25 神木を詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△榊
神樹サカキにも手は触フルといふをうつたへに 妻といへば触ぬものかも(萬葉集 四相聞)
 
神垣のみむろの山の榊葉は 神のみまへにしげりあひにけり(古今和歌集 二十大歌所)
 
霜八たびおけどかれせぬ榊葉の たち栄ゆべき神のきねかも(同)
 
榊葉にゆふしでかけてたが世にか 神の御前に祝ひそめけん(拾遺和歌集 十神楽)
 
榊葉の香をかぐはしみとめくれば 八十氏人ぞまとひせりける(同)
 
すゞか河ふりさけみれば神路山 さか木葉分て出る月影(続後撰和歌集 九神祇)
 
△杉
稲荷山尾上にたてるすぎすぎに ゆきかふ人のたえぬけふかな(源順集)
 
いちじるき山ぐちならばこゝながら 神のけしきを見せよとぞおもふ
いなりやまおほくのとしを越えにけり いのるしるしの杉をたのみて
                           (以上 蜻蛉日記 上之下)
 
おひしげれ平野の宮のあや杉よ こきむらさきの色重ぬべく(元輔集)
 
いなり山杉の青葉をかざしつゝ 帰るはしるき今日のもろ人
                         (新撰六帖 一春 藤原知家卿)
 
きさらぎやけふ初午のしるしとて 稲荷の杉はもとつ枝もなし(同 藤原光俊朝臣)
 
いなり山しるしの杉を尋ねきて あまねく人のかざすけふかな
                           (永久四年百首 春 顕仲)
 
いなり山しるしの杉を春がすみ たなびきつるゝけふにもあるかな(同 仲実)
 
いなりにも思ふ心のかなはずは しるしの杉のをられましやは(同 俊頼)
 
稲荷坂さかしくとまる心かな みな杉のはをふけるいほりに(同 忠房)
 
人しれずいなりの神にいのるらむ しるしのすぎとおもふばかりぞ
君をとはいなりの神にいのらねば しるしの杉のうれしげもなし
                          (以上 散木葉歌集 六神祇)
 
ときはなるひら野の宮の杉村は 君がよはひのしるしとぞみる
                            (夫木和歌抄 二十九杉)
 
石上イソノカミふるの山なる杉村の 思ひすぐべき君にあらなくに(萬葉集 三挽歌)
 
石上ふるの神杉カミスギ神カミさびて われやさらさら恋にあひにける(同 十春相聞)
 
石上ふるの噛神杉神さびて 恋をも我はさらにするかも(同 十一)
 
しぐれのみふるの神杉ふりぬれど いかにせよとか色のつれなき(金槐和歌集)
 
いくとせのかげとか神もちぎるらん ふるのやしろの杉の下風
                     (夫木和歌抄 三十四神祇 順徳院御製)
 
味酒ウマサケを三輪の祝ハフリがいはふ杉 手触れし罪か君にあひがたき(萬葉集 四相聞)
 
み幣帛ヌサ取り神ミワの祝ハフリが斎ふ杉原 たきぎこりほとほとしくに手斧テョノは取られぬ
                                 (同 七雑歌)
 
神カミなびの神より板にする杉の おもひも過ぎず恋のしげきに(同 九相聞)
 
はふり子がかみより板にひく杉の くれ行からにしげき恋哉(続後拾遺和歌集 十三恋)
 
神カムなびのみもろの山にいはふ杉 思ひ過ぎめや蘿コケのむすまで(萬葉集 十三雑歌)
 
我庵はみわの山もと恋しくば とぶらひきませ杉たてるかど
                       (古今和歌集 十八雑 読人しらず)
 
わがいほはみわの山もとこひしくば とぶらひきませすぎたてるかど(奧儀抄中之下)
 
わがいほは三輪の山もと恋しくば とぶらひきませ杉たてる門(八雲御抄 四言語)
 
わが庵は三輪の山もとこひしくば とぶらひきませすぎたてるかど
三輪の山しるしの杉はうせずとも たれかは人のわれを尋ねん
すぎもなきやまべをゆきて尋れば そでのみあやなつゆにぬれつゝ
                              (以上 袖中抄 九)
 
恋しくばともらひきませ千はやぶる みわの山もと杉たてるかど
三輪の山いかに待みんとしふとも たづぬる人もあらじとおもへば
我宿のまつはしるしもなかりけり 杉むらならばたづねきなまし
                            (以上 俊頼口伝集 上)
 
三輪の山しるしの杉は有ながら をしへし人はなくて幾世ぞ(元輔集)
 
忘れずば尋ねもしてんみわの山 しるしに植し杉はなくとも(古今和歌六帖 六木)
 
杉の門又すぎがてにたづねきて かはらぬいろをみわの山本(菅笠日記 下)
 
跡たるゝ神世をとへば大ひえや をひえの杉にかゝるしら雲
                      (新拾遺和歌集 十六神祇 法印成運)
 
大ひえやいのるしるしを三輪の山 かげおしわたる杉のこずゑに
                      (夫木和歌抄 三十四神祇 法印定為)
 
あまくだる日よしの神のしるしとや をひえのすぎのこだかかるらん(同 通基卿)
 
けふといへば春のしるしのをみやがはの 岸の杉むら色かはるなり
                          (同 二十九杉 後京極摂政)
 
神ぢ山たまがきごしにみわたせば 杉間にたかきちぎのかたそぎ
                          (同 三十四神祇 僧正行意)
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