神様の戸籍調べ
 
三十八 少彦名神スクナヒコナノカミ
 
 大国主命オホクニヌシノミコトと力を合せ、殊に、海外の発展史上に於て、日本最初の神様とし
て、夙ツトに外国を征服し給ひたるには、須佐之男命スサノヲノミコトよりも、此少彦名神の御力
が一番多いと称せられ、日本建国の上に、大国主命は主として内国を治められ、此神は
主に外国を御開らきになったと伝へられてゐる。
 神皇産霊神カミムスビノカミの御長子であらせられ、最も活発であらせられ、沢山の神様の中
で一番兄様であり乍ら、親神様の指の股マタから生れて、それから方々をとび廻り、何処
に往ってゐたか、親神様も知らないこと久しいものであった。
 処が大国主命が或時出雲の美保の御崎ミサキに御出になって、空うつ浪を眺めてゐられ
る、小さい舟の形したものに乗って、蟻アリに似た火取虫ヒトリムシの皮を全剥マルハギにした着
物をきて、大浪小浪うつ大海上を御出になる小さい神様があったので、
 「御名前は何と仰せになりますか?」
と尋ねたが一向御返事がない。従ってゐた大国主命の御家来衆の中にも一人として御承
知の方がないので、遂に蟇ガマに尋ねて見ると、
 「私も知りませんが、足は役には立ねど、あの案山子カカシは何でも世の中の出来事は知
ってゐますから、案山子に御聴になったら知ってゐましゃう」
と答へたから、案山子に御尋になると、
 「是は、神皇産霊神の御子にて、少彦名命スクナヒコナノミコトと申す、偉らい神様であります」
と答へたので、実際さうか知らと、天ツ神に尋ねて見らるゝと、実に天ツ神の御長子と
解ったので、茲に於て、大国主命は兄弟の義を契り、日本建国に尽力せられたのであっ
た。殊に此神は、久しく海外にあらせられた結果、勇猛なる上に、医薬に通じ、造酒の
法にも精しい方であったと云ふ。
[次へ進む] [バック]