03 わが国の神話「天地創成」
 
  [高天原の神]
 
                     参考:(株)ぎょうせい「日本の神話」
                     ※神名は「神典(古事記)」に拠る。
 
〈天地アメツチの初め〉
 
 遥かに遠い昔、この世界の始まりのとき、天と地が未だ混沌コントンとして混じり合い、
その見分けが付かなかった頃のことです。
 天上の世界である高天原タカマノハラと云う処に、三柱ミハシラの神が次々と現れました。
 初めに現われたのは、天之御中主神アメノミナカヌシノカミと云います。この神の名は、天の中心
にあって、この宇宙を統一し宰ツカサドる神、と云う意味です。
 次に現れたのは、高御産巣日神タカミムスビノカミと云います。この神の名は、この宇宙の、
万物の生成を宰ツカサドる神、と云う意味です。
 次に現れたのは、神産巣日神カミムスビノカミと云います。この神も、矢張りこの宇宙の万物
の生成を宰ツカサドる神です。
 これらの三柱の神は、みな配偶者を持たない独り身として現れ、その姿を隠して見せ
ることがありませんでした。
 
 それから暫く経って、天と地が漸く分かれるようになりました。しかし、この地上で
は未だ、水の上に脂アブラを浮かべたようで、恰も、海月クラゲが水中を流れ漂っているよ
うな有様でした。
 そんな混沌とした地上の泥の中から、葦の草が一斉に芽を吹き出して来るような勢い
で、次々に現れた二柱の神がありました。
 初めに現れたのは、宇麻志阿斯訶備比古遅神ウマシアシカビヒコヂノカミと云います。この神の名
は、葦の芽のような生命力を持った立派な神と云う意味です。
 次に現れたのは、天之常立神アメノトコタチノカミです。この神の名は、天上の世界が永遠に栄
えるように留まっている神、と云う意味です。
 この二柱の神も、独り身として現れ、その姿を隠して見せることがありませんでした。
 
  以上に挙げたこれらの五柱の神は、地上のとは別であって、天の神です。
 
 これらの天の神に対して、この地上からも次々と神々が現れました。
 まず現れたのは、国常立神クニノトコタチノカミと云います。この神の名は、この地上の国が永
遠に栄えるように留まっている神、と云う意味です。
 次に現れたのは、豊雲野神トヨクモヌノカミと云います。この神の名は、天と地の間に雲のよ
うに漂っているこの地上が、次第に固まって来て、広い原野になって行く、と云う意味
です。
 この二柱の神も、独り身として現れ、その姿を隠して見せることはありませんでした。
 次に現れたのは、宇比地邇神ウヒヂニノカミと云う男神と、須比智邇神スヒヂニノカミと云う女神
です。この二柱の神の名は、それぞれに泥と砂のことを現しており、始めは雲のように
漂っていたこの地上も、漸く固まって来たこくを意味しています。
 次に、角杙神ツヌグヒノカミと云う男神と、活杙神イクグヒノカミと云う女神があらわれました。
この神の名は、それぞれに角ツノと杙クイのことを現しており、この地上の泥や砂の中から、
角や杙のように万物の生命が生まれ出たことを意味しています。
 
 次に、意富斗能地神オホトノヂノカミと云う男神と、大斗之弁神オホトノベノカミと云う女神が現れ
ました。この神の名は、それぞれに、万物の生命がこの地上に住めるようになったこと
を意味しています。
 次に、淤母陀琉神オモダルノカミと云う男神と、阿夜訶志古泥神アヤカシコネノカミと云う女神が現れ
ました。この神の名は、それぞれに、その地上に住めるようになった万物の生命の、驚
きや喜びを意味しています。
 最後に現れたのは、伊邪那岐神イザナギノカミと云う男神と、伊邪那美神イザナミノカミと云う女
神です。この神の名は、男の生命と女の生命が、お互いに誘い合って現れたと云う意味
です。
 
  以上述べた、国常立神から伊邪那美神に至るまでを、「神代カミヨ七代ナナヨ」と云いま
す。その訳は、初めの二柱の神は、独り身として現れ、その後の神々は、男神と女神が
並んで現れたからです。即ち、男神と女神を合わせて一代と数えるので、七代となるの
です。
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