27a ユダヤ教
【ラビのユダヤ教】
ラビとは律法学者のことで,「ラビのユダヤ教」とは,各地域に離散して住むユダヤ
人を純粋なヤハウェ信仰によって結合された,厳密な意味で"ユダヤ教"と呼ぶ民族・信
仰集団,つまり古代イスラエルの信仰の継承者によるユダヤ教のことを云います。
〈正典聖書〉
ユダヤ人は"聖書の民族",ユダヤ教は"聖書の宗教"と云われています。これは,聖書
がユダヤ教の正典(カノン)であると同時に,ユダヤ人共同体の生き方の基準(カノン)であ
ることを意味しています。
聖書は元来1冊の書物ではなく,複数の書物の集成です。律法(トーラー)5書,預
言者(ネヴィイーム)8書,諸書(ケトゥヴィーム)11書からなります。律法には,創
世記・出エジプト記・レビ記・民数記・申命記,預言者にはヨシュア記・士師記など,
諸書には詩や歴史などがそれぞれ記されています。
〈口伝律法〉
西暦紀元前400年頃集大成された「律法」(モーセ五書)は,最早一文字の加筆も削除
も許されない,絶対変更不可能な成文化された律法として成立しました。そこで,"成文
律法"の成立と同時に,律法の"解釈"という作業が必要になりました。
固定された律法によって流動する現実を律するための唯一の手段として,成文律法の
"解釈"を無限に続けるという方法が採られ,現実の状況と適合するよう解釈された規定
や教えを"口伝律法"と呼んでいます。
「モーセはシナイから(口伝)律法を受け,それをヨシュアに伝えた。ヨシュアは長
老たちに,長老たちは預言者たちに,預言者たちはそれを大シナゴク(シナゴクとはユ
ダヤ教の教会堂のことですが,この場合は律法学者をいう。)の人々に伝えた」。
〈典礼とユダヤ暦〉
日に三度,朝,昼,晩に祈祷を捧げる義務は,タルムード時代までに確立したいまし
た。この祈祷は,"祈祷の中の第一の祈祷","立祷",或いは"十八の祈祷"などと呼ばれ
ます。
十九の「祈祷」は,父祖の神の全能と聖名を賛美する三つの祈りによって始まり,神
の憐れみに対する感謝と平和を願う二つの祈りで終わります。この間に挟まれた十四の
祈りにおいては,知恵,律法トーラー,罪の許し,贖い,病気の治療,地の産物に対する祝
福,離散民の集合,正義の支配の確立,敵の滅亡,正しい人,敬虔な人,改宗者に対す
る神の恵み,エルサレムの再建,ダビデの王国の再興,祈祷の受け入れられること,そ
れに神殿祭儀の復活と神のツィオン(エルサレム)帰還が祈祷されます。
例えば第一祷
主よ 汝はほめらるべし
我らの神 我らの父祖の神
アブラハムの神 イッハクの神 ヤコブの神
偉大にして強く恐るべき神
いと高き神 恵み深き者 すべての創造者
父祖の愛を覚え 彼らの子孫に贖い主をつかわす者
王 救助者 楯
主よ アブラハムの楯よ
汝はほめらるべし
ユダヤ教の戒律を守るために,ユダヤ暦は基本的な重要性を持っています。ユダヤ暦
は12カ月の太陰暦であり,1年が太陽暦より約10日短いので,19年間に7回閏月を挿入
して調節します。
[主要な祭日]
新年祭 ティシュレ月1日(9月か10月) 神の世界創造を記念し,同時に最後の審
判を思う。角笛を吹奏し,10日間の懺悔を始める。
贖罪日 ティシュレ月10日(9月か10月) 去年1年間に犯した罪を懺悔して,神の
許しを乞う。断食して"すべての誓い"の祈祷で始まる礼拝により,主のみを神とすると
誓った先祖の誓いを思い起こす。
仮庵カリイオ祭 ティシュレ月15〜21日(9月か10月) 屋根を草木で葺いた仮小舎を建
て,秋の収穫を天井から下げる。エジプト脱出40年間荒野を放浪した先祖を思い,3度
の食事を仮小舎の中で摂る
律法の歓喜祭 ティシュレ月22日(9月か10月) 一年かかった「律法」の読了と新
しい朗読開始を祝う。
宮潔め祭 キスレヴ月25日〜テヴェト月2日(11月か12月) 紀元前164年に,マカビ
のイェフダがエルサレム神殿を異教徒から奪回して宮潔めを行った記念。
プリム祭 アダル月14日(2月か3月) ペルシアの高官ハマンの悪計を挫いて,エ
ステルがユダヤ人を救ったという伝承の記念。
過越祭(ペサハ) ニサン月15〜21日(3月〜4月) パロの奴隷であった祖先が,
モーセに率いられてエジプトから脱出した事件の記念。特に14日の晩餐は"式次第"と名
付けられ,"エジプト脱出の物語"を朗読する。
七週祭 スィヴァン月6日(5月か6月) シナイ山でモーセに十誡が授けられたこ
との記念。
アヴ月九日祭 アヴ月9日(7月か8月) 第一神殿と第二神殿の破壊を嘆き,断食
して「哀歌」を朗読する。
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