07a[四 役員備忘録]
 
〈財産処分等の働き掛けに対する姿勢と基本認識〉
 神社の土地(立木を含む。)は神社規則第二十三条第二項に定められた通り基本財産
であり、その神社の尊厳を維持し、且つ保存する目的をもって管理しなければなりませ
ん。そのため、神社の財産は、常に良好な状態において、それぞれの用途に従い、確実
有利、且つ効果的に運用するよう管理しなければなりません。そして、基本財産はでき
れば不動産のまま子々孫々に守り伝えてゆくことを念頭におき、もしやむを得ず処分し
た代金も、役員会の議決を経て基本財産として設定し、最も堅実な方法で管理して神社
永続の基根とするよう留意して下さい。なお、処分代金の使途及び管理については、適
正且つ公正を欠くことのないよう留意しなければなりません。
 神社の財産管理上の具体例としては、「境内地・社有地の処分」、「境内地の転用」、
「境内建物の貸付」、「境内林・社有林の処分」等が考えられます。それぞれの場合の
基本姿勢、注意事項等をまとめましたので参考にして下さい。
 
一、境内地・社有地の処分
 境内地・社有地はすべて神地であり、神社永続の基根をなす基本財産です。よって、
真にやむを得ない場合でない限りこれを処分してはなりません。ここで言う真にやむを
得ない場合とは、例えば公共事業であっても、災害防止のための河川改修等極く限られ
た場合です。近年の傾向としては、道路拡幅等の公共事業のために処分する事例が特に
多く見受けられますが、公共のためとはいえ、そのために神社本来の活動が阻害され、
神社の尊厳が損なわれ、また神社の存立に影響を及ぼす場有為等は、厳に慎むべきです。
好況の名のもとに安易に財産を処分することのないよう慎重に検討し、その上でやむを
得ない場合には、代替地を取得するのでなければ処分をしないよう心掛けます。
 更に境内地は、史蹟にも相当(指定の有無を問わない)する場合もあるので、特に慎
重の上にも慎重を期して対処しなければなりません。
△役員会で確認
 ○その処分は必要か。
 ○その処分によって神社本来の活動が阻害されないか。
 ○その処分によって神社の尊厳が損なわれないか。
 ○その処分によって神社存立の基盤が影響を受けないか。
 ○その他、その処分によって影響が考えられる事項はないか。
△役員会で決定
 ○仮責任役員選任は必要か(本紙「役員の任務」で確認)。
 ○代替地等の取得はどうするのか。
△手続き
 ○神社本庁に申請・承認
 ○公告(公告終了後一ヶ月の据え置き)
 ○契約締結
 ○所有権の移転登記
 
二、境内地の転用
 境内地の転用については、原則として神社が自主的に経営する保育園・幼稚園、遊園
地等の事業であり、適正な規模でなければなりません。また、公共目的のために転用せ
ざるを得ない場合には、神社本来の活動目的と合致する方法がとられねばなりません。
よって、公営の保育園や集会所などの施設を設置するようなことは、神社本来の目的に
反するものといえます。また公民館の設置も好ましくありません。理由は、公民館にお
いて”公葬”等葬儀を行う場合があり得るからです。
 また、第三者との間で転用を行う場合には、以後の問題が発生しないよう神社と借受
人との間で、厳重な「不動産貸借契約書」等を取り交わしておく必要があります。
△役員会で確認
 ○神社が事業を開始する場合、その事業の内容を検討。
 ○公共目的等の転用を行う場合、神社本来の活動目的との照合。
△役員会で決定
 ○具体的にどの部分をどう転用するのか。
 ○転用期間はどうするのか。
△手続き
(○神社規則の変更)
 ○神社本庁に申請・承認
 ○公告(公告終了後一ヶ月の据え置き)
 ○第三者との間で転用を行う場合「不動産貸借契約書」等を取り交わす。
 
三、境内建物の貸付
 ここで採り上げる貸付は、例えば展覧会・集会・競技会等の一時的なものとします。
 境内の建造物を公共の用に利用する場合は、例えばその集会等に、神社信仰と反する
要素があると考えられる場合には、許可してはなりません。また許可する場合において
は、その集会前に参加者全員或いは代表者の正式な参拝を行わしめることが必要でしょ
う。
△役員会等で確認
 ○神社信仰に反する要素はないか。
 ○神社の祭典等との兼ね合いはどうか。
△手続き
 ○利用の詳細を確認する。
 ○利用者の正式な参拝を行わせる。
 
四、境内林・社有林の処分
 境内林・社有林の造成及び育成については、格別の配慮が必要です。神地の樹木はす
べて神聖尊厳の要素として最も大切なものであり、原則として枯損木や危険木は別とし
て、その大小にかかわらず一木といえどもみだりに伐採処分してはなりません。もしも
建造物を設置する場合等にあたって樹木が障碍ショウガイとなる時は、建造物の設計変更を
考慮すべきです。また真にやむを得ない場合にあっても、必ず移植し、また伐採を余儀
なくされた後は補植をして、その育成を図るべきです。神社とは鎮守の”森”のことで
す。
△役員会で確認
 ○この樹木の処分は必要か(処分回避の方法はないか)。
 ○その樹木の状態はどうか。
△役員会で決定
 ○仮責任役員選任は必要か(本書「役員の任務」で確認)。
 ○その樹木の処分後の処置はどうするのか。
△手続き
 ○神社本庁に申請・承認
 ○公告(公告終了後一ヶ月の据え置き)
 ○契約締結(業者がいる場合)
 ○事実行為
 
※留意事項
 以上の一〜四に至る事柄については、いずれも”現状変更”の事項ですので、すべて
正規の手続きを経て、神社本庁統理の承認を得た上でなければ、これを執行してはなり
ません。
 代表役員宮司と事前によく相談して下さい。
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