松館の料理 matsudatenoryouri H23.10.22

 

一、鹿角の料理

 鹿角には、この地方独特の様々な料理が伝わっています。

 この中で、昔から松館地区で食べられている料理、又は昔、松館地区で食べたことがある料理をご紹介します。

 

01 味噌付けタンポ

 タンポに、砂糖味噌(又は、ただの味噌)を塗って、炭火で焼く。

 

02 キリタンポ鍋

− 作り方のポイント −

@鶏がらスープに鶏肉(地鶏がよい)を入れ、煮えたらキノコ・ゴボウ・糸コンニャクを入れて調味する。

A次にきりたんぽ・ネギを入れてサッと煮立て、最後にセリを入れる。

− 注意すること −

@調味は好みの味付けに、また食塩を一つまみ入れるのもコツ。

Aネギとセリは煮すぎないこと。

Bゴボウは、きりんぽ鍋を一段と美味しく引き立たせるので、必ず入れること。

− 食材の準備 −

鶏がら − よく洗って、12時間煮る。アクは、ていねいに取る。

鶏肉 − 地鶏がよく、一人分1015gが目安、あまり煮すぎないこと。

糸コンニャク − 5pほどに切る。

キノコ − マイタケとかシメジなど、手でさく。

ゴボウ − ささがきにして水に浸けるが、浸け過ぎないこと。

きりたんぽ − 程良く焼き色の付いたたんぽを、5pほどに手でちぎったり、又は包丁で斜めに切る。

ネギ − 白い長ネギを斜めに5pほどに切る。

セリ − 全草を5p程に切って最後に入れる。

 

03 けいらん(鶏卵)

ア、前日に(生地の作り方のいろいろ)、

 @糯米(もちごめ)を研ぎ、お日様に干して臼で挽く。次の日、それに少しずつ熱湯を入れ、箸で掻き混ぜながら練って、耳たぶ位の固さの生地を作る。

 A糯米粉と片栗粉少々をよく篩(ふるい)に掛け、熱い湯を入れてこね、丸く棒状に伸ばして生地を作る。

 B白玉粉をこねて生地を作る。

 C糯米と粳米(うるごめ)とで生地を作る。

イ、小豆を煮てザラメ又は黒砂糖、塩少々を入れ、よく練ってこしあんを作る。

ウ、こしあんにクルミ・胡椒を入れ、鶏卵の黄身位の大きさに丸めてあん玉を作る(古い作り方は、黒砂糖の塊にクルミを入れて丸める)。

エ、あん玉を生地(皮)でくるんで鶏卵の形にし、熱湯で硬めに茹で、冷水に取る。鶏卵の形は、片方の先が少し尖るようにすると、形がよい。

オ、出汁のいろいろ。

 @大正時代は干椎茸か銀茸(後にマイタケ)に、薄い醤油味の出汁。

 A昆布、干椎茸(又は干しトビダケ)に、塩と醤油の出汁。

 B昆布で出汁を取り、塩・酒・薄口醤油で調味する。

カ、夏場は具にソウメンも入れる(冬場は入れない)。

キ、朱か黒塗りのお椀にけいらんを二個並べ、ソウメン少々、茸(マイタケ・銀茸・椎茸など)を入れ、色どりにミツバを結ぶか、サンショウの葉又は葉ミョウガの千切り、若しくは春にはミョウガだけを刻んで載せ、熱々の出汁を張る。

 

04 オチャワン(おぢゃわん・お茶碗)

 祝儀・不祝儀用に出す。祝儀用にはサメを入れる人が多い。春雨・舞茸・花麩・筍・ホウレンソウなどを使い、薄い塩味(鶏だし、又は煮干だし)にする。

 

05 粥(きゃ)の汁・ケェの汁(別掲参照)

 旧正月十六日から二十日頃に食べる。

ア、塩蔵の山菜・茸を水に二三日晒す(気出し)。

イ、大根の皮をむいて賽(さい)の目に切る。大根の臭いを取るために三日ほど水に晒す。

ウ、具は、フキ・サシドリ(イタドリ)・ミズ(ウワバミソウ)・アイコ(イラクサ)・ウド・ウルイ(ギボウシ)・ワラビ・ゼンマイ・茸(サワモダシなどいろいろ)・ダイコン・ニンジン・ゴボウ・ササゲ・ササゲ豆・焼き豆腐・コンニャク・油揚・凍豆腐・昆布・甘酒など適宜。

