05 神社
 
                   参考:神社新報社発行「新編神社実務提要」
 
 神社は宗教法人法第二条第一号に該当する宗教団体であって、神社本庁を形成する基
本構成単位でもある。
 神社は、祭祀を行ひ、祭神の神徳をひろめ、氏子崇敬者を教化育成すること、即ち宗
教活動を行ふことを主たる目的とする。
 祭祀とは、信仰の対象である神と人との交渉の事実を具体的に表現する儀礼であって、
大祭、中祭、小祭の別がある。例祭、祈年祭(春祭)、新嘗祭(秋祭)、式年祭、鎮座
祭、遷座祭、合祀祭、分祀祭並びにその神社の特別由緒ある祭祀を大祭とし、歳旦祭、
元始祭、紀元祭、神嘗祭当日祭、明治祭、天長祭、その他これに準ずる祭祀及び神社に
由緒ある祭祀を中祭とし、大祭及び中祭以外の祭祀を小祭とする。祭祀執行に必要な進
退作法等を神社祭式行事作法といひ、神明に奉仕する者は、これに習熟してゐなければ
ならない。祭祀を奉仕するにあたっては斎戒を重んじ、その精神の徹底がはかられなけ
ればならない。斎戒には軽重、深浅の別があり、一応の基準が定められてゐる。また、
服忌中の者は、祭祀にあづかることを避ける。
 
 祭神の神徳をひろめるとは、その神社の御神威の発揚に努めることであり、教化育成
とは氏子崇敬者の信仰心の昂揚を図ると共に、信仰的関心のない者を信仰を導くために
努めることである。神徳の昂揚と教化育成は、その神社の状況に応じ様々な方法によっ
て実効が図られるのである。
 祭神の神徳をひろめることは、主として一社の立場において行はれるが、教化育成の
努力は、広く神社神道の立場において行ひ、究極的にはその神社を崇敬する信仰心を確
立させることを目的とする。従って一般大衆を対象とする広範囲の活動である。
 
 法律上の解釈においては、神社と称するものの中には伊勢の神宮即ち「神宮」も含ま
れるが、本庁の組織内においては、神宮は一般神社とは異なる取扱をする。
 本庁と神宮との関連は、本庁は法的には神宮を包括するが、信仰的には本宗として奉
戴し、これを奉賛する関係にある。その精神はすべての面に表はれ、庁規においても神
宮に関する事項は神宮で定めるところによると規定し、第六章の適用から除外すること
を明らかにしてゐる。例へば神宮においては、勅旨を奉じて決定される祭主を奉戴し、
又職員の長を大宮司と称し、その選任については勅裁を仰ぐ等、一般神社とは著しく趣
を異にするものがあるが、これらについては何等庁規等の制約を受けない。これはその
御由緒からしても当然のことといふべきであらう。
 
 神宮大麻(お札のこと。SYSOP)及び神宮暦の頒布を、神宮からの委託を受けて本庁が
実施してゐるのは、本庁が神宮を本宗として奉戴し奉賛するところに由来するものであ
り、又本庁の運営のため神宮もその経費を負担するのは、主として法的には神宮が本庁
の包括下にあることに由来するのである。
 「神宮」以外の神社の名称は、一般に「何々神社」といふが、その名称は更に社名と
社号とに分けることができる。「稲荷」「八幡」「氷川」等が社名であり、「神宮」「
宮」「神社」「社」等が社号である。社名は多く祭神の名称、御神徳、神社の由緒、鎮
座地名等に由来する名称が用ゐられる。社号は通常「神社」又は「社」が用ゐられるが、
皇室、国家と特殊な縁のある神社等では、「神宮」又は「宮」が用ゐられる。中でも神
宮号を称する神社は、特別な由緒を有する神社に限られてゐる。国家管理廃止後に神宮
号に改称した例は、伊弉諾神宮(昭和二十九年五月二十日)、北海道神宮(同三十九年
九月一日)、英彦山神宮(同四十九年七月)の三社があるのみであり、それぞれ厳格な
手続を経て神社本庁より承認されたものである。また、「大社」号が認められてゐたの
は、戦前は原則的には出雲大社のみであったが、戦後、三嶋大社他一六社が所定の手続
を経て大社号に改称されてゐる。この他社号には、「大神宮」の他、神号をそのまゝ社
号とする神社があるが、これらは極めて特殊な事情に基づくものでその実例は少ない。
 
 神社に対しては、古くは朝廷より神階を奉り、又国家管理時代には国家の待遇の程度
によって、官幣の大中小社、国幣の大中小社、別格官幣社(以上を官国幣社と呼ぶ)、
府県社、郷社、村社等の社格が定められ、何等社格のない神社は、一般に無格社と呼ば
れた。現在は神階又は社格の制度はなく、法的に各神社は一律平等である。併し本庁の
内部的事務としては、神職の進退等に関する事項について止むを得ない必要から一種の
差別化した取扱をしてゐる。その対象となる神社は、役職員進退に関する規程の別表に
掲げられてをり、一般に別表神社といはれる。
 別表神社はその社の由緒、規模、崇敬状況、活動状況等に基づいて、神社庁において
予選し、本庁の審査委員会において厳重に審査の上内定し、評議員会の議決を経て決定
される。別表に掲げる神社に列することは、何等社格的意味を有するものではなく、そ
の神社の信仰的社会的現状から、他の一般神社と同様に取扱ふことが適当でないことに
よる区別に過ぎない。しかし、別表神社は全国的に見て社殿、境内地、神職数、予算等
が一定標準以上の神社であり、その意味において、一種の等級的な感覚を与へてゐる。
 別表神社の特異な取扱の主なるものは次の通りである。
一、宮司及び権宮司の進退の取扱ひは神社庁長の委任事項としない
二、宮司及び権宮司の任用資格は明階以上の階位を有する者であること
三、禰宜の任用資格は正階以上の階位を有する者であること
四、宮司及び権宮司の在任中の身分は特級、一級及び二級上以外の者は二級とする
五、一定以上の基準に達すれば権宮司を置くことを承認される
 
 宗教法人にはその運営機関として三人以上の責任役員が置かれ、そのうち一人が代表
役員となる。神社はその歴史的特殊性に基いて、宮司が必ず代表役員となることに神社
規則で定めてゐる。代表役員の就任は登記することによって第三者に対抗する効力を生
ずる。責任役員が就任したときには遅滞なく統理に届出ることを要する。神社庁は統理
の委任を受けて、神社役員の進退についての統理宛の報告を受理し、神社役員台帳に登
録する。神社から本庁宛の進達文書中、責任役員の連署が必要なものについては、神社
庁はその氏名を台帳と照合し、相異のないことを確認してから文書を本庁に進達するの
である。
 神社には責任役員即ち法定役員の外に総代がある。総代は宗教法人の基盤である宗教
団体としての神社に固有のもので、兼ねて法人の機関として神社規則の定める職務を行
ふ。機関の職に在る者の職務権限、運営方法その他のことについては省略する。
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