使の合唱 基督は昇天し給えり。 汝地に腹這い、 腐敗と遺伝の欠点に、 包まれし人の子よ、 歓喜せよ。 ファウスト 噫、何たる嚠喨(りゅうりょう)な歌の声ぞ、何たる清い響ぞ、合唱の声も聞いた許り で、折角取り上げた毒杯も飲み干す勇気が亡くなった、さては復活祭が始まったと見える、 あの慰める様な讃美歌は、嘗つて天使の唇から、新たなる聖約の保証として、基督の 墓辺に響き渡った其歌だ。 婦人の合唱 真心を彼に捧げし我々は、 香油を注ぎて彼をしも、 清きもがりに包みたり、 彼をばこゝに葬りぬ、 されど、あゝされど、 彼は御墓にましまさず。 天使の合唱 基督は昇天し給えり、 迷霧は彼を包みしも、 艱難(かんなん)彼を試めせしも、 勝利は遂に輝きね(ぬ?)、 祝福彼を囲みたり。 ファウスト あの流暢な人心を服させる様な天上の歌が、何故自分の様なものを此の塵の中に探がす のだろう、あの使命は自分にも聞えるけれど、俺は信仰を欠いて居る、鐘よ、敬虔従順な人 の耳に響け、奇蹟は信仰の寵児である、俺はあの霊妙清調の響を聞いても、其の境に飛び 行こうとは思わない、併し子供の時から聞き慣れたあの響を聞いて、新しい生命に引き 戻される様だ、嘗つては俺も天の愛の接吻を、祭日の物静かな荘厳の中に享けた事も ある、其時冴え渡って響く鐘は、一種神秘の意が含まれて、祈祷は一の楽みであった、 何とも知れない一種欽慕の情は、自分を駆って森や野原を逍遥させ、新しい世界が感謝の 涙の前に現われた事もあった、あゝ、此の神歌は壮年の愉快な遊戯を想い出させて、 無限の興味を与える、過去の追想は今子供の感情を以て俺を最後の決心から引き留めて くれた、響き渡れ、美しき天の讃美歌、涙は滂沱(ぼうだ)として流れる、俺は再び 此の世のものとなったのだ。 門弟の合唱 生きては人に崇められ、 死しては高く天に行く、 新たなる命に帰る主の喜びは、 造物主(かみ)が万物(よろず)を創るの夫れに例うべし、 あゝ独り此の世に残されし、 我等門下の袂こそ、 御身の幸に絞るなれ。 天使の合唱 基督は昇天し給えり、 罪と穢の束縛を、 喜び勇んで脱れ出よ、 神を讃めて民を撫し、 福音遠く伝へつゝ、 神今汝に近けり、 汝の為に神今こゝにあり。 |
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