エ、これらの具を細かく刻んで、大鍋に入れて煮る。

オ、煮立ったら味噌を入れて、また煮る。

カ、食べるときは、小鍋に取って、温めて食べる。

キ、具の数は奇数にすると云う。

ク、具は多いほど美味しいが、ナメコの茸は合わない。

 具材:ささげ豆・油揚げ豆腐・凍み豆腐・こんにゃく・昆布・人参・ごぼう・大根・ぜんまい・わらび・ふき・あかきのこ・ほうきたけ・椎茸。1pの賽(さい)の目切り、薄味仕立て。煮込んだ翌日から、小分けにして温めていただく。

 

06 納豆汁(43と重複)

− 作り方のポイント −

@サメを最初に煮る。煮えにくい物から鍋に入れる。

 サメの代わりに煮干でも良い。

A各食材はほぼ同量とするが、ナットウだけは23倍とする。

B各食材の大きさは同じとし、賽(さい)の目切りにする。

C塩蔵してある食材を用いるときは、あらかじめ塩出ししておく。

Dミソ(田舎味噌)は最後に入れる。

− 食材の準備 −

なっとう − なっとう汁で一度煮てから、すり鉢でする。

サメ − 皮を取り去って切り、最初に鍋に入れる。

キノコ・山菜 − サワモダシ(ナラタケ)やワラビは、水煮か塩出ししておく。山ウドも美味しい。

ニンジン・ジャガイモ・トウフ・油アゲなども準備する。

タカナ − 塩蔵タカナを一旦茹でて、みじん切りにしておき、なっとう汁をお椀に盛ったら、薬味として一つまみ入れる。

− 作り置きしておくとよい −

 

07 松館しぼり大根を入れた料理

すり下ろし汁の作り方

 「松館しぼり大根」は秋、降雪前に収穫し、凍ったり、乾燥しない場所に保管しておきます。

 この「大根」は密で固く、小さくて重量感のある大根です。そのすり下ろし汁は、普通の大根下ろしに比べ、あくまでも辛く、そして奥深い香りと味わいがあります。

 一般の家庭では、表皮の汚れをよく洗い落とし、皮付きのまますり下ろし、「辛みの薬味」としてご利用下さい。

 また、小さい塊に切って、そのまま味噌とか醤油などを付けて、囓って食べるのも乙なものです。

 ここ松館では、その「たれ(液)」のみ利用します。即ち、大根下ろし器ですり下ろして布で漉し、そのたれ(乳濁液)のみを薬味とするのです。適量の醤油などで味付けし、ガラス容器に入れて冷蔵しておき、必要により「薬味たれ」として利用します。

 

08 でんぶ(きんぴらごぼう風)

ア、大根・ごぼう・にんじんを拍子木切りにし、煮干・しょうゆ・ザラメで味付けする。

イ、アルミ鍋に材料を入れて、強火で炒め、焦がさないこと。

ウ、好みにより、するめ・唐辛子などを入れ、また食用油を少し入れることもある。

エ、煮干は、はらわたをとる。

オ、大根がしんなりすれば、出来上がり。

 

09 ナンコカヤキ(馬肉貝焼き)

 鉱山の鉱夫たちは、毒下しの効があり、力がつき体が暖まるといって食べた。盆の十三日、尾去沢(鹿角市尾去沢)の円通寺の境内では大直利(おおなおり)大太鼓の人たちがこのカヤキ(貝焼き、鍋物のこと SYSOP)を墓参の人たちに振舞う。馬肉にコンニャク入りであるが、中には豆腐・ネギなどを入れる人もある。また鉱山では馬サシ、馬肉の味噌煮、馬肉のウチ(内蔵)煮なども食べた。

 

10 カヤキ(貝焼き)

 貝焼きとは、大きい帆立の貝殻で焼く(煮る)料理のこととされる。

 主食材は、

@旬のもの

A珍しいものとか、いただきもの

B特別なものとか、縁りのあるもの

などで、副食材はありあわせのものである。

 大きな鍋をヒビド(囲炉裏)に架けて煮る。

 家族全員とか、仲間同士とかで貝焼きをいただくことで、一同の絆が深まるのである。

 茄子貝焼き、ドジョウ貝焼き、ツブ(タニシ)貝焼き、キジ(雉)貝焼きなどなど、また豆腐貝焼き、寒干し大根貝焼きなど何でもござれ、である。

 

11 ニシ貝焼き(身欠きニシン貝焼き)・ヒロコ貝焼き

 昔は、身欠きニシンは低価格で美味しい食材であったので、数多くの料理に用いられた。

 特に春(早春から初夏にかけて)はヒロコの旬なので、ヒロコとニシの貝焼きは普通に作られた。味噌仕立てであったと記憶している。

 

12 タカナ貝焼き

 冬期間の漬物として、どこの家庭でも沢山のタカナが塩蔵された。

 その塩蔵タカナと、旬のタラの白子の貝焼きは、とても乙なものであった。

 

