99 おわりに
 
 私共は、日常の生活において無意識のうちに、身近な産土様や神々と密接に関わり合
って暮らしています。
 例えば食前に、朗らかに「いただきます」と言います。
 この言葉は、次のこと、即ちそれぞれの精霊を対象に発していることを、暗黙のうち
に認識し合っているのです。
@食べ物の生成を掌ツカサドって呉れた太陽を始めとする自然界
A食べ物の生産に携タズサわって呉れた農林漁業や食品加工業の方々
B食べ物を料理して呉れた方々
C今現在、自分に食事の機会を提供して呉れた方々
D今現在、自分がこの食事を摂ることが出来るようにして呉れた方々、等々
 
 美味しく食べ終わると、今度は幸福感も顕アラワに、「ごちそうさまでした」とお礼を言
います。
 そうしますと、それにうなずいた精霊はにっこり微笑んで、「おそまつさまでした」
と、今度は神霊に成り変わってと応えて呉れます。
 このことは、それぞれに(産土様や神々の)神霊が宿っていることを、自然な形で感
じ取り得る観念を持ち合わせているから理解出来ることなのです。
 
 即ち、毎日の食事の度ごとに交わされる、「いただきます」「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでした」の会話は、実は自分と神々との対話なのです。
 このような想いは、わが国民の持つ通常かつ普遍的な道徳観そのものであり、欧米人
にとっては考えらないことかも知れません。
 本稿は、主として堀書店発行「神道辞典」、[詳細探訪]は小学館発行「万有百科大
事典」を参考にさせていただきました。
 ご祭神の説明につきましては、別掲「60神様の恩頼」、「61神様の戸籍調べ」の項を
ご覧下さい。                              SYSOP
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