(三)スポンハイムの寺院長ヨハネス、トリテミアスと呼ぶ人から、一天文学者に
送った一五〇七1年八月二十日附の書翰中に、次の如き文句がある。
貴下より御尋ねのジオルジアス、サベリカスと云う人物は漂浪者に候、此の者
自ら妖術家の王と称し我が神聖なる教理に戻り、奇怪千万の説を公表致居候由、
斯様の者は速かに罰すべきものと存じ候、此の者は自己の姓名の後に八個の妖的文字を
集めたる名刺を所持致し居るとの事に御座候、其の中にファウスタスと申す文字も
見え居り候、拙者昨年ブランデンブルグよりの帰途ガイレンヒューゼン市にて此の
者に邂逅(かいこう)致し候いしも、拙者の到着を聞知するや否や逃去したる為め、
遂に会見致さざりしは呉々も残念のことに候、彼を拙者の面前に連れ来らんとせし者に
有之候いしが、断乎として拒絶したる由に候、同市の僧侶等が申す処によれば
此の者同市に来り公衆の前に誇張して、哲人プラトン及びアリストテレスの全集をして
尽く消失せしむるとも、自己の脳裡より容易に之を供するを得べしと申せし由に候、
又或時数人の前にて救世主耶蘇基督の奇蹟を以て驚くに足らざるものとなし、
自己も容易に之を行い得べしと云える由に御座候。
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