13 八杯豆腐(豆腐料理)

 うまくて八杯も食べられるということから、この名がある。精進料理に使ったり、来客時に出す。グジニ豆腐と共に江戸期からの食べ物でもあった。 

ア、昆布だしに醤油、水とき片栗粉を入れる。

イ、千六本切りの豆腐をお椀に入れ、汁を盛り、すりおろしたとろろを入れる。

ウ、吸い口に、もみ海苔・刻みねぎを添える。

 

14 除夜豆腐

ア、豆腐は千六本に切って、水に晒す。

イ、すりおろしたとろろに醤油味をつける。

ウ、水とき片栗粉を入れたお湯を煮立て、網杓子で豆腐をすくって入れる。

エ、豆腐が浮き上がったら、そーっとお椀に盛る。

オ、とろろと松館しぼり大根をかけて、いただく。

 

15 トロロかけ豆腐汁

ア、豆腐は、長さ数cmで細めの拍子木(千六本)切りにする。

イ、出汁は醤油仕立てで、ひと煮立ちしたら、お椀に盛り、トロロを掛ける。

ウ、トロロには普通はナガイモを用いるが、ゴツゴツして丸いジャガイモ風のヤマトイモの方が美味しい。

エ、好みにより、松館しぼり大根をも掛ける。

オ、また、出汁にカタクリ粉でとろみをつけることもある。

 

16 ぐじに

ア、豆腐を厚さ1センチ、一辺7センチ程度の三角形に切る。

イ、それを湯煮して、二片をお椀に盛る。

ウ、からし味噌(又は醤油)・山椒味噌などをつけて、いただく。

 

17 寄せ豆腐

ア、柔らかい豆腐(絹ごし豆腐風)を大鉢又は手桶に特別に作る。

イ、それをお玉ですくって、醤油だしの鍋に入れ、一煮立ちさせる。

ウ、すぐにお椀に盛って、辛子(洋辛子)を上に載せ、熱いうちにいただく。洋辛子は、あらかじめ、よく練っておくとよい。

 

18 油揚げ

ア、小油揚げを半分に切って湯で煮た後、ザラメ・醤油・酢で煮る。

イ、油揚げに、挽肉(又は鶏肉)と、ゴボウ・ニンジンのささ切りを詰め、爪楊枝で止める。

ウ、鍋で、ザラメ・みりん・醤油などと共に煮る。

 

19 冬至カボチャ(粥)

 モチ米入りの小豆カボチャである。冬至にこれを食べると風邪を引かない、ヒビも切れない、腰も病まない、中気にもならない、長生きするといった。カボチャはこの頃までがおいしく、また冬至過ぎは寒さに弱く腐りやすくなって来るため、正月を越すなともいわれた。。

 

20 大根ナマス(切りナマス)とおろしナマス

 ナマスとは大根、ニンジンの酢のものをさす。大正月、小正月、祝儀などに作った。一般に花輪では小正月に干柿入りの大根おろしナマスを作る。

 

21 おろしナマス

ア、干し柿を酒と砂糖に浸ける。

イ、ダイコン・ニンジン・長イモを下ろし金でおろす。

ウ、茸(ナメコかサワモダシ・ムキダケなど)に出し醤油で味付けする。

エ、これらを三杯酢で和える。

 

22 糸カボチャ料理

 糸カボチャ、リンゴ、ミョウガ、キュウリ入りの酢の物で、ソウメンのようなカボチャは珍品である。糸カボチャは普通湯で煮てから使う。酒粕和えなどの和えもの、味噌汁、吸物、甘煮などに使い、味噌漬は生を用いる。

 

23 ヂブシ(トンブリ。地膚子・ギブシ)納豆和え

 トンブリはホウキ草の実。形が魚卵のようである。小皿に四種(ヂブシ、ミジン切りの納豆、クルミ、味噌漬大根)をとり、混ぜ合わせて食べる。ぶつぶつした歯ざわりが良く、味はほんのり土の香りがする。法事の食事時に、お重に入れて回したりする。

ア、通常、トンブリ(箒草の種子)は一旦茹でて市販されている。そのまま食べれる。

イ、醤油で味付けする。

ウ、具(合わせるもの)は、大根おろし・とろろ・卵・きざみ海苔・シソの実・味噌漬大根・胡桃・納豆などを好みにより混ぜる(味噌漬大根・胡桃・納豆などはみじん切り)。

エ、香辛料は、ワサビ・ショウガ・辛子など。

 

