七日 〈伝統行事 − 七草〉
 この日は山菜や野菜などの七草のお雑煮餅を作り、神前に供えて拝礼し、みんなで戴
きます。
 
七日頃 〈伝統行事 − ポポー(ポーポとも)〉
 この日又は八日、二十日(二十日正月)の朝に行われます。ポポーカラとは、軽く打
った稲藁ワラを一握り結わえ、門松の松葉・昆布・煮干しダシイワシを挟み込み、乳(藁二三
本を捻って乳の形にしたもの)を十二個(閏年は十三個)を取り付け、更に丸餅を括り
付けたものです。男達がそのポポーカラ二三本と丸餅を携えて外に出て、声高々と「ポ
ポー」「ポポー」と叫びます。するとどこからともなく烏カラスが集まって来て、空高く丸
餅をちぎって投げると、烏がよく食べます。
 烏がこの餅を食べると、その年は豊作とも云われています。終わって帰宅すると、ポ
ポーカラは近くの木の枝に取り掛け、その小枝を数本もぎ取って来て、囲炉裏に燃やし
て手足を暖めます。この火にあたると一年中蛇に噛まれない、と言って男達は皆この火
にあたります。
 山の神は女神とも云い、烏は山の神様の使者であると神聖視されているので、烏に新
穀の餅を与えてもてなすものであると考えられています。
 
十一日 〈伝統行事 − 若木迎え〉
 大里部落では、小正月(十五日、女の正月とも)の繭玉マユダマに使用する柳・水木ミズキ
の若枝や竹などを採りに行きます。
 この日には農耕の準備として馬の腹帯や胸当て、田圃の代掻き用の縄などを作ります。
 
 〈伝統行事 − 土蔵クラ開き〉
 土蔵のある裕福な家では、その家の年男が土蔵の錠前を外して戸を開き、お餅とお神
酒を供えてその年の豊穣を祈願し、分家や親類縁者を招いて親睦の宴を張り賑わいます。
 
十四日 〈郷内行事 − 戸窓ふたぎ〉
 この日の夕方、鬼が家に入らないように魔除けを戸窓に付け、これを戸窓ふたぎと云
います。柳の枝に切り込みを入れ、松葉や昆布・煮干しを挟み、凍み豆腐を付けて、そ
れを家の全部の窓に刺します。入口だけは残しておいて、家族全員が家に入ってから最
後に入口の戸に刺して塞フサぎ、家内安全を祈ります。
 
十四日・十五日 〈郷内行事 − 小正月の年とり〉
 餅搗き・若水汲み・簡単な料理など、大正月に準じた行事です。農具・竈などの日常
道具に、道具ツカダの餅を供えて休ませます。牛馬にも労いの餅を食べさせます。
 女正月には、女は髪を解かすことも針仕事も掃除もせず、男が代わりに料理を作り、
女にご馳走します。
 小正月には、雪崩に遭わないように小豆粥を神前供えて拝礼します。
 
十五日 〈伝統行事 − 小正月・繭玉マユタマ〉
 この日は小正月(女の正月とも)で、餅を搗いて神前に供えて拝礼し、ご馳走を戴き
ます。先に採って置いた若木の小枝に小間切れの餅を沢山付け、これを繭玉マユダマ(メェ
ダマとも)と云い、神棚の側や座敷(居間)の柱に括り付けます。これは養蚕のときの
白い玉「繭」にあやかったものであり、また女が専らする機織ハタオリとも関連して、繭の
豊産を祈るものとして、女の正月の行事となっています。繭玉は稲穂、粟穂を象ります。
 
 〈郷内行事 − メェダマ〉
 柳の枝に小さい餅を鈴なりに沢山付けたものを三本か五本作ったり、小さい餅を稲藁
に花のように数多く付けるなど、地区によって異なります。また握り飯を平年は十二個、
閏年は十三個作って藁苞ワラツトに入れて包み、中柱に結え付ける処や、トリキシバ(クロ
モジとも)の枝に寒天・羊羹ヨウカン・豆腐・蒲鉾を付けて飾る処もあります。
 
 〈郷内行事 − 稲穂イナボ・粟穂アワボ・豆穂アメボ〉
 餅を稲藁に刺して、稲穂などのの実った姿に見立てる行事です。
 稲穂・粟穂・豆穂の作り方や本数は、地区によって多少異なります。
 稲穂は一本の藁ワラに小さな餅を五つ付け、五本一束にして五束を作ったり、藁を十本
束ねたものを二束作る地区、藁七本で作る処などがあります。
 粟穂は稲穂と一緒に神棚に飾るもので、柳など細長い若枝の先に粟餅を一つ付け、平
年は十二本、閏年は十三本作ります。柳のほか林檎や水木の枝で作る処もあり、枝がよ
く垂れ下がると豊作になると云われます。また菱形の餅を付ける処もあります。
 豆穂は稲穂・粟穂と同じように豆の豊作を願うためのもので、柳の枝に豆のように餅
を付けて作りますが、作らない処もあります。
 
 〈伝統行事 − 庭田植え〉
 この日の夕食前、外に出て田植え行事をします。一二坪の雪上に、麻を作ると言って
萱(前に刈ってある萱)を二三本ずつ挿し、その手前に豆を作ると言って豆殻マメカラを二
三本ずつ挿し、その手前に稲を作ると言って藁ワラを二三本ずつ挿します。これは五穀の
豊作を祈る行事です。
 庭田植えの雪田に大根・人参・お神酒を供えて拝礼し、田植えが終わると鏡餅を汁餅
(雑煮)にして戴きます。
 
 〈伝統行事 − 橇遊び〉
 この日は大里や松舘部落では、青少年が幅二三米、長さ数十米の雪坂を夜通しかけて
作り、水を撒いて凍結させます。翌朝にそれぞれ桟俵サンダワラや橇などを持ち寄り、橇乗
りして遊びます。大人も集まり、村中挙っての寒中の楽しみです。
 松舘では上坂カミサカに作ったので、坂の下にある商店や家屋、県道の交通などにご迷惑
をかけました。
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