02 神社有職故実(序説)
 
                      参考:神社本庁発行「神社有職故実」
 
                     本稿は、昭和48年九版発行(昭和26年初
                    版発行)の「神社有職故実」を参考にさせ
                    ていただきました。
                     本書の序の中で、著者の八束清貫氏は「
                    ・・・・・・神社における総てのものが、有職故
                    実によらぬものはないといっても過言では
                    あるまい。有職故実をたづねて、ものの由
                    来を知り、意義を覚り、用途を明らかにす
                    ることによってこそ、神社の尊厳を増し、
                    崇敬心の向上をも計り得るものである。有
                    職故実の必要なる所以は実にここに存する。
                    ・・・・・・」と述べておられます。
                     文章は、新仮名遣いに準拠しました。 
                                    SYSOP
 
〈序説〉
 
 有職は、「いうしょく」、又は「いうそく」と読みます。有識の転語です。有は有徳、
有司にように保有の義であり、識は知識の義、即ち「博識」の義である。即ち俗にいう
「物知り」に当たります。
 平安時代中期頃の「物知り」は、概ね和漢の文学、歴史に精通することでしたが、鎌
倉時代以後になりますと内容が限定され、宮廷の官職、その他公事の故事を研究する学
問を有職と称し、その学者を識者というようになったのです。
 故実コジツとは、「古の事実」の意味で、平安中期頃は、制度や儀礼上の故事旧例を指
していましたが、鎌倉時代以後武家時代になりましと、公家クゲの故実に対して武家ブケ
の故実が出来て、公家故実(公家に限り有職という)、武家故実の両方面が成立するよ
うになりました。
 有職故実の学、固より時代により消長はありましたが、江戸時代に入り文芸復興と共
に、有職故実の学者は従来の公武の両家に限らず、一般民間からも学者が頻出して多く
の書籍を編述し、百花一時に開くの盛観を呈しました。ここに至って有職故実の根柢が
固まり、その研究範囲も略々一定することになりました。即ち(一)儀式典例、(二)
官職位階、(三)殿舎輿車、(四)冠帽服装、(五)調度装飾、(六)軍器武具、(七
)書札礼節、(八)飲食包丁等が決まりました。
 明治以後、史学の進歩に伴い分科的に研究するようになり、官職位階の方面は法制史
に、冠帽服装の方面は風俗史に属するなど、研究の範囲が縮小せられつつも、有職故実
学は漸次進歩発展の途上にあります。今後益々組織的にして立体的な研究を重ねて、将
来の大成を期さねばなりません。
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