24 アケビの殻っこづけ

 盛岡藩主南部利剛(としひさ)が「鹿角あきび名産にて美味也と云」とほめているように、ほろ苦さが何ともいえずうまい、大人の味。あく抜きした殻に茗荷・ご飯・麹・紫蘇の実・山ぶどうを詰め塩漬けにする。アケビ殻を使うものではほかに袋詰、田楽、粕入れ、枝豆との和えもの、酢味噌炒めなどがある。(ここ鹿角の郷の「アケビ」は全て、「ミツバアケビ」です)

ア、アケビの実を取り去り、熱湯(又は米の研ぎ汁)でサッと茹でて、水に放してアクを抜く。あまり茹で過ぎない。アク抜きは一〜数日。

イ、殻の中に、次のような具を入れる。

 @シソの実・刻みミョウガ・ご飯

 Aこのほかに、麹・枝豆・山ブドウの砂糖漬など

ウ、具を入れたアケビ殻を敷き並べ、薄く塩をし、またアケビ殻をその上に敷き並べ、これを繰り返して、中蓋をして重石を掛ける。

エ、四、五日で食べ頃になる。

 

25 アケビ殻の料理 − スシ

ア、アケビの殻を米のとぎ汁で茹でて水洗いし、水気を切る。

イ、その中に、蒸した粳米・枝豆・シソの実・コハゼ(こはちけ)の黒い実少々を詰め合わせる。

ウ、酢・味醂・砂糖と塩で漬ける。

エ、三日位から食べる。

 

26 アケビ殻の料理 − 田楽

ア、アケビの殻に味噌かネギ味噌、油味噌、砂糖味噌(味醂も入れる)などを入れる。

イ、炭火で焼き、又はフライパンで炒めて食べる。

 

27 アケビ殻の料理 − 酒粕入れ

 茹でてアク抜きしたアケビの殻に、酒粕(砂糖を入れることもある)を詰めて漬け込む。丸ごと食べる。

 

28 アケビ殻の料理 − アケビ殻と枝豆の和え物

ア、茹でたアケビ殻を水に一日晒す。

イ、茹でた枝豆をすり鉢でする。

ウ、アケビ殻を細く切る(幅二センチ〜千切り、長さ三センチ位)。

エ、これらと味噌、又は塩で和える。

 

29 切り漬・ナタ漬

 材料は大根、大豆、麹、塩。包丁よりナタ切りの方が大根の表面がざらざらして味がしみ、おいしい。冬の食べ物で、スガマ(氷のこと)が張ったその中から取出す。鹿角ではうまい漬物の筆頭にあげる人が多い。

 

30 大根のナンバン漬と紫蘇巻大根

 大根は長四角に切り、塩・醤油漬にしたものである。ナンバンの辛さと大根の歯切れの良さが微妙にマッチしている。酒飲みにもってこいで、鹿角らしさを感じさせる漬物である。

 

31 粥(きゃ)っこづけ

 粥っこづけは、お粥、煮た黒豆や季節の野菜、ミカンの缶詰などを入れ三杯酢で味をつける。年始回りに来た時や田植時に食べ、作った時は近所にも振舞うものだった。

ア、粳米をお粥に炊いて、三杯酢を混ぜる。

イ、具は、短冊切りのダイコンやニンジンの浅塩もみ、柔らかく煮た黒豆、それに砂糖・塩・隠し味の醤油を少々。

ウ、これらを混ぜて、塩もみか湯をくぐらしたセリを細かく切って入れる。

オ、糯米も加えることがある。また季節の野菜(カブ・キュウリ・枝豆など)を入れることもある。

 

32 リンゴの塩漬

 生食に適さず色がつかないリンゴの中から傷のないものを選び、塩漬にする。色も形も素朴で、甘酸っぱさの中にリンゴの匂いが残っていて、かつてはどこの家でも不思議に人気のある食べ物であった。

 

33 小豆餅クルミかけとクルミかけ汁餅(餅料理)

 正月、山の神様、来客時などに作り、農家では祝儀に必ず出した。餅・小豆・クルミ・スマシ汁・砂糖、どれをとっても晴れの材料で、餅を使った最高の料理として作った人の心が伝わる。

 

34 雑煮(ぞうに)

ア、出汁は、鮫の醤油味とする。

イ、大根・人参・ゴボウ・山菜(ワラビやゼンマイ)・凍豆腐・セリか青菜を入れる。

 

35 餡(あん)掛け餅

ア、ずんだ餅は、薄皮を取り除いた枝豆をすりつぶし、白砂糖・塩で調味する。

イ、胡桃餡(くるみあん)は、鬼胡桃を火に炙って割り、中の実をすりつぶし、白砂糖・塩(又は醤油・だし汁など)で調味する。

ウ、胡桃小豆餡は、お餅に小豆餡を掛け、更に胡桃餡を掛ける。

エ、すまし汁餅は、餅に胡桃小豆餡を掛け、それにすまし汁(煮干だし)を掛けて、いただく。

 

