[詳細探訪] 参考:小学館発行「万有百科大事典」 〈金比羅信仰コンピラシンコウ〉 金比羅信仰とは、通称「こんぴらさん」こと香川県仲多度郡琴平町に鎮座の金刀比羅 宮コトヒラグウ(旧国幣中社)を中心とした信仰形態である。本社の祭神は大物主神オオモノヌシノ カミと崇徳天皇で、氏子は一万五千戸、全国の信者は五百万人と云い、崇徳天皇を始め、 歴代の天皇の尊崇が篤かったと同時に、海上生活者が海運の安全と繁栄を祈って信仰し て来たものである。この神社は元、象頭ゾウズ山金比羅大権現と称し、本社にあった松尾 寺の守護神として祀られていた。金比羅とはサンスクリットのクンピーラkumbhiraの漢 訳とされており、インドのガンジス川に棲む鰐ワニを神格化した名称と云う。鰐神は薬師 十二神将の一つとされ、帝王乃至海の神として海上安全を司り、また雨乞いの神とされ たが、この神がわが国に垂迹スイジャクして金比羅大権現になったと云う。 明治初年の「神仏分離令」により、金比羅大権現を改称して大物主を祭神とする神社 となって、今日に至っている。 例祭は十月九日から十一日までに行われ、「おさがり」と呼ぶ神幸式ミユキシキが有名であ る。この祭りは本社から麓の行宮ユキミヤに神輿の渡御があり、数百人に及ぶ奉仕者の行列 があって盛大である。特に行列の中の上頭人カミトウニン(男)、次頭人ツギトウニン(女)と云う 二人の頭人が神へ奉仕する重要な役とされ、八月三十一日から十月十五日までの四十六 日間も潔斎を厳しく行い、これを祝舎イワイノヤ神事と云う。その他、流し樽、桜花祭、田植 神事、紅葉祭、讃岐風俗舞など古式豊かな神事芸能や特殊神事が伝えられ、宝物は数千 点に及ぶと云う。 本社は古くから瀬戸内海交通の要所にあり、海運業者や漁民の信仰が篤かったために、 多様な信仰要素を持つ神社として発展すると共に、海上を伝わって各地の海岸部村落に 勧請され、祭神となった例が多い。また、外来神、漂着神信仰の要素が招福、繁栄の機 能を備えているために、商人や農民の間にも広く流布され、江戸時代以降に金比羅参り は庶民信仰としても根強いものがあり、各地に金比羅講が組織されていて、代参による 参拝者が絶えない。