10 お祭りを詠める和歌
 
                       参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
 
△祈年祭
祈てふ年の緒ながき君が代を 三ちゞあまりの神やうくらん
                           (年中行事歌合 秀長朝臣)
 
△祈年穀奉幣
祈してたのもしげなるはつ稲や 神のめぐみの秋をなすらん
                        (年中行事歌合 大蔵卿坊城長綱)
 
△月次祭
夏のくれ年のをはりの月毎に 報賽カヘリマヲシの神の幣帛ミテグラ(年中行事歌合 宗明朝臣)
 
更ぬとて今ぞそなふる坂まくら 神もぬる夜の時や知らん(同 入道大納言)
 
△新嘗祭
契りあれや神のすごもを打はえて にひなめまつるむかしおもへば
                             (倭訓栞 前編二十爾)
 
あまてらすとよのあかりとおもへども(かうじゞう)
 日かげもみえずくもるけふかな(栄花物語 三十二根合 源少将)
 
いぬる秋納しいなほ手向るぞ 年豊なるはじめなりける(年中行事歌合 頓乗)
 
あしわけのさはるをぶねに紅の ふかき心をよするとをしれ
あしわけて心よせける小舟とも 紅ふかき色にてぞしる
                   (安齋随筆 前編九(建礼門院右京大夫集))
 
かみよゝりすれるころもといひながら またかさねてもめづらしきかな
                              (栄花物語 八初花)
 
天地とあひさかえんと大宮を つかへまつれば貴くうれしき(萬葉集 十九)
 
天アメにはも五百イホつつなはふ万代ヨロヅヨに 国しらさむと五百イホつつなはふ(同)
 
天地と久しきまでに万代に つかへまつらむ黒酒クロキ白酒シロキを(同)
 
島山シマヤマに照れる橘タチバナうづにさし つかへまつるは卿大夫等マヘツギミタチ(同)
 
袖垂れていざわが苑ソノに鴬の こづたひちらす梅の花見に(同)
 
あしびきのやました日影ヒカゲかづらける うへにやさらに梅をしぬれば(同)
 
天つ風くもの通ひぢふきとぢよ をとめの姿しばしとゞめむ
                    (古今和歌集 十七雑 よしみねの宗さだ)
 
くやしくぞあまつをとめと成にける 雲ぢたづぬる人もなき世に
                    (後撰和歌集 十五雑 藤原滋包がむすめ)
 
日かげにはなき名たちけりせみ衣 きてみよとこそいふべかりけれ
                         (金葉和歌集 九雑 源光綱母)
 
たち出る乙女の姿あらはれて 月にたどらぬ雲のかよひぢ
                           (年中行事歌合 経賢僧都)
 
新嘗や昨日のはつほ納置て 今日御酒給ふ雲のうへ人(同 薀堅)
 
日影さす雲の上人こざりせば とよの明りをいかでしらまし(続古事談 一王道)
 
もゝしきにさふるをとめの袖のいろも きみしそめねばいかゞとぞみる
                              (空穂物語 菊の宴)
 
ひとしほもそむべきものかむらさきの 雲よりふれるをとめなりとも(同)
 
いろふかくすれる衣をきる時は みぬ人さへもおもほゆるかな(同)
 
あだ人のさはにつみつゝすれる色に なにゝあやなくおもひいづらむ(同)
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