36 醤油餅(笹餅)

ア、糯米(もちごめ)の粉に少々の醤油を混ぜて練り、厚皮を作る。

イ、具として、細かく切った胡桃・黒砂糖(又は中ザラメ)を入れて包む。

ウ、それを蒸し揚げて、笹(又は茗荷など)の葉に載せて、いただく。

 

37 あられ

ア、お供え餅などを賽(さい)の目切りにして、天火で干す。

イ、鉄鍋でこんがり炒って、いただく。

 

38 コゴリ豆・豆シトギ(豆料理)

つぶしたもち米、炒った黒や黄の大豆、黒砂糖、水を火にかけ練って、板に伸ばして切って食べた。腹持ちが良くおいしい。重労働者や子供たちのおやつ、夜食などにした。

 

ア、糯米を一晩水に浸け、水を切って擂鉢でよくする。

イ、これを鍋に入れ、水を足して火にかけてよく掻き回す。

ウ、豆(黄大豆や黒大豆など)を炒って、熱いうちに鍋に入れる。

エ、糯米がだんだん白くなり、黒砂糖などを入れて、更によく掻き回す。

オ、固まってきたら、取り粉をしたまな板にとって、三、四センチの厚さに延ばし、適宜に切って、いただく。

 

39 豆料理 − 豆しとぎ

 ウルチ米と青大豆で作る。十二月八日の薬師様、九日の大黒様、十二日の山の神様の時や、おやつ・夜食用とした。囲炉裏の灰にいけて焼いて食べたが、青豆の微かな匂いと甘さが、ごわごわに焼けた米の香ばしさと混じってとてもうまい。

ア、半々の粳米・糯米、及び豆(黄大豆か青大豆)を一晩水に浸ける。

イ、これらの水を切って、塩少々を入れて女臼などで打ち砕く(粉にする)。

ウ、蜜柑大に丸めて、それを餅のように平たくする。

エ、熱灰(ほど)に入れて素焼きする(生でも食べれる)。

 

40 豆料理 − 黒豆煮

ア、黒豆を一晩水に浸け、水を切る。

イ、ザラメ・白砂糖・・塩少々・膨らし粉少々を加えて、気長にとろ火で煮る。

ウ、つやが出てきたら、美味しくいただく。

 

41 ずんだ餅

ア、茹でた枝豆の薄皮を取り除き、擂鉢でする。

イ、それに白砂糖・塩などで調味する。

ウ、お餅にかけて、いただく。

 

42 納豆料理 − 醤油の実(冬期間)

ア、手作り納豆に醤油(及び適宜の米麹)を加える。

イ、それを、甕に入れて醸成する(春頃までも)。

ウ、この納豆の実を、おひたし(春野菜や山菜など)にかけて、いただく。

 

43 納豆料理 − 納豆汁(06と重複)

ア、納豆・味噌を擂鉢でする。

イ、出し汁に、それを漉しながら入れて、熱くする(煮立てない)。

ウ、賽(さい)の目切りの茸(ワカエ・ムキ茸・サワモダシなど)や豆腐を加えて熱くする(煮立てない)。

エ、それをお椀に取り、塩抜きした塩蔵辛子菜を載せて、熱いうちにいただく。

オ、適宜甘酒やワラビなども入れる。

 

44 納豆料理 − 納豆なます

ア、大根をすりおろして、三杯酢で調味する。

イ、納豆・茸・色どりの野菜を入れる。

 

45 マルベ(マルメ・マルメロ)の砂糖煮・砂糖漬

 甘酸っぱさとマルベ特有の香り、口ざわりの良さが何ともいえなく上品である。風邪などの病気の時、精進料理、来客時に出して喜ばれる料理であった。

 

46 チャセン豆腐

 

47 ホロアエ(コメノキやウコギなど)の焼味噌(ウコギ料理)

ア、垣根に植えてある若いウコギの芽を摘み、茹でる。

イ、それをみじん切りにして、焼味噌で和える。

ウ、熱いご飯に振り掛けて、いただく。

エ、ボンナや山ウドの若芽でもよい。

 

48 漬菜の豆腐和え

 水に晒した漬菜を適宜に切って、豆腐と和える。

 

49 呉汁

 水に浸して柔らかくした大豆をすりつぶし、味噌汁にする。

 

50 冷し汁

 一般的な冷し汁は、から煎りした煮干し・ごま・味噌をすり鉢ですったものを直火であぶって焼き味噌にし、冷たい水又は出し汁で薄めた汁。きゅうり、しょうが、しその葉などを刻んで薬味とし、熱いご飯にかけて食べる。

 

51 ざっぱ汁

 魚のアラに、手近な野菜を加え、味噌又は薄塩仕立てでいただく。

 

52 ボヤブシの煮つけ

 ボヤブシとは、サバのなまりのことで、野菜なとどとの煮つけが美味しい。また、きゅうりもみと和えもの、むしって大根おろしで食べるのも定番。

 

53 ミズたたき(とろろ)(ミズ料理)

ア、葉をとった、採りたてのミズを、とろとろになるまですりこ木でたたく。

イ、それを細かく切って、擂鉢に入れ、味噌・山椒の葉などとすり合わせる。

 

54 ミズと枝豆の辛子醤油和え

ア、ミズと枝豆をたっぷりの湯で塩茹でする。

イ、ミズは二センチに切り、枝豆は莢から出す。

ウ、容器にこれらと、辛子醤油で和える。

 

55 ワラビたたき(とろろ)(ワラビ料理)

ア、ワラビを茹でてアクを抜く。

イ、まな板の上で、すりこ木で軽くたたく。

ウ、それに山椒の葉や味噌を散らして、包丁でたたきながら、混ぜる。

エ、辛子味噌でもよい。

 

56 メマキ昆布

 身欠きにしんを昆布で巻き、蒟蒻や貯蔵山菜などと、醤油で煮付ける。

 

57 ダマコ餅

 キリタンポ鍋に準ずる。

 

58 紫蘇揚げ(シソ料理)(ここ鹿角の郷の「紫蘇」は全て、紫葉のものです)

ア、米の粉に茗荷のみじん切りを加え、南蛮味噌で和える。

イ、それを、紫蘇の葉で包んで油で揚げる(又はフライパンで焼く)。

ウ、また、味噌(味味噌)と、適宜に切った茄子を紫蘇の葉で包んで、フライパンで焼くと美味しい。

 

59 紫蘇の実の油炒め

ア、紫蘇の実と、みじん切りの人参をフライパンで炒め、更に鰹節少々を加えて更に炒める。

イ、その中に、醤油を回し入れる。

ウ、これを温かいご飯に振り掛けて、いただく。

 

60 紫蘇の実の醤油漬け(別掲:ミョウガの醤油漬け参照)

ア、まだ未熟な紫蘇の実と、細かく切った茗荷・胡瓜・茄子を醤油で漬け込む。

イ、漬け込む時間は、一時間〜数日。

 

61 青ナンバン煮

 

62 粥干(きゃぼし)

 

63 粥餅(きゃもち)(ソバ料理)

ア、蕎麦粉にお粥を入れ、熱湯で練る。

イ、棒状にして輪切りにし、茹でる。

ウ、茶碗に盛って、いただく。

エ、又は熱灰(ほど)に入れて焼いて、いただく。

オ、味付けには、味噌・山椒味噌・胡桃味噌・松館しぼり大根汁(醤油味)や、味噌汁など。

 

64 蕎麦バット(かっけ)

ア、蕎麦粉をこねて薄く延ばし、三角や四角など適宜の形に切る。

イ、これを茹でる。これをバットと云う。

ウ、塩などで調味した大根しぼりをこれにかけて、いただく。

エ、また、醤油で調味した大根おろしに受けて、いただく。

オ、その他山椒味噌・胡麻味噌・ネギ味噌・胡桃和え・あんこなどでも、いただく。

 

65 かます餅

ア、蕎麦粉をこねて、餃子皮より一周り大きい皮を作る。

イ、この中に、辛子味噌を入れて、二つ折りにして、カマス状(餃子のように)にびっちりふさぐ。

ウ、それを、吸い物の具にして、いただく。

エ、また、中に山椒味噌・胡桃味噌などを適宜入れる。

オ、またこれを、熱灰(ほど)に入れて焼いて、いただく。

 

66 蕎麦団子

ア、蕎麦粉に塩少々入れて、熱湯でよく練る。

イ、耳たぶ位のものを、丸めて中に山椒味噌を入れる。

ウ、これを串に刺して、熱灰(ほど)に入れて焼いて、いただく。

 

67 小豆バット

 

68 笹餅(醤油餅)

ア、もち米の粉を醤油で味付けして、こねる。

イ、これを皮にし、みじん切りにした胡桃とザラメを中に入れて、丸餅にする。

ウ、蒸して、笹の葉で包む。笹の葉の代わりに、みょうがの葉などでも良い。

 

69 笹飴

ア、笹飴は、正月二日の大日霊貴神社(大日堂)養老礼祭(鹿角市八幡平字小豆沢)で売られる。

イ、小粒の白飴二個ほどを笹の葉で包み、両端を稲わらで結んである。

ウ、参拝者は、お土産として必ず買って帰るのである。

 

70 三升漬

 青なんばん・麹・醤油をそれぞれ、一升づつの分量で漬け込んだ保存食。

 

71 醤油の実

 大豆・白米・大麦を用いて麹にし、生醤油で仕込み、もろみの状態で発酵熟成する。

 

72 漬菜漬

 漬け菜の漬物。少し塩出しし、お汁の実としても用いる。

 

73 ナッツ漬

 

74 アンズ巻

 杏梅の梅干。熟んだ杏梅の種を取り、紫蘇の葉とともに一旦塩蔵する。取り出して天日に干す。一個一個を紫蘇の葉で包み、また塩蔵する。

 

75 胡瓜の酒粕和え(キュウリ料理)

ア、胡瓜を輪切りか半月切りにし、軽く塩もみする。

イ、それを酒粕で和える。

 

76 胡瓜の三杯酢

ア、豆もやしを茹でて、長さ一寸程度に切る。

イ、菊の花を茹でて、水に晒す。

ウ、胡瓜を輪切りか半月切りにして輪切りにし、軽く塩もみする。

エ、それらを、三杯酢で和える。

 

77 胡瓜の冷やし汁

ア、胡瓜の皮を縦に縞状にむいて、軽く塩もみし、水で洗う。

イ、紫蘇の葉をみじん切りにする。

ウ、煮干だしの味噌汁を作って、冷やしておく。

エ、この味噌汁に具を加え、吸い口にみじん切りの茗荷を入れる。

 

78 人参の白和え(ニンジン料理)

人参の白和え(主として精進料理)

ア、人参を拍子切りにして、柔らかく茹でる。

イ、豆腐を一煮立てて、布に包んで水気をとる。

ウ、胡桃を擂鉢ですり、豆腐を入れ、砂糖・酒・塩で調味しながら、更にすり合わせる。

エ、それに人参を加えて、和える。

 

79 茄子貝焼き(ナス料理)

 茄子と塩鯨を拍子木〜千切りにし、味噌(又は醤油)で炒め、又は煮る。

 

80 茄子の紫蘇巻き焼き

ア、適宜に切った茄子の片面に味噌を塗り、これを紫蘇の葉で巻く。

イ、食用油を引いたフライパンで、両面を焼く。

ウ、味噌は、好みにより香辛料などを加える。

 

81 ミョウガの醤油漬け(ミョウガ料理)

ア、旬のミョウガ・キュウリ・ナスを小さめの賽(さい)の目切りにし、未熟のシソの実を混ぜて、醤油漬けにする。

イ、一晩で食べられ、数日は楽しめる。

ウ、残った醤油には、更に具を足して漬け込む。

エ、残暑で弱った身体を元気づける。

 

82 トロロかけ蕎麦(トロロ料理)

ア、鶏や雉出汁の蕎麦切りに、トロロを掛けていただく。

イ、トロロには普通はナガイモを用いるが、ゴツゴツして丸いジャガイモ風のヤマトイモの方が美味しい。

ウ、好みにより、松館しぼり大根をも掛ける。

 

83 トロロかけ豆腐汁

ア、豆腐は、長さ数cmで細めの拍子木(千六本)切りにする。

イ、出汁は醤油仕立てで、ひと煮立ちしたら、お椀に盛り、トロロを掛ける。

ウ、トロロには普通はナガイモを用いるが、ゴツゴツして丸いジャガイモ風のヤマトイモの方が美味しい。

エ、好みにより、松館しぼり大根をも掛ける。

オ、また、出汁にカタクリ粉でとろみをつけることもある。

 

84寒干し大根 

ア、寒中に、大根を切って煮、流水に漬けて、天日で乾かして作る。

イ、この寒干し大根を味噌出汁(必要により醤油も加える)仕立てで、馬肉・身欠ニシン・メヌケなどと煮込んで、いただく。

 

85 テン(トコロテン)

ア、手作りテンは、まず乾燥天草を数倍の水で柔らかくして、とろ火にかける。

イ、掻き回しながら、30分ほど煮る(煎じる)。

ウ、それを布で漉して、漉し汁を容器に溜めると、二時間程で固まる。

 

86 突き天

ア、テンをテン突きで突く。

イ、それに、辛子醤油・酢醤油などを掛けて、いただく。

 

87 テンの味噌漬け

ア、まず、味噌をガーゼに薄く敷き、羊羹状に切ったテンを載せる。

イ、その上にまた、味噌を敷いたガーゼを載せる。

ウ、二時間程で食べれる。

エ、上に辛子を添えて、いただく。

 

88 山ワサビのふすべ

ア、山ワサビの全草(花・葉・茎・根)を細かく切る。

イ、鍋などにこれらの山ワサビを入れ、熱湯を注いで蓋をする。

ウ、一周り大きい別の容器に冷水を入れ、その中に上記の鍋を入れて、鍋ごと冷やす。

エ、これを、味噌和や酒粕などで和えて、いただく。

 

89 アカシヤの花の天ぷら

ア、咲き初めのアカシヤ(ニセアカシア)の花の房ごと採って、水でよく洗う。

イ、それを、卵でといた小麦粉の衣で揚げる。

 

90 バッケの天ぷら(ふきのとう。バッケ料理)

ア、花びらを一枚ずつはがし、水に数時間浸して、天ぷらにする。

イ、バッケを丸ごと揚げるときは、まだ包が開かないものがよい。

 

91 煮じゃこ

ア、乾燥山菜を水に浸けて戻す。

イ、それと、こんにゃく・人参などと煮合わせる。

ウ、片栗粉などでとろみをつけて、いただく。

 

92 マンタブ(マタタビ)の若葉の醤油煮

ア、乾燥したマンタブの若葉を、水で戻して千切りにする。

イ、それに油揚げを入れて、醤油で煮る。

 

93 ゼンマイの胡桃和え(ゼンマイ料理)

ア、乾燥ゼンマイを戻し、砂糖醤油で煮る。

イ、胡桃を擂鉢ですって、ゼンマイと和える。

ウ、これに、コンニャク・人参・ささげ(莢もの)などを適宜混ぜる。

 

94 ゼンマイの白和え

ア、乾燥ゼンマイを戻し、コンニャクと塩湯で茹でる。

イ、豆腐を茹でて水を切り、水気をとる。

ウ、胡桃を擂鉢ですって、砂糖・酒・塩で調味し、前記の具を入れる。

エ、人参やささげ(莢)などを適宜加える。

 

95 炒り米

 早春、苗代に蒔いた種籾(発芽している)の残りを干し、籾殻を取り除いて、鉄鍋で炒る。炒っ発芽玄米を女臼で搗いて平たくする。子供たちのお八つとして喜ばれた。

 

 …………………………

 

二、 八幡平松館のけぇの汁

具材:ささげ豆・油揚げ豆腐・凍み豆腐・こんにゃく・昆布・人参・ごぼう・大根・ぜんまい・わらび・ふき・あかきのこ・ほうきたけ・椎茸。1pの賽(さい)の目切り、薄味仕立て。煮込んだ翌日から、小分けにして温めていただく。

 

三、「けぇの汁」は、また「けの汁」とも呼んでいる。

 「けぇの汁」には、種々雑多な具の入っており、栄養満点の究極の料理である。即ち、冬期間の栄養の偏りを防ごうとするための料理であり、また、お正月だけでも炊事方(女性達)にゆっくり過ごして貰おうとする、「省力料理」でもある。

 わが国の料理は普通、面前に出されたいろいろな料理の単品を、食べる人の任意な嗜好によって取捨選択して戴くのが基本である。その常識を破って作られるのが、この「けぇの汁」である。「けぇの汁」を食べることによって、全ての栄養素がたちどころに摂取されるのである。

 ところで、西洋など牧畜を生活の基盤として発達した文化圏にあっては、一皿の中に全ての栄養素が含まれていることが原則とされる。そこで生まれた料理の一つに、「膾(なます)」がある。

  講談社発行「大字典」に拠ると、

膾ナマス 漢(音)クワイ(カイ)・呉(音)ケ。「細く切りたる肉」。

 また岩波書店発行「広辞苑」に拠ると、なます【膾・鱠】

@魚貝や獣などの生肉を細かく切ったもの

A薄く細く切った魚肉を酢に浸した食品

B大根・人参を細かく刻み、三杯酢・胡麻酢・味噌酢などで和えた料理

 中国から渡来した「膾」は、山での修験者乃至は寺院での修行僧によって、本来の持つ「膾」の意味が別の形で発展したのであろう。いろいろな食材を細かく切り刻んで混ぜ合わせて調理すれば、栄養が豊富となり、かつ不味い食材でも何でも食することが出来ると考え出したのではないだろうか。それが民間、特に半年以上も雪に埋もれる東北地方に恰好の料理「けぇの汁」として広まり、伝承されてきたものと思われる。

 つまり「けぇの汁」は、獣肉以外の、精進物だけしか食することの出来ない人々が行き着いた、究極の料理でもあるのである。